会計×IT×人材 これからの働き方、そして仕事の在り方 マネーフォワードが厳選した三氏に伺う 会計業界の未来とは?

クラウドツールの提供を通じて、世の中の効率化を支援したい。

この想いはマネーフォワードがサービス開発をする際、いつも原動力となっています。ツールを利用していただくことで、使う方々の働き方や意識が変わる。働く環境も変わっていく。そうした中で、働くことの喜びも変わっていく。そんなサービスを目指し続けてきました。
実際に会計業界の最前線で改革を進めている方たちが業界の未来をどう捉えているのか、働き方がどう変化していくと考えているのかを伺ってみたい。そのような想いから、今回の企画が始まりました。
第一回はクラウド会計を活用して製販分離に成功された、はぎぐち公認会計士・税理士事務所の萩口代表。第二回は監査法人から独立後、自らクラウド経営分析ツールを開発されている株式会社ナレッジラボの国見社長。第三回は大手コンサルティング出身で、現在は中小企業向けの経営コンサルティングをされている株式会社スピリタスコンサルティングの野原社長をお招きして、様々な角度からお話を伺う、毎月一回のシリーズ三部作でお届けします。
インタビュアー
株式会社マネーフォワード 執行役員・株式会社クラビス CEO/菅藤達也
革新される会計事務所像

今回のゲスト

埼玉県さいたま市出身。東京大学文学部卒。アクセンチュア株式会社にて大手通信ハイテク業における業務革新・基幹情報システム構築を経験。株式会社ヘッドストロング・ジャパンにて、中堅製造業における経営管理制度構築や新規事業開発のプロジェクトを担当。その後、父(元国税局査察部)の経営する会計事務所にて、経営財務コンサルティングサービスを開発して、独立。株式会社スピリタスコンサルティングの代表に就任。全国各地で中小・ベンチャー企業や税理士・会計事務所の経営者を対象としたセミナーや研修も実施している。

外資系大手のコンサルティング会社へ

菅藤:実は以前から会計業界とコンサル業界って、近いようでお互いに関する情報が知られていないように感じていました。そこで今回は大手外資系コンサル会社のご出身で、現在は中小企業向けコンサルをされている、株式会社スピリタスコンサルティングの野原さんにお話をお伺いさせていただくことになりました。どうぞよろしくお願いいたします。

野原:よろしくお願いします。今(取材当時)掲載されている特集の第一回、萩口先生のお話も拝見しました。とても興味深いお話でした。

菅藤:ありがとうございます。今回も野原さんの目から、会計業界はどう見えているのか。とても興味深いお話が伺えると期待しています。まずはご自身のご経歴からお聞かせいただけますか?

野原:私の父が関東信越国税局の査察部に勤めていまして。いわゆる「マルサ」ですね。公務員とは聞いていたのですが、何をしているのかわからない。平日はどこに行っているのかもわからず、土日にふらりと帰ってくる。そんな家庭でした。ちなみに母は小学校の教師でして…

菅藤:絶対に間違ったことできない家庭ですね(笑)。

野原:そうですね。叱られる時もマルサ流の取り調べを受けていました(笑)。悪いことをすると「そこへ座れ」と言われて、そこから2時間正座です。問いかけに対してテキトーな返答をしようものなら、「どういうことだ」と調査が入る。とても厳しかったですが、そこから「人にはロジカルに説明しなくてはならない」とか、「事象を分解して考えなさい」とか、「物事の裏側を見るように」といったことを得たと感じています。

菅藤:今の仕事につながるような思考法を、お説教の中から教えられたのですね?

野原:教えられたというよりは、何度も泣きながら体験することで身についた、という感じです。そんな父も退官して現在は会計事務所を営んでいるのですが、今でも目は笑わないんですよ。ニコニコして人当たりはいいのだけど、目の奥は笑わない(笑)。

菅藤:今の仕事に就かれたのも、そんなお父様の影響が大きかったのでしょうね。大学を卒業されてから、アクセンチュアにご入社された、と。なぜコンサルで、アクセンチュアだったのでしょうか?

