
税理士としての独立・開業は、収入や働き方の自由が広がる一方で、競争や資金面のリスクもともないます。本記事では、独立前に知るべき現状やメリット・デメリット、年収比較、開業までのステップや必要資金を整理します。さらに、成功のポイントや適したタイミング、他の独立方法やよくある質問などの細かいポイントも解説します。独立準備に必要な情報を理解して、自分に最適な開業プランを描く一歩を踏み出してみましょう。
税理士として独立・開業を考える前に知るべき現状

税理士の独立・開業は魅力的に映りますが、現実には競争激化や報酬水準の低下といった厳しい側面も存在します。ここでは独立前に押さえるべき業界情報をチェックしていきましょう。
独立税理士を取り巻く市場環境
税理士の市場は拡大していますが、競争は激しく、生き残るには差別化と効率化が欠かせません。
令和7年8月時点で登録税理士は81,565人に達し、数は増加しています。一方、税理士事務所数は減少傾向にあり、2024年の休廃業・解散率が5.61%と全業種内でワーストです。
競争の背景には顧問先の減少、報酬水準の低下、ベテラン税理士の多さ、高齢化による廃業が含まれます。会計ソフトやAIの普及、公認会計士との業務重複も影響し、単純な税務サービスだけでは十分な付加価値が示せなくなりました。
一方、インボイス制度や電子帳簿保存法の施行、経理アウトソーシング需要の増加により、新しい業務領域は広がっています。税務業務そのものがなくなることはなく、役割は拡大しています。
独立しても経営が安定しないと継続ができません。独立を目指す税理士には、申告や帳簿処理だけではなく、経営支援や効率化の提案が求められます。付加価値を示せるかどうかが顧客から選ばれる条件です。
引用:帝国データバンク「全国企業『休廃業・解散』動向調査(2024年)」
税理士として独立・開業するメリット/デメリット

税理士として独立・開業することには、大きな魅力と同時にリスクも存在します。ここでは、開業を検討する際に理解しておきたいメリットとデメリットを整理します。
メリット①:収入の増加が期待できる
独立開業すれば、スキルに応じて収入を大きく伸ばすことが可能です。一般的に勤務税理士の場合、能力が高くても給与には上限があります。しかし、開業すれば顧問契約の単価や報酬体系を自分で設計できます。相続やM&A、経営コンサルティングなど業務範囲を広げてもよいでしょう。
また、独立税理士で年収1,000万円を超える人も少なくありません。本来の業務以外にも、書籍出版やセミナー講師といった活動で収入の柱を多角化できることも魅力です。
メリット②:働き方の自由度が向上する
独立税理士は、勤務時間や場所などを自身の裁量で働き方の設計できます。経営が安定すれば、クライアント数やスケジュールを調整し、仕事とプライベートを両立しやすい環境を築けるでしょう。
育児や介護、趣味などライフイベントに合わせて柔軟に対応できる点も大きな魅力です。さらに、独立税理士には勤務税理士のように定年退職の概念がなく、意欲が続く限り長く活動できます。相続や不動産、ベンチャー支援など専門分野に特化したサービスを展開し、競合との差別化を図れるのも開業ならではの強みです。
メリット③:仕事のやりがいと自己成長
独立すれば、事務所の名前ではなく自身の名前で、クライアントと契約を結びます。クライアントの課題解決に直接関わり、その成果が信頼や報酬につながるため、仕事へのやりがいを強く感じやすいでしょう。
節税の提案や資金調達の支援、会計DXの導入といった高付加価値サービスを提供すれば、満足度やリピート率も高まり、長期的な事業の安定につながります。同時に、営業力やマネジメント力、経営する力などを磨けるため、専門性だけではなく経営者としての成長も期待できます。
税理士として独立・開業するにはメリットばかりではありません。次に、押さえておきたいデメリットをみていきましょう。
デメリット①:収入の不安定さ
