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掲載日:2017-03-15

中小企業と確定拠出年金

 2016年5月の改正に伴い、ほぼ自営業者等に限られていた個人型確定拠出年金の加入範囲が拡大し、多くの人が確定拠出年金に加入できるようになりました。また、今後、企業型確定拠出年金への中小企業の加入も容易になるよう改正が予定されています。今回は、確定拠出年金のポイントをまとめていきます。

●確定拠出年金とは

 確定拠出年金(以下、「DC」といいます)とは、企業や個人が拠出する掛金をあらかじめ決めて、拠出された掛金が個人ごとに明確に区分され、運用を個人が行い、運用成果が将来の給付額を決定する私的年金制度です。日本の年金制度は、主に3つの階層において複数の年金があります。一般的に「3階建て」と表現されています。
 第一に、20歳以上の全国民が加入する「国民年金」(基礎年金)が基本です。1階部分と形容されています。国民年金は加入期間(保険料納付期間)の長さで金額が決まります。
 2016年度の場合、「年78万100円×加入月数÷480」で計算されます。40年間(20歳から60歳まで)保険料を支払っていたら、年78万100円を受け取れることになります。1ヶ月あたり約65,000円です。
 第二に、民間のサラリーマン等が加入する「厚生年金保険」があります。厚生年金は加入は強制となり、選択の自由はありません。公務員等は「共済年金」に加入していましたが、「被用者年金制度の一元化」によって、2015年10月に厚生年金と共済年金は統合されました。自営業者・フリーランスは「国民年金基金」に加入できます。加入すると追加の掛金の負担がありますが、将来の年金額は増加します。2階部分と位置づけることが可能な制度です。こちらは強制ではなく、任意加入です。
 第三に、企業によっては独自の年金制度が用意されています。「企業年金」と呼ばれています。公務員には「職域加算」という上乗せの年金があります。厚生年金との統合後は、「年金払い退職給付」と名前が変わり、賦課方式から積立方式へ移行し、終身年金一本から終身年金と有期年金(20年間)という形に変わります。
 この他に、3階部分として個人年金として積み立てられる制度として、「確定拠出年金」があります。賦課方式ではなく、完全拠出方式です。加入者が支払った掛金を年金の事務局が集約して、リタイアした人に給付するという仕組みではなく、自分が支払った掛金は自分専用の口座に積み立てられ、将来リタイアした際にはその金額が自分に給付されるという仕組みです。イメージ的には、保険会社の年金保険や学資保険と似た仕組みです。掛金払い込み中の人・需給中の人のバランスや、年金全体の運用状況には左右されません。完全に自分が支払った掛金の額と、自分の運用の成果によって、将来の給付が決まります。
 DCの老齢給付金は、老齢厚生年金よりも早く、60歳からの受給が可能となります。
 確定拠出年金とは、大きく分けて「企業型DC」と「個人型DC」があります。
 なお、事務処理はどちらも基本的には金融機関等(銀行、信用金庫、証券会社、信託会社、生命保会社等)に委託されることが多いです。

●事業主が実施する「企業型」確定拠出年金

 企業型DCを実施するのは、企業型年金規約の承認を受けた企業です。また、加入できる対象者は確定拠出年金を実施する企業に勤務する従業員です。企業型DCの場合、企業は規約に基づき従業員ごとに掛金を拠出します。掛金の限度額は、それぞれの加入形態ごとに決められています。企業型DCはその手続きの煩雑さから、大企業では導入が進んでいる反面、企業年金がなじまない中小企業ではいまだ普及していないのが現状です。
 しかし、従業員100人以下の中小企業を対象に企業型への加入が容易になるよう改正が近年予定されています。

 個人型DCに加入している従業員に対して、会社が追加で掛金を拠出することができます。企業型DCを導入できない会社が個人型DCに従業員を加入させ、退職金積立のように掛金を追加拠出し、従業員だけでなく会社も企業型DCを導入している場合と同様の税制優遇措置を受けることができます。なお、個人型DCの場合、申込書等の書類を提出することで事業主掛金拠出を始めることができますので、比較的容易といえます。
 個人型DCの場合、申込書等の書類を提出することで事業主掛金拠出を始めることができますので、比較的容易といえます。

○中小企業が導入する場合について
○メリット
 掛金の内、事業主拠出分については全額損金算入となり非課税です。また、運用益についても現在は非課税とされています。(企業年金の積立金には別途1.173%の特別法人税が課税されることになっていますが、現在は凍結されています。なお、確定拠出年金制度がスタートした2001年10月以降一度も課税されたことはありません。)
○デメリット
 投資リスクを従業員が負うため、老後に受け取る年金額が確定せず、運用が不調であれば年金額が減ります。しかし、企業側としては実質、人件費の増加であり、また、老後の資産形成を目的としているため、原則60歳まで途中引出しがでません。導入次第では、不利益変更の問題が出ないように留意することが必要です。

●個人で加入する「個人型」確定拠出年金

 DCの個人型は、ほぼ自営業者等に限られていましたが、2016年5月の改正により個人型の加入範囲が拡大し、基本的にすべての人が加入できるようになりました。
○メリット
①毎月の掛け金は全額所得控除
 毎月の個人型DCへの掛け金は全額が所得控除の対象となります。つまり、年金保険料として支払っている金額×税率分が戻ってくることになります。
 なお、掛け金の金額は月額5,000円~68,000円の間で自由に決めることができます。(サラリーマン(2号被保険者)の場合の上限は月23,000円まで)
②年金受取時にも控除が受けられる
 60歳になってからのDCの受け取り方には、まとめて受け取る一時金と、数年に分けて受け取る年金の二つがあります。節税メリットが大きいのは一時金です。この場合、受取額から退職所得控除を引き、さらに2分の1を掛けた額に対して所得税などがかかります。ただし、退職所得控除は掛け金を積み立てた期間が長いほど大きくなりますので、早くDCに加入する利点の一つとなります。
 また、年金として受け取る場合は、公的年金等を含む総収入額から公的年金等控除を差引いた額に課税されます。つまり、年金として受け取る場合にも公的年金等控除が利用できます。
③年金の破綻リスクがない
 DCは、個人単位で管理されますので、会社の都合で将来の受取額が減少することはありません。
④自己破産しても財産が残る
 DCは確定拠出年金法第32条によって換価不要な資産として保護されます。そのため、自己破産してもその財産は清算されず、60歳以降には自分が掛け金を払って貯めた年金を受け取ることができます。これは、経営者や個人事業主などのセーフティネットになります。
○デメリット
①60歳までは解約(引出し)できない
 DCは、保険と違い年金なので途中で解約して現金で受け取るということができません。そのため、あくまで余裕資金で行う必要があります。ただし、掛け金の変更は行えますので、資金繰りを見て柔軟に対応することは可能です。
②利用には手数料がかかる
 個人型DCの場合、加入時の手数料と毎月数百円程度の「口座管理手数料等」がかかります。なお、手数料は、金融機関によって異なります。
③老後にもらえる年金が確定しない
 年金運用を自分で行うので、年金運用の結果がそのまま自分に跳ね返ります。運用が不調だと年金額が減ることもあります。
 確定拠出年金を新規に導入する場合も見直す場合も、メリット・デメリットを十分考慮し、運用商品の提示内容や運用商品数、手数料等を検討して、有益な選択をすることが重要です。

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