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掲載日:2018-06-06

誤った運用に要注意!税理士事務所・会計事務所の専門業務型裁量労働制

「税理士」や「公認会計士」の業務が専門業務型裁量労働制の対象業務に該当することから、従業員に対し、みなし労働時間制を適用している事務所もあるかもしれません。通常とは異なる特殊な働き方を導入する場合、適正な形で運用するよう注意する必要があります。本号では、「専門業務型裁量労働制」のポイントを復習しておくことにしましょう。

【みなし労働時間制の原則は、「具体的な指示を行わないこと」】

専門業務型裁量労働制とは…。

業務遂行に必要なみなし労働時間を労使であらかじめ決定し、業務に就いたときにはその時間数を働いたものとして、相応の報酬を支払う働き方のことです。「専門業務型」ということで、適用対象となる業務が厚生労働省令及び厚生労働大臣告示によって具体的に決められており、どんな業種にも認められるわけではないので注意が必要です。

みなし労働時間制適用の大前提は、
「業務の性質上、業務遂行の手段や方法、時間配分等を大幅に労働者の裁量に委ねる必要がある」
ことです。よって仕事の進め方について、会社は労働者に対する具体的な指示をすることはできません。

参考:東京労働局「専門業務型裁量労働制の適正な導入のために」
https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/library/tokyo-roudoukyoku/roudou/jikan/pamphlet/4special2.pdf

【専門業務型裁量労働制の残業代とは?】

専門業務型裁量労働制などのみなし労働時間制を導入した場合、「残業代の支払いがない」と考えられているケースも少なくありません。しかし、これはまったくの誤解です。

例えば、みなし労働時間数を1日「10時間」に設定している場合、1日の法定労働時間とされる「8時間」を毎日2時間超過していることになります。この場合、日々の超過時間分に関わる時間外手当を、固定残業代として月額で支払う方法が一般的です。

また、実労働時間数がみなし労働時間数を恒常的に超過する場合には、みなし労働時間数の設定や未払残業代に関する問題が生じることになります。その他、みなし労働時間制を導入していたとしても、深夜や休日の労働に対する割増賃金の支払いは必要です。

【専門業務型裁量労働制でも勤怠管理は必要】

専門業務型裁量労働制の場合、「会社が勤怠管理をする必要はないのでは?」と思われがちです。しかし、実際にはそんなことはありません。
「みなし労働時間に対して実際の労働時間が適切かどうか」
「働き過ぎていないか」
「深夜・休日労働の割増賃金が発生していないか」
などを確認しなければなりません。つまり、「健康・福祉の確保」と「適切な賃金支払」の観点から、勤怠の把握をする必要があります。

【専門業務型裁量労働制の導入には「労使協定の締結・届出」が必要です】

専門業務型裁量労働時間制は、単に就業規則等の社内規程に定めるだけでは導入できません。必ず労使協定を締結し、労働基準監督署に届け出ることになっています。労使協定の内容については、東京労働局のパンフレットに記載されている以下8つの事項です。

1. 対象業務(法令により定められた19業務)
2. みなし労働時間(対象業務に従事する労働者の労働時間として算定される時間)
3. 対象業務を遂行する手段及び時間配分の決定等に関し、対象業務に従事する労働者に具体的な指示をしないこと
4. 対象業務に従事する労働者の労働時間の状況の把握方法と把握した労働時間の状況に応じて実施する健康・福祉を確保するための措置の具体的内容
5. 対象業務に従事する労働者からの苦情の処理のため実施する措置の具体的内容
6. 有効期間(3年以内とすることが望ましい)
7. 上記4及び5に関し、把握した労働時間の状況と講じた健康・福祉確保措置及び苦情処理措置の記録を協定の有効期間中及びその期間の満了後3年間保存すること
8. 時間外労働・休憩時間・休日労働・深夜業(これらの事項の取扱いについては、就業規則において定めれば足りるものですが、専門業務型裁量労働制の対象労働者についてその他の労働者と異なる取扱いとする場合等は、これらについても労使協定で規定しておくことも可能です)

出典:東京労働局「専門業務型裁量労働制の適正な導入のために」
(URL内のP.1にある「制度導入のための手続は?」をご参照ください)
https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/library/tokyo-roudoukyoku/roudou/jikan/pamphlet/4special2.pdf

【税理士事務所や会計事務所でも、専門業務型裁量労働制が認められないケースも】

冒頭でご紹介した通り、税理士や公認会計士の業務については、専門業務型裁量労働制の対象業務となっています。しかしながら、「税理士事務所」や「会計事務所」で業務に従事するからといって、必ずしもすべての従業員に対して専門業務型裁量労働制を適用できるかといえば、そうとは言えません。

例えば、判例では「資格を有しない実務従事者に対する専門業務型裁量労働制の適用」を退けています。

参考:東京弁護士会「近時の労働判例 第25回東京高裁平成26年2月27日判決」
https://www.toben.or.jp/message/libra/pdf/2015_01/p44-45.pdf

専門業務型裁量労働制が残業代削減のための濫用とみなされないよう、導入時にはくれぐれも注意する必要があります。

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