公認会計士試験とは?試験内容や合格率を解説!

2023年12月19日(記事更新日:2024年3月14日)

公認会計士を目指すなら、まずは公認会計士試験を突破した上で実務経験等を積まなければなりません。
そこで本記事では、公認会計士試験の概要やスケジュール、試験合格後の流れ等を解説いたします。
各科目の内容や合格率も掲載していますので、試験勉強を始める前の参考にしてください。

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公認会計士試験の概要

公認会計士の受験資格や試験地等を確認しましょう。

受験資格

受験資格はありません。
年齢、学歴、国籍等にかかわらず、どなたでも受験できます。
特に学歴等が不要ということで他の資格よりも門戸を広く開放しており、幅広く誰でも受験に挑戦することが可能です。

試験概要

例年の試験時期

短答式試験:第Ⅰ回試験 12月
      第Ⅱ回試験 5月
論文式試験:8月下旬

公認会計士試験は短答式試験と論文式試験の2段階に分かれており、短答式試験に合格した人だけが論文式試験に進める方式です。
短答式試験は年2回実施され、両方を受験できる上にどちらか一方で合格すれば良いので、短答式試験は毎年受験のチャンスが2回あることになります。

試験地

東京都、大阪府、北海道、宮城県、愛知県、石川県、広島県、香川県、熊本県、福岡県、沖縄県の11都道府県です。受験者の所在地に関係なく試験地を選択できます。
たとえば「出張に合わせて東京で受験する」「長期休暇中、実家に帰省して最寄りの会場で受験する」といったことも可能です。

合格発表時期

短答式試験:第Ⅰ回試験 1月中旬
      第Ⅱ回試験 6月下旬
論文式試験:11月中旬

詳細な合格発表日については、前年の12月頃に予定版が、当年6月頃に確定版が公認会計士・監査審査会ウェブサイト上で公開されます。
また合格発表後概ね2週間以内に、短答式試験合格者には合格通知書が、論文試験合格者には合格証書が発送されます。

試験科目

短答式試験と論文式試験の2段階です。
短答式試験:財務会計論・管理会計論・監査論・企業法
論文式試験:会計学(財務会計論・管理会計論)・監査論・租税法・企業法・選択科目(経営学、経済学、民法、統計学のうち1科目)

試験時間

短答式試験:財務会計論2時間、管理会計論、監査論、企業法は各1時間の合計5時間
論文式試験:会計学5時間(2時間+3時間)、監査論、租税法、企業法、選択科目は各2時間の合計13時間

論文式試験は例年、金〜日曜日の3日間で試験が実施されます。

出題形式

短答式試験:マークシート方式による択一式試験
論文式試験:筆記試験

受験料

19,500円
短答式試験の出願時に納付します。
短答式試験の免除者であっても、同額を納付する必要があります。

合格条件

短答式試験と論文式試験に合格

短答式試験に一度合格すると、以降2年間は短答式試験が免除されます。
免除期間が過ぎれば再度短答式試験から受験し直すことになりますのでご注意ください。

合格基準

短答式試験:総得点の70%が目安
論文式試験:総得点の52%が目安

なお1科目でも40%に満たない場合は不合格になることがあります。

出典:公認会計士・監査審査会 

公認会計士試験の特徴

公認会計士試験は難関資格にもかかわらず受験資格がない等の特徴を有しています。本項でその特徴を理解しましょう。

受験資格がない

医師や弁護士になるためには原則として学歴等の一定条件が必要ですが、公認会計士は受験資格がないため、社会人でも受験しやすい資格と言えます。
実際に、社会人が公認会計士試験を受験し合格した例は少なくありません。

短答式試験合格後、論文式試験に合格する必要がある

公認会計士試験は短答式試験と論文式試験の2段階に分かれています。
短答式試験と論文式試験の両方に合格してようやく公認会計士試験の合格となるのです。

試験科目数が多い

試験科目数が多いため、勉強する範囲も学習時間も膨大になります。
科目別の出題範囲は「出題範囲の要旨」として公認会計士・監査審査会のウェブサイト上で発表されますので、内容を確認した上で勉強に取り組みましょう。

短答式試験「出題の要旨」公表日:
第I回(12月)短答式試験 6月頃
第Ⅱ回(5月)短答式試験 1月頃(暫定版)、4月頃(確定版)

論文式試験「出題の要旨」公表日:
1月頃(暫定版)、4月頃(確定版)

公認会計士試験のスケジュール

公認会計士試験は例年、短答式試験2回と論文式試験1回が実施されます。
それぞれのスケジュールを掲載しますので、いつ動き出すべきかの目安にしてください。

官報公告

6月頃に公告されます。
内容は限定的で、詳細が確認できるようになるのは次項「受験案内の公表期間」です。
令和5年より試験場の公表は「各試験期日の約1か月前に公認会計士・監査審査会ウェブサイト上」となりました。官報には掲載されませんのでご注意ください。