独立税理士は勤務税理士と比べて、安定した収入を見込みにくい働き方です。開業直後は顧客基盤が整っておらず、十分な顧問契約を確保できない状況に陥ることもあります。
勤務税理士であれば給与や賞与、社会保障などが保証されていますが、独立するとそのすべてを自己責任で賄う必要があります。開業から1〜2年は売上が安定せず、貯金を取り崩すケースも珍しくありません。
また、税理士業務は繁忙期と閑散期の差が大きく、月ごとのキャッシュフロー管理も難しくなります。景気変動や顧問先の減少、報酬単価の変動など外部要因によっても売上が左右されやすく、黒字化する前に資金が不足するリスクも存在します。
したがって、開業を検討する際には十分な運転資金を事前に確保し、収入の波に耐えられる計画を立てることが重要です。将来の安定を得るためには、収入の不安定さを受け入れた上で資金管理をしていきましょう。
デメリット②:経営責任と業務負担の増加
開業後は営業活動や経営判断、資金繰りや事務作業、マーケティング、クレーム対応、人材管理など、幅広い業務をこなすことが必要です。勤務税理士は与えられた業務に集中できますが、独立税理士は経営者としての視点も求められます。
体調を崩しても代わりがいなければ休めず、業務が滞れば収入へダイレクトに影響します。顧客からのクレーム処理や労務管理なども発生し、精神的・肉体的負担が大きくなりやすいでしょう。
こうした負担を軽減するには、デジタルツールの導入や外部委託を活用し、業務の効率化を図ることが欠かせません。独立を目指すのであれば、経営責任を果たす覚悟を持ち、業務を最適化する仕組みづくりを早期に進めていきましょう。
デメリット③:競争環境への対応と知識の自己更新
独立税理士は競争の激しい市場環境に対応し、知識の継続的な更新が必要です。税理士登録者数の増加に加えて、AIやクラウド会計ソフトの普及によって従来の記帳や定型的な税務業務の需要が減少しています。
ベテラン税理士の多くは長年の経験と顧客基盤を持っており、新規参入の若手税理士が顧客を獲得するのは容易ではありません。また、税制改正やデジタル化は進み続けており、最新の知識を持たなければクライアントに適切な提案をおこなうことは困難です。
セミナーや研修に参加して学習を続けることや、専門分野での強みを明確にして価格競争に巻き込まれない戦略を取ることが重要です。税理士法人化の進展にともない、組織としての専門性や役割分担も進んでいるため、独立税理士も高付加価値サービスを提供できるよう、継続的に自己研鑽を重ねる姿勢が不可欠です。競争環境で生き残るためには、自己研鑽と差別化戦略を実行することを強く意識してみてください。
開業税理士と勤務税理士の年収比較

税理士の年収は、勤務と独立開業で大きく異なります。平均年収からどの働き方が自分に適しているかを見極める参考にしていきましょう。
勤務税理士の平均年収
勤務税理士は安定した収入を得やすい働き方です。給与体系や福利厚生が整い、経験や年齢に応じて昇給制度が設けられています。国税庁の令和5年民間給与実態統計調査によると一般労働者と比較し、勤務税理士は高収入水準にあります。
実際、厚生労働省の職業情報提供サイト(jobtag)によれば、勤務税理士の平均年収は約856万円で、一般労働者の平均給与約460万円と比較すると約1.9倍の水準です。経験年数が0年の若手は約400万円からスタートし、10年〜14年で経験を積んだベテラン層では約620万円以上となるのが一般的です。
安定性を重視し、確実にキャリアを積みたい人にとって勤務税理士は適した選択肢でしょう。
開業税理士の平均年収
開業税理士は高収入を得られる可能性があります。報酬体系を自分で決められ、事務所の規模や顧客数、専門分野によって収益を拡大できるためです。
総務省・経済産業省が発表した令和3年経済センサスによれば、開業税理士の平均売上は約3,300万円、そこから費用を差し引いた事業所得は約1,000万円です。成功すれば年収5,000万円以上に達するケースもあります。