野原:そもそも就活の際に、「やりたい仕事」がなかったんです。「ある会社に入り、その会社のために勤めあげる」という感覚もわかりませんでした。また仮に「やりたい仕事」があっても、会社内で責任ある仕事ができるようになるには入社してから相当な時間がかかるでしょう?それが待てなかった。

菅藤:しかし、アクセンチュアは少し違ったのですか?

野原:同級生に誘われてふらっと受けたんですね。そこで「若いうちに色々経験できます」とか「様々な業種をたらい回しにされるよ」と聞いて。やりたいことがないからこそ、色々と経験できるのは魅力に感じました。また、弱肉強食な世界であることも惹かれましたね。一年ごとのパフォーマンス次第で、「昇給する」か「さようなら」となるか。最初はそういう厳しい世界を経験してみたい、という気持ちが強かったのだと思います。

菅藤:ご入社された2000年ごろは今ほど「コンサル業界」って有名ではなかったかもしれませんが、既にアクセンチュアも大量採用を開始していましたよね。世の中にITが急速に広まり、企業のIT戦略を立てるとかBPR(※ビジネスプロセス・リエンジニアリング:業務プロセスの問題点を洗い出し、プロセスを再構築することで業務改善を行うこと)などの需要でアクセンチュアなどのコンサルが急激に伸びた時期だと伺っています。

野原:まさにそうです。私たちも同期入社が250名くらいいました。私もまさにBPRのコンサルタントとして入社しまして、ERP(エンタープライズリソースイズ・プランニング:企業の基幹系業務を統合し、総合的な経営を行うためのシステム)を導入してシステムと業務の最適化を図ることをしていました。花形ともいえる戦略プランニングチームへ行けたのは、同期入社の中でも20名いなかったと思います。

菅藤:当時取引されていたお客様って、超大手やグローバル企業ですよね。そういう企業のBPRって、具体的にどういうテーマなんですか?

野原:一番多く手掛けたのはサプライチェーンマネジメントっていう需要と供給の最適化を図るテーマでした。通信ハイテク系業界のクライアントなので世界的に拠点を配置しているのですが、お客様からの需要を予測して、それに基づいて部品を調達し、製造の方でいつ完成させて発送する…とか。実はそこに絡むテーマは色々あってマーケティングもあるし、セールスもあるし、倉庫や工場もあるし。そういうわけで業務的には色々な領域を短い期間で渡り歩かせてもらって、業務フローの最適化に向けて支援していました。私が携わっていたのは現状の業務フローを徹底的に可視化し、今後のあるべき業務フローを構築していくというフェーズでした。

菅藤:そのあたりを、少し詳しくお聞きできますか?

野原:そうですね。カテゴリーを分けずに一緒くたに「コンサルティング」と言ってしまうと混乱しがちかもしれません。まず一番の花形が「ストラテジック・プランニング」。何か新しいものを生み出して提案するという「プランニングのコンサルタント」です。次が「プロジェクト・マネジメント」。一定期間の中で所定のゴールに向かって上手く進んでいるかをチェックし、チューニングし、リードしていく役割です。プランニングそのものは別の人間がやっていますが、その実行管理はまた別の人間が担っています。そして3つ目が、先ほどお話した業務フローを可視化したりする、言わば「プロの業務代行」です。ここには新人コンサルタントなどが多くアサインされます。

コンサルタント=編集者?

菅藤:私もかつて企業の経営企画を務めていたことがあって、その時のことを思い出してみたのですが。本来、企業における課題について、一番よく知っているのは「当の本人たち」だったりしますよね。

野原:私はコンサルタントの位置づけは「編集者」なのかな、と思っています。作者は当然クライアントです。言いたいことや、やりたいこと、伝えたいことがある。でも、どうしたらより良く伝わるのか。そこは編集の腕次第だったりするわけで、「助っ人外国人」としてコンサルタントが登場する。だからコンサルタントは、クライアントのキーマンとすごく密接な関係を築くようになります。

菅藤:その表現、すごく納得いきます!クライアントも、漠然としてるものの課題が何かは見えているんですよね。そこから相談がスタートするわけです。ですがそこからいざ改革を進めようとすると、経験者もいなくてどうして良いか分からない。もしくは、それをやれる専任者がいない。 話は少し逸れますが、私もアクセンチュア出身の友人がいまして、彼から「いかにアクセンチュアが効率的に業務を進めるか」という話を聞いて驚いたことがあります。内部では分業が進んでて、リサーチするだけとか、企画書を書くだけの専門の部隊がいるんですってね?

