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掲載日:2017-05-24

所得拡大促進税制の適用について

 平成28年12月22日に閣議決定された『平成29年度税制改正大綱』の中で所得税・法人税等の見直しがいくつか行われました。今回はその中の『所得拡大促進税制』について、改正点を含めたところでまとめていきます。

【1】所得拡大促進税制とは

 青色申告書を提出している法人(又は個人事業主)が、下記1~3の全ての要件を満たした場合に、雇用者給与等支給増加額の10%を法人税額(又は所得税額)から控除 (法人税額の10%、中小企業者等については法人税額の20%が上限)できる制度です。
要件1:雇用者給与等支給増加額の基準雇用者給与等支給額に対する割合が増加促進割合以上になっていること
要件2:雇用者給与等支給額が比較雇用者給与等支給額以上であること
要件3:平均給与等支給額が比較平均給与等支給額を超えること

【2】要件の具体的な確認

 ここでは、所得拡大促進税制の要件3点についてそれぞれ確認していきます。
要件1:適用事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される「国内雇用者」(役員及びその特殊関係者を除く)に対する「給与等」の支給額から基準事業年度(平成25年4月1日以後に開始する各事業年度のうち、最も古い事業年度の直前の事業年度)の所得の金額の計算上損金の額に算入される「国内雇用者」に対する「給与等」の支給額を除いた金額を基準事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される「国内雇用者」に対する「給与等」の支給額を除いた金額で割った割合が増加促進割合以上であること。この要件を簡単に言うと、適用事業年度の役員及びその親族以外の給与の額が基準事業年度と比べて一定割合増えていればよいということになります。
※一定割合とは、以下の通りです。

要件2:適用事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される「国内雇用者」に対する「給与等」の支給額が、前事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される「国内雇用者」に対する「給与等」の支給額以上になっていること。
要件3:適用事業年度の継続雇用者一人あたりの平均給与が、前事業年度の継続雇用者一人あたりの平均給与を上回っていること。なお、継続雇用者とは、適用事業年度及び前事業年度において給与等の支給を受けた国内雇用者のことを指します。したがって適用事業年度に新しく入社した方や前事業年度中に退職した方は原則として含まれません。また、労働者のうち、65歳以上で雇用されている方や、1週間の所定労働時間が20時間未満の者等を除いた者で、かつ短期雇用特例被保険者等以外の者を指します(詳しくは最寄りのハローワークまでお問い合わせください)。
 継続雇用者については判断に迷う点もございますので、以下の表を参考にしてください。

【3】特殊事例

(1)事業年度によって月数が異なる場合
 基準事業年度と適用事業年度の月数が異なる場合、基準雇用者給与等支給額を下記の計算で、適用事業年度に合わせる形で計算します。

(2)基準事業年度に給与等の支給がない場合
 平成25年4月1日より前に事業を開始していたが、基準事業年度に国内雇用者がいなかった(役員のみであった)等の理由で、基準雇用者給与等支給額が0円となる場合は、計算上、基準雇用者給与等支給額を1円とすることとなっています。

(3)新規設立により、基準事業年度がない場合
 平成25年4月1日以降に会社を新規設立していて、基準事業年度が存在しない場合は、平成25年4月1日以後に開始する最も古い事業年度(当該事業年度に給与等の支給がない場合は、国内雇用者に対して給与等を支給する最初の事業年度)の給与等支給額の0.7に相当する金額が基準雇用者等給与等支給額となります。

【4】具体例

 要件が確認出来たところで、具体例をつかって実際に計算していきます。
(1)前提条件
1.中小企業に該当し、事業年度は毎年4月1日から3月31日までの1年間
2.適用事業年度(平成28年4月1日~平成29年3月31日)
・給与総額 7,000万円(そのうち役員1名及びその特殊関係者1名分が2,000万円)
・従業員数 15名(新入社員0名)
・法人税額 400万円
3.比較事業年度(平成27年4月1日~平成28年3月31日)
・給与総額 6,000万円(そのうち役員1名及びその特殊関係者1名分が1,500万円)
・従業員数 15名(退職者0名)
4.基準事業年度(平成24年4月1日~平成25年3月31日)
・給与総額 5,000万円(そのうち役員1名及びその特殊関係者1名分が1,300万円)
・従業員数 13名
(2)要件を満たしているか確認
要件1:(雇用者給与等支給額-基準雇用者給与等支給額)/基準雇用者給与等支給額≧3%
(5,000万円-3,700万円)/3,700万円=35.135%≧3%

※ここでのポイントは給与総額に役員及びその特殊関係者が含まれているため、その部分を控除します。

要件2:雇用者給与等支給額≧比較雇用者給与等支給額
5,000万円≧4,500万円
要件3:平均給与等支給額>比較平均給与等支給額
5,000万円/13名=384.6万円>4,500万円/13名=346.1万円
税額控除:
a(5,000万円-3,700万円)×10%=130万円
b 400万円×20%=80万円
a > b
よって80万円が今回受けられる税額控除の金額となります。

【5】改正点

 平成29年度税制改正大綱では、要件3について以下のように見直されています。
(1)大企業
 従来の場合には、平均給与等支給額>比較平均給与等支給額を満たしていればよかったのですが、平成29年度税制改正大綱では、平均給与等支給額>比較平均給与等支給額、かつ、その増加率が2%以上の場合にのみ、12%の税額控除が認められます。
(2)中小企業
 平均給与等支給額>比較平均給与等支給額かつその増加率が2%以上の場合には、従来の10%に加え、さらに12%の税額控除(合計として増加額の22%)が認められます。
 ただし、上限については法人税額の10%(中小企業者等の場合には20%)と変更はないので、注意して下さい。

【6】おわりに

 企業の賃上げに対する政策として創設された所得拡大促進税制は、節税対策及び労働者への利益還元を同時に行えるというメリットがありますので、上手に活用していきましょう。ただし、ここで紹介したものは一部分ですので、詳しい点に関しましてはお近くの税務署や税理士にご相談ください。

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