一方、開業直後は顧問先ゼロから始まる場合も多く、勤務税理士より年収が低いことも珍しくありません。ただし、顧問先が増えてきた3〜5年目には勤務税理士の平均年収を上回る水準に到達することが期待できます。
また、開業税理士の収入は経営力や営業力に大きく左右されるため、安定した成果を得るには戦略的な取り組みが欠かせません。
引用:総務省・経済産業省 令和3年経済センサス「企業等に関する集計 産業横断的集計 経理事項等」
税理士として独立・開業するまでの具体的なステップ

税理士が独立・開業するには、資格取得から登録、そして開業準備までいくつかの段階を踏む必要があります。独立を成功させるには、各ステップを計画的に進め、知識と経験を積みながら実践力を高めることが不可欠です。開業を具体的に考える際は、流れを理解したうえで、自身の計画に落とし込んでみましょう。
税理士資格取得と実務経験
税理士になるには試験合格と実務経験の双方が必要です。税理士試験は会計学2科目、税法3科目の合計5科目に合格しなければなりません。一度ですべてに合格するのは難しく、数年かけて挑戦する人が多い傾向です。試験は例年5月に申し込み受付が始まり、8月上旬に3日間実施されます。結果は12月中旬に通知されます。
同時に、租税や会計に関する事務経験を通算2年以上積むことが必須です。会計事務所などで勤務しながら受験するケースが一般的で、実務経験は試験の合格前後どちらでも構いません。試験勉強と並行して実務を経験することで、知識と実践力を兼ね備えた形で独立を目指す準備ができます。
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税理士登録申請
税理士と名乗るには、日本税理士会連合会への登録が必要です。登録の際は、申請書や履歴書、身分証明書など複数の書類を提出し、税理士会支部による面接や実地調査を受ける必要があります。
登録が認められると税理士名簿に記載され、官報に公告されます。個人事業主として活動する場合は、税務署へ開業届出書や青色申告承認申請書も提出しなければなりません。
一般的に、登録から2〜3か月で税理士証票や税理士バッジが交付されますが、書類不備があれば差し戻されるため慎重な準備が必要です。登録申請は独立開業の前提条件であり、計画的に進めることでスムーズに開業への道を歩めます。
独立前の準備期間の過ごし方
独立前の準備期間は、開業後の成功を左右する重要な時期です。開業資金は事務所の敷金や礼金、オフィス備品の購入費用だけではなく、事業が軌道に乗るまでの生活費も含めて考えておく必要があります。同時に、会計事務所や税理士法人での、実務スキルや顧客対応力は必須です。
また、将来を見据えて情報収集をおこない、事務所運営の方法や営業ノウハウ、顧客コミュニケーションの手法を学ぶことも大切です。地域の競合や顧客層の調査をおこない、開業エリアを選定する準備も進めます。人的ネットワークの構築は独立後の顧客獲得に直結するため、税理士会の活動やセミナーへの参加を通じて人脈を広げることが有効です。
この準備期間に、資金計画や顧客獲得戦略を具体化すれば、独立後に必要な経営知識や営業力を備えた状態で開業に臨めます。準備期間を単なる待機時間とせず、成功の基盤づくりのために積極的に活用していきましょう。
税理士独立・開業にかかる費用概算

税理士として独立・開業する際には、資格や経験だけではなく、必要となる資金の準備も欠かせません。ここでは、自宅開業と事務所賃貸の費用例、資金確保のポイントを整理し、開業準備の参考になる内容を解説します。
自宅開業の場合の初期費用例
自宅を事務所にすれば、税理士開業の初期費用を大幅に抑えられます。自宅であれば敷金や礼金、仲介手数料といった新規で契約した際の賃貸費用が不要で、事務所関連の大きな支出を避けられます。実際に、自宅開業の初期費用を概算すると約100万円です。通勤が不要であることもメリットに挙げられます。
| 項目 | 目安金額 |
| 税理士登録・税理士会の入会費用 | 約20〜30万円 |
| パソコン・周辺機器・備品購入費用 | 約15~20万円 |