受験案内の公表期間

短答式試験実施日の約4カ月前に、公認会計士・監査審査会ウェブサイト上で公表されます。

第Ⅰ回(12月)短答式試験:8月頃
第Ⅱ回(5月)短答式試験:1月頃

免除申請

免除申請はインターネットまたは書面で申請可能です。
出願期限に間に合うよう申請しましょう。

インターネット申請:毎年8月頃
書面申請:通年

なおインターネット申請が認められていない免除要件もあります。
免除申請を行う場合は、受験案内で申請方法と申請期限をご確認ください。

出願受付期間

短答式試験実施日の約3カ月前の約1カ月間です。

第Ⅰ回(12月)短答式試験:9月頃
第Ⅱ回(5月)短答式試験:2月頃

インターネット出願と書面出願から選択でき、インターネット出願の方が1週間ほど長く受け付けています。

試験日

第Ⅰ回短答式試験:12月上旬
第Ⅱ回短答式試験:5月下旬
論文式試験:8月下旬

具体的な日程は公認会計士・監査審査会ウェブサイトでご確認ください。

合格者発表

第Ⅰ回短答式試験:1月中旬
第Ⅱ回短答式試験:6月下旬
論文式試験:11月中旬

試験免除制度

下記に該当する人は試験の一部又は全部が免除されます。
該当要件に当てはまるか確認してください。

短答式試験科目の免除要件

全科目免除要件

 1.大学等で商学・法律学の教授または准教授を3年以上経験した人
 2.大学等で商学・法律学の博士の学位を授与された人
 3.高等試験合格者
 4.司法試験または旧司法試験第2次試験合格者

一部科目免除要件

要件免除科目
税理士資格保有者財務会計論
税理士試験の簿記論と財務諸表論の両方で60%以上の成績を得た人財務会計論
会計専門職大学院で特定以上の科目数および修士の学位を取得した人財務会計論、管理会計論、監査論
一定条件を満たした法人で、会計または監査に関する業務に7年以上従事した人財務会計論

論文式試験科目の免除要件

論文式試験の全科目免除要件はありません。
下記要件に基づき一部免除が実施されます。

要件免除科目
大学等で商学の教授または准教授を3年以上経験、もしくは商学の博士の学位を授与された人会計学および経営学
大学等で法律学の教授または准教授を3年以上経験、もしくは法律学の博士の学位を授与された人企業法および民法
高等試験本試験合格者高等試験本試験において受験した科目
司法修習生となる資格を取得した人(高等試験司法課試験合格者以外)企業法および民法
旧司法試験第2次試験合格者旧司法試験の第2次試験において受験した科目
大学等で経済学の教授または准教授を3年以上経験、もしくは経済学の博士の学位を授与された人経済学
不動産鑑定士試験合格者及び旧鑑定評価法の規定による不動産鑑定士試験第2次試験合格者経済学または民法
税理士資格保有者(弁護士以外)租税法
企業会計に関する業務従事者で、公認会計士・監査審査会が認定した人会計学
監査に関する業務従事者で、公認会計士・監査審査会が認定した人監査論

出典:公認会計士・監査審査会 

公認会計士試験の難易度

公認会計士は三大難関資格の1つと呼ばれており、取得は簡単ではありません。
過去の合格率等から難易度を確認しましょう。

過去の受験者数、合格者数、合格率

<短答式試験の合格率>

年度
試験回
2019年
第Ⅰ回
2019年
第Ⅱ回
2020年
第Ⅰ回
2020年
第Ⅱ回
2021年
第Ⅰ回
2021年
第Ⅱ回
2022年
第Ⅰ回
2022年
第Ⅱ回
2023年
第Ⅰ回
2023年
第Ⅱ回
受験者数(答案提出者)6,610人5,604人7,245人5,616人9,524人9,949人9,870人11,401人10, 429人
合格者数1,097人709人1,139人722人2,060人1,199人780人1,182人921人
合格率17%13%16%13%22%12%8%10%9%
*2021年度第Ⅱ回試験は新型コロナウイルス感染症のため中止となりました。

<論文式試験の合格率>

年度2019年2020年2021年2022年
受験者数(答案提出者)3,792人3,719人3,992人4,067人
合格者数1,337人1,335人1,360人1,456人
合格率35%36%34%36%

