ビジネス支援

掲載日:2017-01-25

「経営について」 株式会社新潟ビルサ-ビス 代表取締役 鈴木英介氏

経営・財務 2017年1月号(1)

経営の本質

 経営とは良い商品を提供すれば売り上げも利益も上がります。社内のコミュニケーション、お客様とのコミュニケーションも自然と良くなります。必要な事は雄弁ではありません。誠実さです。

 これは精神論ではありません。白いものを白、黒いものを黒と言うごく当たり前の実務です。経営とはどちらが黒でどちらが白かを指し示す事です。意外と白も黒も分からない(そもそも考えない)人が多いのです。

 「算多きは勝ち、算少なければ勝たず」(孫子)価値を生み出す生産活動が企業の本質であれば、それを運営管理するのが企業経営です。「算」の多少を論じる事こそ経営だと思います。

 孫子では戦争においても事前に調査分析し、計算の結果勝てるとするものは勝つ、どう見ても勝てないものは負ける。それゆえに開戦前の調査こそ最も大事であり、調査も計算もしない者が勝つはずはないと言っています。孫子の時代にも思い込みで戦争をする人がいたようです。調査分析と言ったのはその意味です。「調査なくして発言なし」と言った人もいます。調査もせず無責任に思い込みを発言する人も多いのです。

 調査も分析もせず、全戦線に社員を投入し失敗すればその社員の責任、成功すれば経営者の手柄という人もいます。信心を経営の本質概念と考える人は、失敗はその社員の信心が足りないからと思うようです。分析をしていないのでそれしか思いつかないのです。

 そもそも脳みそが糠みそになっています。考えるという事が出来ないのです。たとえ考えていても社員を「捨て駒」と考えている人は同様の反応をします。成功するか失敗するかは、やってみなければ解らないと言います。本当でしょうか。解らないのは経営者の頭が足りないからではないですか。

 「よく戦う者は、これを勢に求めて人に求めず」(孫子)情勢分析し、ダメなものは誰がやってもダメなのです。それを見極める事こそ経営です。

 「どうしてうちの社員はこんな事も出来ないのだろう」と言う人もいます。部下がそんなに仕事ができるのなら、貴方は上司ではありませんよ。地域全体が斜陽の地区担当者を責める社長もいます。そんなに言うのなら支店を閉めたらどうですか。その担当者はたまたまそこの担当になっただけではないですか。

 「よく人を戦わしむるの勢い、円石を千尋の山に転ずるが如くなるものは勢いなり」(孫子)逆にうまくいく事は「地の利、時の勢い」があるので、石が山から転げ落ちるようなものなのです。どこに石を転がすのかと考えるのが経営者の役割です。

 情勢を分析し、方針を指し示す。この経営の最も枢要な事が出来ない経営者が多いのです。さらにその方針を社員にちゃんと伝えなければなりません。

 「兵には走る者あり、ゆるむ者あり、陥る者あり、崩るる者あり、乱るる者あり、にぐる者あり。凡そこの六者は天の災いにあらず、将の過ちなり」(孫子)

 兵隊には逃亡する者があり、怠ける者があり、士気の上がらない者があり、及び腰の者があり、不品行な者があり、逃げ腰の者がある。この六つは与えられた条件が悪いのではなく、リーダーの指導力の問題である。

 企業も上げ潮の時は、社員の士気も上がり、何もかもうまくいくように思います。逆に下げ潮の時は様々な問題が噴出し、売上も利益も上がりません。そのような時こそ致命的な事故なども起こったりします。これは経営に携わる者は、誰しも経験があると思います。ではなぜそのような事になるのでしょうか。

 そもそも「上げ潮」「下げ潮」とは何でしょうか。これこそ孫子の言う「勢」なのです。「勢」とは外の情勢の事だけではありません。情勢の悪い時、己の劣勢の時。経済が縮小している時。それでも戦い方はあります。それは拡大の勢い、縮小の勢い、いずれも「勢」だからです。これを正しく読めば縮小経済の中でも会社を発展させることは出来ます。岡田屋(現イオン)の家訓は「上げに儲けず、下げに儲けよ」と言います。

 私は「勢」とは勢いであると同時に必然と読みます。カラスはやはり黒いのです。水は上から下に流れます。無から有は生まれません。

 どんな時代でも私たちの仕事に価値があればお客様に求められます。物が売れない時もあります。その時は無理に売る必要はありません。しかし必要最小限の物は流れていきます。そこに係れば良いのです。無理は禁物です。

 当社は江戸時代、宝暦年間からこの新潟で商いをしています。260年以上になります。それは理を曲げず、その時代情勢に求められる事をやってきたからだと思います。間瀬より新潟町に出て、越後平野の年貢米、諸国物産を扱い廻船問屋。新潟湊の衰退とともに船具商、さらに日露戦争の勝利に伴い北洋漁業。

 敗戦を境に経済復興と伴に塗料商。新潟大火後ビル建設に伴いビルメンテナンス業と、その時、その時代の「勢」にあった仕事をやってきました。「勢」の向きを読み、過去にも自己にも固執せず、それに合わせた変化を行ってまいりました。

 「我この一身さえ自由になるものにあらずして、天の有する所なり。いわんや外物においておや。天に任せ、命に任せずんばあるべからず」(4代間瀬(まぜ)屋佐右衛門遺書(のこしがき))(「1984年」はハヤカワ文庫、「孫子」は岩波文庫版による)

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