| 会計・税務ソフト利用料 | 約10~30万円 |
| ホームページ制作費・営業広告費 | 約30~50万円 |
| 合計 | 約75〜130万円 |
ただし、自宅開業は来客対応が難しく、オフィスがないことで顧客に対して信頼性に欠く印象を与えるリスクもあります。コストを抑えたい一方で、営業活動では信用面の対策が不可欠です。自宅での開業を選ぶ場合は、信頼性を補う工夫を取り入れていきましょう。
事務所賃貸の場合の初期費用例
賃貸で事務所を構えると、顧客対応に適した環境を整えられますが、初期費用は自宅開業の4〜5倍に膨らみます。敷金・礼金・仲介手数料・前家賃などに加え、内装や設備の費用がかかるためです。概算すると約200〜470万円が目安で、都心に事務所を構える場合はさらに高額になることも考えられます。
敷金・礼金・仲介手数料・前家賃など、賃料の6〜8か月分の事務所関連費用で考えた場合は、約350万円以上かかる見込みです。もし、都内10坪で月15万円の物件なら、1年分の家賃だけで約240万円、加えて内装費が100万円以上かかるケースも少なくありません。
一方で、事務所を持つことは顧客からの信用を高めやすく、来客対応もスムーズにおこなえます。コストを抑えたい場合は、レンタルオフィスやシェアオフィスを利用する方法もあり、比較的低コストで立地や設備を確保できます。事務所賃貸は初期費用が大きいため、運転資金も含めた慎重な資金計画が欠かせません。
運転資金の確保
開業時は初期費用だけではなく、運転資金の確保が必要です。開業直後は顧問先が少なく、売上が安定するまでに時間がかかります。実際は事務所経費や生活費を賄う必要があるため、3〜6か月分の運転資金を確保しておくのが望ましいとされています。
調達方法には、自己資金、銀行融資、自治体の制度融資、日本政策金融公庫の公的融資、さらにはクラウドファンディングなどがあります。調達した資金に余裕があれば、ホームページ制作や広告宣伝など集客に直結する投資へ振り向けるのも効果的です。
必要な金額を明確に把握し、細かく計画を立てておくことで、資金不足のリスクを軽減できます。資金繰りは開業後の安定を左右する要素であるため、早い段階から現実的な資金計画を策定していきましょう。
税理士独立・開業を成功させるための重要ポイント

税理士が独立・開業を成功させるには、単に資格や経験を持つだけでは不十分です。ここでは独立・開業を成功させるために押さえておきたい重要ポイントを押さえ、自分の強みを活かした経営戦略を考えていきましょう。
明確なビジョンとターゲットの設定
成功する税理士事務所は、自分の強みを明確にし、狙うターゲットを絞っています。専門性を示すことで競合との差別化ができ、顧客からの信用を得やすくなるためです。例えば、フリーランス特化、相続税専門、IT企業支援など、クライアントの業種や分野を絞ることで競争優位を築けます。
開業前に経営理念や方針を明文化すれば、行動計画も立てやすくなり、長期的な目標を短期・中期に分解して逆算することができます。結果として、専門分野を打ち出す税理士は顧客ニーズに合致しやすく、効率的な集客が見込めます。独立を検討する際は、自身の専門性とターゲット層を明確にしましょう。
営業力・集客力の強化
独立税理士は営業力と集客力を磨かなければ事業を継続できません。勤務税理士時代は事務所や企業から案件が与えられますが、独立後は自分で顧客獲得が必要です。SNS運用やSEO対策、広告などオンラインの集客施策や、勤務時代の人脈や紹介も集客に強力な手段です。さらに、セミナー開催や異業種交流会への参加で認知度を広げることも有効です。
実際に、ホームページやSNSでの情報発信を継続している事務所は顧客獲得が早い傾向にあります。新規開業ではまず営業体制を整え、多角的な方法で顧客接点を増やすことが欠かせません。
高付加価値サービスの提供