野原:私の入社当時、隣には「日本語ペラペラの、処理能力が異常に高い、頭にターバンを巻いたインド人」が座っていました(笑)。彼が本当に優秀なんです。業務内容を伝えると、すぐに終わらせてしまう。そんな彼を入社一年目の私がマネジメントしなくちゃいけないんです。それができれば、次の年にはもっと大きなチームのリーダーに。できなければ…という世界です。

菅藤:友人も言っていましたが、インドにリサーチセンターがあって、優秀な人材が集まっているそうですね。衝撃だったのは、要は「全部を自分でやるのではなく、それを時差もある海外の人材に委託する。そうすると24時間、どこかのリソースを稼働し続けられる」っていう!

野原:自分で手を動かしていたのでは、パンクしてしまうんですよね。だから別の人の手を借りながら、業務を進める術を身につけていく。そうして自然と、先ほどお話したプロジェクト・マネジメントに移っていくわけです。コンサルティング会社って実は、収益の大半がアウトソースなんですよ。コンサルティングプロジェクトは、ほとんどフロントエンドという位置付けなんです。作ったものをお客さんに返すわけじゃなく、運用とか保守に関しては別働部隊で引き受ける。いわゆる「数珠つなぎ」なビジネス構図になっているんです。アクセンチュアは全世界をまたにかける大きなファームですが、収益の半分くらいがアウトソースです。そこをつなぐための先発ピッチャーになるのがコンサルティングプロジェクトです。

菅藤:これ、めちゃくちゃ面白い話ですよね!以前、Big4が分析した世界の国別の会計・財務におけるアウトソーシング市場規模のレポートを読んだのですが、アウトソーシングのベースってもちろんアメリカが一番大きい。その次にヨーロッパが出てきて、その次にいきなりインドが出てくるんです。インドってIT大国っていうイメージですが、実は会計アウトソーシングの業界規模が超大きい。それって要するにアメリカとかヨーロッパとかの仕事を、インドで回しているという構造があるんですよね。それ発見したときに「うおー!すごい!」と思って。即インドに見に行ったんですよ、アポなしでいきなり(笑)

野原:すごい行動力ですね。入れたんですか?

菅藤:さすがにダメでした(笑)。セキュリティーゲートから先に入れなくて。なので一度戻って、コネを作って、2ヶ月後にリベンジしました。バンガロールという街で、インド系の巨大コングロマリットのWiproという企業を訪問したのですが、ビックリしてしまって。さっきの話に少し戻るのですが、大卒&英語ペラペラ&会計も経験しているインドの若者たちが、月給4万円でアメリカの会計アウトソーシングをしている。その規模がまたすごくて、観光とかで使う巨大なバスに大量の経理スタッフを乗せて、まるで電車みたいに連なって街の中心地から郊外のWiproとかInfosysとかIBMのオフィスに吸い込まれていくんです。彼らはそこで仕事して、昼は大学のキャンパスみたいなところでランチ食べて。その人たちの月給は4万円です。そりゃあ日本かなわないやって、すごい衝撃でした。実はそれを見たのをヒントに作ったのが、当社のSTREAMED(ストリームド)というサービスなんです。

野原:STREAMEDを生み出す原点になったわけですね!

菅藤:要するに仕事を分解してアウトソースするっていうノウハウ自体が、ルーツをたどると実はコンサルにあると。世界規模で仕事を分配するっていう構図はそこにあって。人件費の違いと分業をものすごく上手にやって、高収益な経理アウトソーシング事業をまわしているのがまさにアクセンチュアなどのITに強いコンサルなんですよね。でも、それをもっと突き詰めて仕組化していくと、最終的にはAIとクラウドサービスになるんじゃないかなと思ってるんです。

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