
40代から税理士を目指すことに不安を感じている方も多いでしょう。40代は社会人経験を活かし、税理士を目指すことが可能です。さらに、実務経験や科目合格があれば転職は有利になります。
今回の記事では、40代から税理士を目指すための具体的な方法を紹介します。自分の経験を活かし、税理士として新たなキャリアをスタートさせましょう。
40代から税理士は目指せる?

40代からでも実務経験や科目合格があれば経験なしの人と比較して転職が有利になり、社会人経験を活かしてキャリアアップも期待できます。ここでは、40代からの税理士資格取得について、具体的な方法と転職事情を見ていきましょう。
40代からでも税理士を目指すことは可能
40代から税理士を目指すことは十分可能です。しかし、実務未経験からの転職は20〜30代と比較すると難しい傾向にあります。40代から税理士を目指す場合は、実務経験や税理士試験の科目合格を持つことで転職が有利になります。40代から税理士を目指す方が知っておきたい転職市場の現状と40代税理士の平均年収を解説します。
■実務経験なしから税理士事務所への転職は20〜30代と比較して難しい
40代で実務未経験の場合、20〜30代の若い候補者と競争する必要があり、年齢によるハードルが存在します。
しかし、中小規模の税理士事務所の中には、社会人経験のある転職者を受け入れる事務所もあり、40代の転職先の一つになるかもしれません。中小規模の税理士事務所を経営する人の中には、他業種から税理士に転向した人もおり、キャリアチェンジへの理解を示しやすい環境が整っています。自分の社会人経験をアピールし経験を積むことで、さらなるキャリアアップが期待できます。
■実務経験、科目合格を持っている人の方が転職は有利
税理士事務所への転職を目指す際、実務経験や税理士試験の科目合格を持っていることは大きな強みとなります。税理士試験で一度合格した科目は永久に有効です。科目合格を持っていることで、専門知識を身につけようとしている姿勢に真剣さや今までの努力の証が評価され、転職活動でのアドバンテージになります。
実務経験を重視する事務所も多く、経験者は即戦力として高い評価を受けやすい傾向にあります。また、実務経験は税理士試験合格後の資格登録にも必須であるため、税理士登録を目指している人は早期に経験を積むことがおすすめです。
税理士業界で働いている年齢層をみると、40代までで税理士として活躍している人は全体の28.0%を占め、業界内ではまだ若手に分類されます。令和5年度(第73回)税理士試験結果によると、試験受験者の34.5%が41歳以上であることから、40代からでも税理士を目指している人が多いことがわかります。転職を成功させるためには、実務経験を積むとともに、科目合格を目指すことが成功のカギとなるでしょう。
出典
税理士会 税理士って?~一生の仕事を探すなら~
令和5年度(第73回)税理士試験結果
■40代税理士の平均年収
厚生労働省の職業情報提供サイトjobtagによれば、税理士の平均年収は746.7万円で、40〜44歳の平均年収は877.7万円、45〜49歳の平均年収は837.7万円です。
税理士になるには
税理士試験は、税理士に必要な知識と応用能力を判断することを目的としており、年に1回、例年8月上旬におこなわれます。税理士資格を取得するには、税理士試験に合格した後、2年間の実務経験が必須です。この実務経験は、パートやアルバイトなど非正規雇用も含めて認められます。
税理士試験では、会計学に属する科目2科目と、税法に属する科目のうち3科目(所得税法または法人税法は選択必須)を選択し、計5科目に合格する必要があります。税法科目は、自分のキャリアプランや得意分野を踏まえて選択しましょう。会計学に属する科目は誰でも受験可能ですが、税法科目は学識や資格、職歴などの条件を満たす必要があります。
税理士試験では科目別に合格を認める制度(科目合格制度)があり、一度に5科目を受験する必要はなく、1科目ずつ受験することも可能です。合格基準は、各科目ごとに満点の60%で、受験者の10〜20%が合格しています。
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40代から税理士を目指す際のポイント

