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掲載日:2017-07-05

今後見直しが求められる、企業における「配偶者手当」

昨今の働き方改革の中で、しばしば女性就業の妨げとして話題に上がるのが「配偶者」関連の現行制度や諸手当です。パートタイムでの就業を希望する求職者が「扶養の範囲内で」と希望されるケースは、まだまだ多いのではないでしょうか?

収入に応じて税制、社会保障制度への適用が変わってしまうために、労働者があえて就業をセーブする例は、一億総活躍社会において確実に見直しが行われていくことになります。すでに税制、社会保険分野における制度改正が行われたことは皆さんご存知の通りですが、今後は企業における諸手当の在り方にも影響がもたらされます。税理士事務所や会計事務所であれば、御所における手当はもちろん、顧客企業の求めに応じて制度の見直しに関する相談を受けるケースもあるのではないでしょうか?「配偶者手当」については、最近の傾向として、おさえておくべき話題であると言えます。

【税制・社会保障制度はどう変わる?】

まずは、働き方改革を背景に、法律上の諸制度がどのように改正されたのかを復習しておくことにしましょう。

■ 配偶者控除の見直し(平成30年1月~)

  • ・配偶者(主に妻)の年収要件を現行の103万円以下から、150万円以下に引き上げる
  • ・150万円超から控除額が徐々に縮小し、201万円までは控除の一部を受けられる
  • ・夫(世帯主)の年収が1220万円を超える高所得世帯を控除の対象とする
    (夫の年収1120万円超の世帯から控除額が縮小し、1220万円超で控除対象外となる)

■ 社会保険の適用拡大(平成28年10月~)
・以下の要件に満たす場合、「短時間労働者」として新たに社会保険の加入対象となります。
(1) 週の所定労働時間が20時間以上の人
(2) 雇用期間が1年以上見込まれる人
(3) 賃金の月額が88,000円以上である人
(4) 学生でないこと
(5) 以下のいずれかに該当すること
 ・従業員数が501人以上の会社(特定適用事業所※)で働いている
 ・従業員数が500人以下の会社で働いていて、社会保険に加入することについて労使で合意がなされている(平成29年4月から)
 ※特定適用事業所とは同一事業主(法人番号が同一)の適用事業所の被保険者数(短時間労働者を除き、共済組合員を含む)の合計が、1年で6カ月以上500人を超えることが見込まれる事業所のことをいいます。

【企業における「配偶者手当」とは?】

上記の通り、税制、そして社会保障制度に関わる法改正が行われる中で、企業が独自に定める「配偶者手当」に関しての再検討が厚生労働省より呼びかけられています。

「配偶者手当」とは、配偶者がいる従業員に対して支給される手当のこと。「家族手当」や「扶養手当」等の名称で導入されているケースが多いかもしれません。必ずしもすべての企業で支給されているものではありませんが、平成28年度の調査によれば、何らかの「家族手当」を支給する民間企業は全体の76.8%、そのうち配偶者を対象とする家族手当制度のある企業は87%と、非常に高い割合で導入されている手当であることが分かります。

参照:人事院「平成28年職種別民間給与実態調査」表12 家族手当の支給状況
http://www.jinji.go.jp/kyuuyo/minn/minnhp/min28_index.htm

このたびの税制、社会保障制度での法改正を受け、今、企業における「配偶者手当」の在り方についても検討が求められています。例えば、配偶者の収入に応じて手当の額や支給の有無が決定される場合、改正法と照らし合わせてその要件の妥当性が再検討され、必要に応じて見直されるべきであると言えるでしょう。

【「手当の内容を変更する」、そのための手順とは?】

さて、いざ検討・見直しが行われ、「配偶者手当を変えましょう」ということになったとき、その後経るべき手順をご存知でしょうか?単に給与規程や就業規則を変更するだけではいけません。手当の内容変更は「労働条件の不利益変更」に該当する可能性が高いため、正しい順序で変更を行う必要があります。

その1. 労使交渉
まず、見直しの時点で労使を交えた話し合いを重ねることが肝心です。従業員のニーズの把握、不利益が生じる場合の経過措置の検討、労働者側の合意等のために、1~2年かけて丁寧に交渉、労使合意とコマを進めていきましょう。会社が経営危機に直面している等の状況でない限り、会社側が一方的に不利益変更となる内容を提示することは避けるべきです。

その2.諸規程の改訂
話し合いの内容は、正しく諸規程に反映させましょう。加えて、労基署への変更届も忘れずに済ませます。

その3.労働者への周知
制度がどのように変更されるのか、それによって具体的にどのような影響が出るのかを、正しく説明し、個々に理解を求めましょう。くれぐれも“一方的な通告"とならぬよう、ご注意ください。

手当の変更等、従業員に対する不利益変更は、後々労使トラブルの原因ともなり得ます。労務管理の専門家である社会保険労務士と連携しながら、慎重に進めていくことをお勧めいたします。

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