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掲載日:2018-09-05

今春から本格運用が開始された無期転換ルールにまつわる“2大トラブル事例”

2018年4月から無期転換ルールが本格的に運用されています。以来、会社と有期契約労働者との間で、同制度を巡るトラブルが少なからず発生しているようです。今号では、無期転換制度に関わる基本ルールを復習すると共に、よくあるトラブル2事例から適切な対策を考えてみましょう。

【そもそも「無期転換制度」とは?】

無期転換制度とは「同一の使用者(企業)との間で、有期労働契約が5年を超えて更新された場合、有期契約労働者(契約社員・アルバイトなど)からの申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換されるルール」のことです。

参考:厚生労働省「有期契約労働者の無期転換ポータルサイト」
http://muki.mhlw.go.jp/overview/part_time_job.html

一般的なイメージとしては、上記参考サイトの冒頭に記載されている「契約期間1年の場合」という表をご参照いただけると分かりやすいです。契約期間が複数年にわたる場合には、契約期間中に通算5年を超える契約を締結する際に無期転換申込権が発生することになります。

【無期転換トラブル(1)雇い止め】

無期転換ルールの運用に伴うトラブルとして、最も多く生じているのが「雇い止め」です。無期転換申込権が発生する「有期労働契約通算5年超」へ達する前に、契約期間満了となるよう上限を設けて対応する会社が増えています。

契約期間や契約更新回数に上限を設けることは、それ自体、問題ではありません。しかしながら、無期転換対応として突然、これまでになかった契約期間・回数の設定を設け、長年働いている労働者に対して適用しようとすることが、トラブルの原因となっています。

<企業側の対応>
こうした事態を受け、雇い止めに関わる法整備が進んでいます。労働者保護の観点から、過去の最高裁判例により?定の場合にこれを無効とする判例上のルール(雇い止め法理)が、そのままの形で労働契約法に盛り込まれました。(下記サイト6Pを参照)

参考:労働基準局労働条件政策課「無期転換ルールに関する雇止めの状況等について」
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12602000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Roudouseisakutantou/0000034684.pdf

会社側は上記の「雇い止め法理」を踏まえ、トラブルに発展しない形での対応を検討しなければなりません。例えば「新たに契約期間・回数に上限を設けるとしても、これから新規に雇い入れる労働者への適用とする」とし、既存の労働者に対しては本人の希望を考慮の上、労使の話し合いの元、処遇決定する等の配慮が必要となります。

【無期転換トラブル(2)無期転換ルールへの誤解】

無期転換制度に関わる労使の認識の違いから、トラブルに発展することもあります。具体的には「無期雇用=正社員」や「5年経過すれば自動的に無期転換される」など、労働者側が無期転換を誤って捉えていることから、契約更新時に問題が起こるケースを挙げることができます。

<企業側の対応>
そもそも労働者側の誤解を招かないためにも、会社が無期転換ルールをしっかりと定め、周知徹底しておくことが必要となります。特に「無期契約労働者の位置付け」については、クリアにしておかなければなりません。「有期契約の際と何が違うのか」「正社員とはどのような部分で差があるのか」等、無期契約労働者の処遇に関して明確にすることがトラブル回避につながります。

会社側にとっては、これまで「正社員か、有期のパート・アルバイトか」のいずれかであった雇用区分に、このたび新たに「無期契約労働者」が加わることとなるケースも珍しくありません。この点について、実際に無期転換申込が行われてからの対応では遅すぎます。あらかじめ社内規程に記し、周知徹底しておくことが肝心です。

【無期転換制度の導入に向け、企業が対応すべきこと】

では社内における無期転換制度の導入に向けて、どのような手順が必要となるのでしょう。厚生労働省が情報を発信する『有期契約労働者の無期転換ポータルサイト』を見てみると、下記の4ステップを経るべきと解説されています。

参考:厚生労働省『有期契約労働者の無期転換ポータルサイト』
http://muki.mhlw.go.jp/point/

STEP1 有期社員の就労実態を調べる
STEP2 社内の仕事を整理し、社員区分ごとの任せる仕事を考える
STEP3 適用する労働条件を検討し、就業規則を作成する
STEP4 運用と改善を行う

詳細は同サイトにて説明されていますが、重要なのは単に無期転換制度への対応を考えるだけでなく、「無期転換制度を元にした会社のルール整備」に目を向けることです。無期転換制度の導入は、必ずしも「無期契約労働者を創出すること」だけではありません。

例えば、
●働き方に制約を抱える有期契約労働者を「多様な正社員(※)」に転換し、長期的に安心して働ける環境を準備する
※多様な正社員…勤務地や労働時間、職務などの労働条件に制約を設けた正社員のこと

参考:厚生労働省「多様な正社員として働こう!」
http://muki.mhlw.go.jp/policy/diversity_pamph.pdf

●無期転換権の発生に合わせて有期契約労働者の「正社員転換」を推奨し、社内におけるキャリアアップを図れるようにする

などのように、正社員制度に関わる見直しに着手することも方法の一つ。無期転換制度への対応を、既存の雇用区分の見直しにつなげることができる、というわけです。

御社の無期転換対応は万全でしょうか?法改正に振り回されるのではなく、会社を変える良い機会として、無期転換制度について考えてみてください。

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