40代で税理士を目指すには、資格取得に向けたプロセスの確認と、環境の整備が重要です。税理士試験は長期的な学習が必要で、最新情報を常に収集し、実務経験を積みながら資格を取得していきましょう。税理士を目指す際に気をつけたいポイントを解説します。
受験資格を満たしているか確認する
税理士試験の受験資格は、試験科目によって異なります。簿記論や財務諸表論は特別な受験資格がなく、誰でも受験可能ですが、税法に属する科目については、学識、資格、職歴など、いずれかの条件を満たす必要があります。受験を考える際は、自分が該当する条件を確認しておくことが重要です。
ご参考:国税庁 税理士試験受験資格の概要
家族や周囲の理解を得る
税理士になるためには、多くの勉強時間と2年間の実務経験が必要です。勉強に集中できる環境づくりや、実務経験を積むための転職が必要になる場合もあります。
総務省統計省国勢調査の年齢階級別未婚率の推移によると、40〜44歳の既婚率は男性67.8%、女性78.7%で、45〜49歳の既婚率は男性70.1%、女性80.8%と高く、税理士を目指す際には家族や周囲の支援が重要です。
また、40代が世帯主の年齢階級別の負債保有世帯の割合が67.9%と高く、ローンなどがある場合は、収入の変動に備えた経済的な計画を立て、家族と協力しながら勉強時間や実務経験を優先することが求められます。
多くの勉強時間がかかることを認識する
税理士試験は高難易度で、合格までに5~7年、長い場合は10年以上かかることもあります。試験は年1回で、科目合格制度を活用し、複数年にわたって学習を進めるのが一般的です。効率的な学習のために、生活リズムの見直しとスケジュール管理が重要です。
また、残業や休日出勤が多い職場では勉強時間が不足する可能性があるため、職場環境の見直しが必要になることも念頭に置いておきましょう。
常に最新の情報を収集する
税理士を目指すには、業界トレンドや法改正の情報収集を欠かさずおこない、常に勉強をし続ける必要があります。税理士になった後も勉強や最新情報のアップデートは継続して知識を身につけ、経験を積むことで、独占業務以外のコンサルティング業務などにも幅広く挑戦することが可能です。
研修や国税庁のWebサイト、メールマガジン、業界誌を活用して情報を収集し、税理士として組織再編や事業承継といった高度な業務に携わることで、知識を深めていきましょう。
実務未経験者は税理士事務所で働きながら資格合格を目指すのがおすすめ
税理士事務所で働きながら勉強すれば、一定の収入を得ることができ、生活費や学習資金を賄えるため経済的負担が軽減されます。家庭や生活の責任がある場合、収入を得ながら学ぶことは大きな利点です。
通常、税理士試験に合格しても、2年間の実務経験が必要で、合格後に職場で実務経験を積むことが求められます。働きながら実務経験を積むことで、資格取得後に税理士としての活動開始がスムーズになります。
また、税理士事務所には資格取得支援をおこなっているところもあり、同僚や先輩からのサポートを受けやすく、実務に関連する知識を学びながら試験勉強にも役立ちます。資格取得を応援してくれる税理士事務所であれば、勉強と同時に実践的な学びを深めていけるでしょう。
40代の転職は面接対策が特に重要

一般的に転職活動では、採用側が若い年齢を重視する傾向にあります。40代で転職をする際は社会人経験を活かし、具体的な実績や経験を示すことが重要です。転職先でどう貢献できるかを明確に伝えることが成功のカギとなります。面接で自信を持って自分をアピールできるように、事前に準備を整えておきましょう。
今までのキャリアやスキルの整理をおこなう
これまでの社会人経験で培ってきたキャリアやスキルを整理し、税理士業務にどのように活かせるかを具体的に説明できるようにしておくことが重要です。40代以上の場合、マネジメントスキルが求められることが多く、管理職やマネージャーの経験がある場合は、面接時に伝えておくと効果的です。
採用側は、長期的に働いてくれるかどうかを考え、過去の経験をもとにどのように貢献してくれるのかを重視します。具体的な成果や改善事例を挙げるために、自分の能力を証明する材料を準備しておきましょう。
税理士になった後のキャリアを明確に描く
税理士としての目標と、具体的なキャリアビジョンを持つことが重要です。例えば、クライアントの業務改善に貢献したいという目標を持ち、そのビジョンが転職先で実現できるかを考えましょう。
特定の分野に特化することでほかの転職者との差別化が図れ、専門家として信頼を得やすくなります。税理士とほかの資格を組み合わせるダブルライセンスの活用で、サービスの幅を広げることも可能です。
40代から税理士を目指す際に活かせるスキル/資格

40代から税理士を目指す際に活かせるスキルや知識は、転職で有利になるだけではなく、働くうえでも相乗効果が見込めます。ここでは税理士を目指す際に活かせるスキルや資格を紹介します。
スキル
40代から税理士を目指す際には、豊富な社会人経験を活かせます。税理士はクライアントと密接にかかわるため、コミュニケーション能力や分析力、経営知識が重要です。
事業会社での経験を活かして特定業界の専門知識を提供し、リーダーシップやマネジメントスキルで若手育成にも貢献できます。さらに、過去に携わった業界や業種での知識を活かして、新たな業種へクライアントを開拓することも可能です。
資格
40代から税理士を目指す際に活かせる資格として、簿記、FP、社会保険労務士があります。
会計事務所で簿記の知識は財務状況の分析に役立ちます。FPは主に個人の税金対策や資産形成、相続税の申告をサポートし、社会保険労務士は労務管理や人事制度の構築に関与できます。特に行政機関に提出する書類作成や提出代行、社会保険諸法令に基づく帳簿書類の作成は社会保険労務士にしかできない独占業務です。これらの資格を活用することで、税理士業務の幅を広げ、クライアントに価値あるサービスを提供できます。
ほかにも、司法書士や中小企業診断士、不動産鑑定士なども税理士資格と相性が良く人気です。すでに保有している資格を税理士の業務に活かしたり、今後取得したい資格を探してみるのも良いでしょう。
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転職エージェントを活用するのも有効

40代から税理士を目指す際に、転職エージェントを活用することは非常に有効です。税理士業界に特化したエージェントは、求人市場や業界の動向に精通しています。求職者に対して適切なアドバイスを提供しているだけではなく、非公開案件の紹介や長期的なキャリア形成をサポートする職場選びを相談することもできます。
人材ドラフトのエージェントサービスでは、専任カウンセラーがカウンセリングから面接の日程調整や入社日まで一貫してサポートし、入社後の活躍を見据えた転職支援をおこなっています。
まとめ

40代から税理士を目指すことは十分に可能です。40代は社会人経験で身につけてきた、コミュニケーション能力や経営知識を駆使して、クライアントに価値を提供できるという強みを生かしていきましょう。
また、簿記やFP、社会保険労務士などの資格も転職や実務に役立ちます。もし、キャリアチェンジに不安を感じているなら、自分の経験を活かせる場を見つけることが大切です。税理士業界に特化した転職エージェントも利用して、長期的なキャリア形成をしてみてください。