独立税理士が競争に勝つには、高付加価値サービスの提供が重要です。単なる記帳代行や税務申告はソフトウェアやAIに代替されつつあり、低価格競争に陥りやすくなります。経営コンサルティングや資金調達サポート、事業承継やM&A支援といった専門的サービスを展開すれば、顧客満足度が高まり、単価も上げやすくなるでしょう。
また、YouTubeやオンライン講座を活用した情報発信は、信頼性の向上にもつながります。このように、基礎業務に加えて付加価値を提供する税理士は競合との差別化に成功し、持続的な成長を実現しています。独立後は自分の専門領域を深め、高付加価値化を意識してみましょう。
業務効率化の推進
開業税理士が安定した経営をおこなうには、限られたリソースで多様な業務をこなす必要があり、効率的な業務フローの整備が不可欠です。
クラウド会計ソフトやAI-OCR、オンライン監査、チャットツールやタスク管理アプリの活用で定型業務を効率化できます。必要に応じてスタッフを雇用したり、業務委託やアウトソーシングを取り入れたりすることで、自身のリソースを高付加価値業務に集中できる体制を整えられます。
効率化が進めば、少ない労力でも顧客満足度を維持しながら安定した収益に持っていくことも難しくありません。開業準備段階から業務効率化を前提に仕組みを整えてみてください。
税法の継続的な学習・コミュニケーション能力向上
独立税理士は、税法の継続的な学習と高いコミュニケーション能力が欠かせません。税制改正や会計基準の変化に対応できなければ適切なアドバイスをおこなえず、顧客の信頼を失ってしまうからです。
また、弁護士や司法書士、社会保険労務士、中小企業診断士など他士業との連携や金融機関との協業を通じて、幅広いサービスを提供する機会が増えています。例えば、事業承継では税理士単独では解決できない課題が多く、他士業との連携が不可欠です。
常に学びを続ける姿勢と、相手に伝わるコミュニケーション力を高めることが、紹介や新規案件につながります。
適正な顧問料設定
税理士は適正な顧問料を設定することが、持続的な経営の鍵です。安易に料金を下げると受注数は増えても、利益率が下がり、長時間労働やサービス品質の低下につながります。市場水準や競合の料金を調査し、提供するサービスの価値や顧客ニーズに見合った価格を設定することが大切です。
もし、相場より安く設定した場合、短期的には顧客が増えても、時間的負担が増し収益は安定しません。一方、適正価格を保ち付加価値を明示できる事務所は、信頼を得ながら顧客を継続的に獲得しています。無理な値下げを避け、長期的に成長できる料金体系を築いていきましょう。
税理士独立・開業の適齢期とタイミング

税理士が独立・開業するのに「何歳が正解」という決まりはありません。ただし、実務経験や顧客基盤を考えると、独立に踏み出しやすい時期は存在します。ここでは、独立に適した年齢層や若年独立の特徴、年齢を超えて成功に必要な条件を解説します。
独立開業の年齢層の傾向
一般的に税理士が独立する年齢は、30代後半から40代前半が一つの目安です。税理士登録までに時間がかかることに加え、5〜10年の実務経験を積むことで、専門知識や顧客対応力を備えられます。幅広い税務経験を持ち、顧客から信頼を得やすく、開業後の事業運営も比較的スムーズに進められるでしょう。
一方で年齢による制限はなく、20代で独立することも可能です。実務経験2年以上で税理士登録をすれば、若くても開業に踏み出せます。年齢はあくまで目安であり、自分の状況に合わせた判断が求められます。
若年での独立のメリットと注意点
若いうちに独立すれば、開業初期の不安定さに柔軟に対応できます。若いうちは体力や時間に余裕があり、長時間労働や新しい挑戦に積極的に取り組めるからです。また、失敗しても回復し、トライアンドエラーを繰り返す期間を確保できる点も強みの一つでしょう。
ただし、経験や人脈が不足していると顧客獲得に苦労します。若年での独立を考えるなら、長期的に付き合いたい顧客層を早めに定め、価値を提供できるサービス設計をおこなうことが重要です。
年齢よりも重要な要素