短答式試験の合格率は20〜10%前後。一方で論文式試験の合格率は35%前後です。
つまり短答式試験にいかに早く合格するかが、公認会計士試験合格の鍵となります。

学歴・年代別の受験者数、合格者数、合格率

<学歴による合格率(2022年公認会計士試験)>

学歴受験者数
(論文式試験受験者数)
合格者数合格率
大学院修了290人39人13.4%
会計専門職大学院修了291人22人7.6%
大学院在学24人13人54.2%
会計専門職大学院在学39人14人35.9%
大学卒業1,841人632人34.3%
大学在学1,221人642人52.6%
高校卒業283人76人26.9%
その他78人18人23.1%
合計4,067人1,456人

<年齢による合格率(2022年公認会計士試験)>

年齢受験者数
(論文式試験受験者数)
合格者数合格率
〜19歳36人21人58.3%
20〜24歳1,959人929人47.4%
25〜29歳958人337人35.2%
30〜34歳456人117人25.7%
35〜39歳262人26人9.9%
40〜44歳165人19人11.5%
45〜49歳97人5人5.2%
50〜54歳54人1人1.9%
55〜59歳35人1人2.9%
60〜64歳23人00
65歳〜22人00
合計4,067人1,456人

大学在学の合格者がおよそ44%を占めていますが、高校卒業やその他の人の合格も見受けられます。
また年齢も千差万別で、20歳未満や50代での合格者が認められます。
公認会計士は年齢や学歴によらず幅広い層で合格している人がいます。

他の士業資格と合格率の比較

令和4年(2022年)における他の士業資格との合格率の違いは以下のとおりです。

受験者数合格者数合格率
公認会計士試験4,067人1,456人36%
税理士試験28,853 人5,626人19.5%
司法試験3,082人1,403人46%

公認会計士試験は受験資格が幅広く設定されているため、司法試験と比較して1,000人前後多い受験者数ですが、司法試験は受験資格によってすでに受験できる人が限られているため合格率が高くなっていると言えるでしょう。
一方で税理士試験の合格率は20%を切っています。受験者数は他の試験よりも多いことがわかりますが、毎年3万人以上いた受験者数は年々減少して、令和4年には28,000人台まで減っています。このことから令和5年には税理士試験の受験資格要件が緩和されています。

公認会計士試験が難しいと言われる理由

公認会計士は日本三大国家資格と言われるほど難しい試験です。
どのような点が難しいのかを把握し、あなたが乗り越えられそうかを検討してください。

試験範囲が広い

短答式試験と論文式試験の両試験とも、科目数が多く出題範囲も膨大です。し
かも科目合格制ではないため、1科目で満点を取得してもその他の点数が悪ければ合格とはなりません。
全科目をまんべんなく学習する必要があり、試験勉強には相当な覚悟と時間が必要になるでしょう。

専門性が高い試験内容

公認会計士試験は計算だけ、丸暗記だけでは合格できません。
まずは各条文や要件等を把握し、その仕組みや効果まで理解してようやく試験問題に向き合えるようになります。
専門用語も多いため、言葉の意味を調べながら試験勉強に取り組む人もいるほどです。
専門性が高いことも、公認会計士試験が難関である理由の1つなのです。

論文試験がある

論文式試験は、文章で自分の考えや答えを説明する試験です。
問題の意図も解答も理解していることを、文章を通じて採点者に伝えます。つまり自分が読んで納得できる文章ではなく、第三者を納得させられる文章が求められるのです。
短答式試験とは形式が全く異なるため、勉強方法を誤ると論文式試験でつまずいてしまいます。

問題量が多い

全体的に問題数が多く試験時間内では解ききれない科目がほとんどです。
特に管理会計論や租税法を試験時間内に全問に解答することはほぼ不可能と言われています。何の準備もしていなければ、問題文を全文読み終えることなく終了してしまうでしょう。素早く解答していく技術を身に付けることが必要となります。

公認会計士試験科目の内容

公認会計士試験は科目ごとに難易度が異なるため、効率的に学習を進めるために目安を知っておきましょう。
本項では難易度と共に科目ごとの内容も解説いたします。

科目ごとの合格難易度

科目ごとの合格難易度について、学習時間の目安から考えてみましょう。

科目短答式試験の学習時間目安論文式試験の学習時間目安
財務会計論900時間300時間
管理会計論400時間50時間
企業法300時間150時間
監査論200時間100時間
租税法(論文式試験のみ)350時間
経営学(論文式試験のみ)100時間

基本的に「学習時間が長いほど難しい」とお考えください。
特に財務会計論と管理会計論のボリュームが多く、勉強時間も他科目の2〜3倍程度必要です。簿記の理解が前提ですので、苦手意識のある人は上記よりも時間を要するかもしれません。
なお論文式試験の選択科目からは、中でも難易度が低めで多くの受験者が選択する「経営学」を掲載しました。

科目ごとの特徴

財務会計論

短答式試験:200点
論文式試験:200点

短答式・論文式どちらにおいても点数配分が最も多く、学習時間のウエイトも大きい科目です。「簿記」で計算力を「財務諸表論」で理論を問われます。
論文式試験では管理会計論とセットになり「会計学」として出題されます。

