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掲載日:2017-08-23

「みなし労働時間制」とは?導入の際の注意点

「みなし労働時間制」は、労務管理上非常に便利な制度ではありますが、しばしば正しく導入されていないケースも散見され、その運用のされ方が問題視されています。

【そもそも「みなし労働時間制」とは?】

「みなし労働時間制」とは、労働時間を管理しづらい業種や状況において、その仕事に従事するのに必要な時間として想定された“みなし時間"によって労働時間を算出できる制度のことです。この制度を導入することによって、通常とは異なる様々な労働時間の管理が可能となるため、事業主であれば上手く活用したいところです。

しかしながら、「みなし労働時間制」の適用対象は限定的であり、どの労働者にも適用できるわけではありません。具体的には、次に挙げる3種に該当するかどうかがポイントとなります。

【「みなし労働時間制」の種類】

「みなし労働時間制」には、大きく分けて3種類あります。それぞれ、どのようなケースにおいて導入可能なのかを確認しておきましょう。

□ 事業場外みなし労働時間制
会社外で仕事をする場合であり、なおかつ管理監督者が不在である、労働者を通常の指揮命令下に置くことが難しい等、労働時間の管理が困難なときに、使用者のその労働時間に係る算定義務を免除し、その事業場外労働については「特定の時間」を労働したとみなすことのできる制度。例えば、外回りを行う営業職、一定の条件の元で行われる在宅勤務等の場合に適用されます。ただし、最近では携帯電話等の連絡手段が一般的に広く浸透していることから、前述の「労働者を通常の指揮命令下に置くことが難しい」「労働時間の管理が困難」とされる状況はかなり限定的であると言えるかもしれません。

参照:東京労働局・労働基準監督署「事業場外労働に関するみなし労働時間制の適切な運用のために」
http://tokyo-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/library/jigyoujougai.pdf

□ 専門業務型労働時間制
業務遂行の手段や方法、時間配分などを労働者の裁量にゆだねる必要がある業務として定められた19業種に就かせた場合、あらかじめ労使協定で定められた時間労働したとみなすことのできる制度。具体的には、下記に挙げる業種において認められています。

(1)新商品若しくは新技術の研究開発又は人文科学若しくは自然科学に関する研究の業務
(2)情報処理システムの分析又は設計の業務
(3)新聞若しくは出版の事業における記事の取材若しくは編集の業務又は放送番組の制作のための取材若しくは編集の業務
(4)衣服、室内装飾、工業製品、広告等の新たなデザインの考案の業務
(5)放送番組、映画等の制作の事業におけるプロデューサー又はディレクターの業務
(6)コピーライターの業務
(7)システムコンサルタントの業務
(8)インテリアコーディネーターの業務
(9)ゲーム用ソフトウェアの創作の業務
(10)証券アナリストの業務)
(11)金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発の業務
(12)大学における教授研究の業務
(13)公認会計士の業務
(14)弁護士の業務
(15)建築士(一級建築士、二級建築士及び木造建築士)の業務
(16)不動産鑑定士の業務
(17)弁理士の業務
(18)税理士の業務
(19)中小企業診断士の業務

参照:東京労働局・労働基準監督署「専門業務型裁量労働制の適切な導入のために」
http://tokyo-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/library/tokyo-roudoukyoku/roudou/jikan/pamphlet/4special2.pdf

□ 企画業務型裁量労働制
本社や本店等、事業の運営に大きな影響を及ぼす決定が行われる事業場において、下記の要件を満たす業務に従事する、知識・経験を有する労働者に適用できる制度
・事業の運営に関する企画・立案・調査・分析の業務
・性質上その遂行方法を大幅に労働者に委ねる必要がある業務
・その業務の遂行の手段および時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしないこととする業務

参照:東京労働局・労働基準監督署「企画業務型裁量労働制の適切な導入のために」
http://tokyo-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/library/tokyo-roudoukyoku/jikanka/201221613571.pdf

【「みなし労働時間制」の“残業時間"とは?】

このように、「みなし労働時間制」を導入できるケースは、それぞれの制度の条件を満たせる場合に限られています。“残業時間削減"を目的に導入を検討されることもあるようですが、誤った運用は労使トラブルにつながるため、注意が必要です。

「みなし労働時間制」を考える上で、しばしば問題になるのが“残業時間"の考え方についてです。「みなし労働時間制だから残業代の支払は不要」と考えられているケースもあるようですが、決してそうではありません。

例えば、みなし労働時間として定めた時間数が法定労働時間(一般的に「8時間」)を超える場合、恒常的に1日あたり1時間の時間外労働が発生することになり、この部分の残業代の支払いは必要です。この点、実務的には想定される時間外労働に応じた「固定残業手当」の支給で対応することがほとんどのようです。

一方、みなし労働時間として定めた時間数が「8時間」以内であれば、実際に労働時間数が10時間であったとしても、「2時間分の残業代」は制度の性質上、支払わなくても良いということになります。ただし、このような実労働時間とかけ離れたみなし労働時間の設定は明らかに違法ですので、労務管理上大問題です。昨今、このようなケースを発端とした労使紛争は各所で発生しています。

また、「みなし労働時間制」を適用していても、深夜・休日労働については別途賃金を支払う必要があります。

【まとめ】

「みなし労働時間制」については、使用者にとって都合の良い側面ばかりに注目するのではいけません。適用対象やルールを正しく理解した上で、適切な形で運用できるようにしましょう。

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