独立・開業の成功を左右するのは年齢ではなく準備と戦略です。提供したいサービスや経営理念、希望する収入、ワークスタイルを整理し、ライフプランに沿った最適な時期を検討する必要があります。税理士としての専門性、実務経験、経営力、顧客対応力、ビジョン設定といった要素が年齢以上に重要です。
十分な資金や知識があっても精神的な準備が整っていなければ独立後に迷いが生じやすくなります。一方、若くても明確な戦略と実行力があれば成功を収められます。独立のタイミングは他人に合わせる必要はなく、自分自身の状況に即して判断しましょう。
独立・開業の他の選択肢

税理士が独立・開業する方法は、ゼロから自分で開業する以外にも複数の選択肢があります。自分の状況に合わせて最適な方法を選んでいきましょう。
税理士事務所の後継者候補となり独立する
既存事務所の後継者となる独立方法は、顧客基盤や業務ノウハウを引き継ぐ点で大きなメリットがあります。日本税理士会連合会の調査によれば、税理士の約70%が50歳以上であり、高齢化が進んでいます。クライアントとの長年の信頼関係があるため、簡単には廃業できず、後継者を探すケースも少なくありません。事業承継であれば既存の顧客や事務所運営のノウハウ、人脈、従業員をそのまま引き継ぐため、独立リスクを抑えやすくなります。
ただし、後継者自身がクライアントの信頼を得られなければ、契約を見直される可能性もあります。事業承継を成功させるには、丁寧な引き継ぎと誠実な顧客対応が不可欠です。将来の独立を検討するなら、承継という選択肢を視野に入れてみましょう。
独立支援制度のある会計事務所での勤務
独立支援制度を利用して、準備を整える方法もあります。一部の会計事務所や税理士法人では、顧客紹介制度や開業支援、営業・経営ノウハウの提供、のれん分け制度などを設けています。勤務を続けながら独立に必要なスキルや資金、顧客基盤を段階的に整えることが可能です。
制度では、研修や営業支援、人脈紹介、共同マーケティングの機会も用意されているケースもあり、独立後の成功率を高めやすくなります。ただし、一定期間の勤務や売上分配など条件が付与される場合があるため、制度内容を十分に理解しておきましょう。
税理士の独立・開業に関するよくある質問

税理士が独立を考える際、多くの人が共通して抱く疑問があります。ここでは独立希望者が知っておくべき典型的な質問と回答を紹介します。自分のキャリア設計に役立ててください。
Q.税理士が独立するまで何年かかりますか?
A.一般的には約7〜12年かかるケースが多いです。税理士登録には2年以上の実務経験が必須であり、さらに幅広い税務知識や営業スキルを習得するため、5〜10年ほど勤務を重ねる人が多いためです。
資金準備や顧客基盤の形成にも時間を要するため、独立を急ぐのではなく、長期的なキャリアプランニングを前提に準備を進めていきましょう。
Q.独立して最初の顧客はどうやって見つけますか?
A.最初の顧客は人脈や紹介から得るケースがほとんどです。多くの税理士は勤務時代に築いた顧客や知人からの紹介で、独立直後の顧客を獲得しています。ホームページやSNSでの情報発信、セミナー開催、紹介サイトへの登録なども効果的です。もし、独立支援制度のある事務所に勤務していれば、事務所の顧客を引き継ぐ場合もあります。
また、新規顧客を獲得するには異業種交流会や地域密着の営業活動なども有効でしょう。特定分野に特化した差別化戦略を打ち出せば、競合との差をつけやすくなります。結局のところ、信頼関係を丁寧に築くことが顧客拡大の鍵となります。開業前から意識的に人脈づくりや情報発信をはじめておきましょう。
まとめ

税理士が独立を目指すとき、自由な働き方や高収入といった魅力がある一方で、競争環境や資金計画などの課題もともないます。税理士が独立を成功させるには、市場動向を理解し、自分の強みを活かした経営戦略を立てることが欠かせません。不安を感じる方も、正しい準備を重ねれば着実に前進できます。
まずは、情報収集と計画づくりから着手していきましょう。
人材ドラフト:税理士の独立支援制度ありの求人・仕事情報