管理会計論

短答式試験:100点
論文式試験:100点

財務会計論に続くウエイトを占める科目です。財務会計論と同じく計算と理論が問われますが、内容は工業簿記と経営意思決定に関する方法が中心になります。
論文式試験では財務会計論とセットで出題されます。

企業法

短答式試験:100点
論文式試験:100点

「会社法」「商法」「金融商品取引法」の3つの法律について出題されます。
科目の中心は会社法で、中でも株式会社の企業活動や組織等に関する内容が重要です。ポイントを押さえて学習しましょう。

監査論

短答式試験:100点
論文式試験:100点

監査論では、公認会計士が備えるべき価値観を含め、監査業務についてのルールや背景等について出題されます。
実務を前提とした問題が多いため、学習時間と得点が比例しにくい科目です。ある程度の点数が取得できるようになった後は、他の科目に時間を使って効率の良い得点アップを目指すという切り替えも必要になるかもしれません。

租税法

論文式試験:100点

「法人税法」「所得税法」「消費税法」等の税金にまつわる法律について出題されます。
理論だけでなく計算問題も含まれるので、丸暗記では対応できません。
出題範囲も幅広いので、論文式試験の中ではトップクラスの学習時間を要します。

経営学(選択科目)

論文式試験:100点

「経営戦略論」と「ファイナンス論」を中心に出題されます。
出題範囲が狭く基礎的な出題が中心となるため、選択科目の中では最も難易度が低いとされています。
時事問題が取り上げられることもあり、経済動向に関心を払っておくことも重要です。

経済学(選択科目)

論文式試験:100点

ミクロ経済学とマクロ経済学について出題されます。
計算問題が中心となり微積分の知識も要求されますので、数学が得意な人にはおすすめの科目と言えそうです。

民法(選択科目)

論文式試験:100点

「財産法」や「家族法」といった日常行う行為を規律する法律について出題されます。
出題範囲が膨大なうえに、条文を覚えて理解することから始めなければなりません。
法学部出身や企業法務の経験があれば比較的取り組みやすいでしょう。

統計学(選択科目)

論文式試験:100点

記述統計や確率、統計的評価方法等が出題されます。
公認会計士となった後にも使える知識が身につきますが、数学が中心となるため苦手な人が多いようです。
高校数学を理解しており、数学をより深く学ぶことに抵抗がない人におすすめです。

公認会計士試験に合格したら

公認会計士試験に合格しても、すぐに公認会計士として活躍できるわけではありません。
試験合格から公認会計士となるまでの流れを把握しましょう。

1.就職活動の実施
公認会計士となるには、3年以上の実務経験と3年以上の実務補習が必要です。
そのため公認会計士試験に合格したら、まずは就職活動を開始します。
早ければ論文式試験の合格発表当日から採用活動が開始されますので、チャンスを逃さず希望する企業の求人募集を確認しましょう。
毎年度、試験合格者の多くは監査法人に就職するようです。

2.業務補助
業務補助等で3年以上の実務経験を積みます。この3年には試験合格前の実務経験も含まれます。

3.実務補習
原則として3年間の実務補習を受講します。
公認会計士試験の合格前で既に実務要件を満たしている場合は最短1年まで短縮可能です。

4.修了考査
実務補習の必修単位を全て取得した後、修了考査に合格すると公認会計士として登録できる状態になります。
修了考査は例年12月中旬ごろに実施されます。

5.公認会計士登録
日本公認会計士協会に必要書類を提出します。
登録申請が適法であると認められると、晴れて公認会計士として登録されます。

まとめ

公認会計士試験は短答式試験と論文式試験の両方をクリアしなければならなりません。平均的な総学習時間は3,000時間程度で、合格まで1〜3年を要するとされています。
しかし難関資格だからこそ、取得すれば就職や転職は有利になりますし、高収入を獲得するチャンスが生まれるのです。
学習計画を綿密に立て、公認会計士試験の合格を目指しましょう。

この記事の監修者

伊藤之誉

長野県長野市出身。慶応義塾大学商学部卒業。1998年に国内最大手の税理士事務所(現デロイト トーマツ税理士法人)に入社後、上場企業から中小企業まで多種多様なクライアントに対する申告書作成業務、税務調査立会など法人の税務全般業務に従事。連結納税や国際税務のコンサルティング、個人所得税の申告書作成、税務デューデリジェンス業務にも従事。執筆、外部研修講師なども経験。2011年に伊藤之誉税理士事務所を独立開業 。軽いフットワークを武器に難解な税法をわかりやすくお伝えし、経営者の皆様と共に成長し、喜びをわかちあえることを理想としています。

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