会計事務所と税理士事務所/税理士法人の違いとは?仕事内容なども解説!

2024年1月24日(記事更新日:2024年3月14日)

「会計事務所」「税理士事務所」「税理士法人」と似ている用語が並んでいますが、一体何が違うのかと戸惑うこともあるでしょう。
そこで本記事では、「会計事務所」「税理士事務所」「税理士法人」そして「会計士事務所」の違いについて解説いたします。
結論から申しますと、税理士が代表を務めるのが「税理士事務所」「税理士法人」で、公認会計士が代表を務めるのが「会計士事務所」、「会計事務所」は税理士も公認会計士も立ち上げられる事務所です。

会計事務所と税理士事務所の違い

会計事務所と税理士事務所は、名称は異なりますが実態はほぼ同じです。業務内容もほとんど変わりありません。

会計事務所と税理士事務所はほぼ同じ

税理士法第四十条2項において「税理士が設けなければならない事務所は、税理士事務所と称する。」と定められているので、原則として税理士が立ち上げた事務所は「税理士事務所」になります。
しかし中には俗称である「会計事務所」を選択しているケースも見受けられます。
なお「会計事務所」という俗称は公認会計士が設立した事務所にも使用できるため、税理士ではなく公認会計士が所属している事務所の場合もあります。

出典:税理士法 

「会計事務所」とする理由

正式名称である「税理士事務所」ではなく「会計事務所」とするのは、その名称が与える印象に関係しています。
「税理士事務所」とすると税務に特化した事務所と捉えられる可能性が高く、「会計全般に対応している」と示すために、俗称である「会計事務所」を選択するのです。
従って「会計事務所」も「税理士事務所」も、税理士が代表を務めているならさしたる違いはありません。

ただし、公認会計士が代表を務めている事務所では、公認会計士の独占業務である「監査業務」が実施できるうえ、手続きを踏めば税理士の業務も可能になります。そのため業務内容が若干広がり、補助業務の範囲には違いが生まれます。

税理士事務所と税理士法人の違い

税理士事務所と税理士法人の違いは、個人か法人かという点です。
どちらも税理士が代表を務めるため業務内容に大きな違いはありませんが、規模や顧客層等が異なります。

組織形態が異なる

税理士が個人事業主として運営しているのが税理士事務所です。
一方で法人化しているのが税理士法人であり、税理士が2名以上所属しています。
税理士法人の創設が認められるようになったのは2001年の税理士法改正によるものです。税理士法人は法人格なので、課税対象が法人税になる、経費の幅が広がる、退職金の損金参入、欠損金の繰越控除期間が長くなるといった税金面のメリットを享受できるようになります。

参照:日本税理士会連合会 税理士制度 

税理士事務所と税理士法人の特徴

税理士事務所と税理士法人の特徴をそれぞれまとめました。

設立要件
税理士法人は各支店に税理士を常駐する必要はありますが、複数の事務所を展開することができます。
たとえば顧客の企業規模に関わらず、中小企業~大企業などといった幅広い顧客層に対応することも可能となります。
それに対して税理士事務所の場合は個人事業主にあたり、2つ以上の事務所の設置を禁止されています。
そのため一般的に地域密着型の業務を遂行する事務所が多いと言えるでしょう。

社会保険
税理士法人は、企業規模や従業員数によらず従業員の社会保険加入が義務付けられています。
対して税理士事務所の場合、従業員数によっては社会保険への加入が義務づけられていません。
具体的には、従業員数5人以上の税理士事務所(個人事務所)は社会保険の加入義務があり、従業員数4人以下の事務所は社会保険に加入しなくても良いとされています。
従業員数にかかわらず社会保険へ加入されている事務所もありますが、税理士事務所への転職を検討している場合は、従業員数と社会保険加入状況も確認しておきましょう。

参照:厚生労働省 

業務面
税理士法人は所属税理士の人数が多いため、分野特化型の専門税理士が多数在籍している可能性があります。
税務調査に強い税理士や相続税に強い税理士、法人税に強い税理士などが、クライアントからの様々な要望にチームで対応しているイメージです。そのため幅広い分野のエキスパートと仕事ができるでしょう。
一方で税理士事務所は個人で運営しているため、クライアントごとに税理士が振り分けられるイメージです。担当するクライアントの様々な要望に対応するため、実務を通して幅広い知識が身につきます。

なお上記はあくまでも傾向としていえることであり、税理士事務所と税理士法人の違いというよりも、事業規模による違いによって左右されます。
事務所ごとに得意・特化としている業界や業種なども異なりますし、個人事務所が大企業のクライアントを抱えていることもあります。

組織の規模による違い

一般的に、税理士法人の方が税理士事務所よりも組織規模が大きくなります。
組織規模が異なると、どのような違いが発生するのか確認しましょう。

大手税理士法人と中小税理士事務所の違い

税理士法人と税理士事務所では、大きく「クライアント」と「業務」の点で違いが見られます。

担当クライアント
一般的に、税理士事務所のクライアントは中小企業が中心となり、大企業は大手税理士法人へ依頼することが多いと言われます。
しかしこれは一般的な話であり、中小企業庁によると、日本国内における中小企業の割合は99.7%。ほとんどの企業が中小企業ということになります。
つまり税理士法人のクライアントにも中小企業や個人事業主は多く含まれるのが現実です。

参考:中小企業庁 

業務範囲
基本的に税理士事務所も税理士法人も会計や税務業務を対応するため業務内容に大きな違いはありませんが、クライアント規模の違いにより業務範囲が異なります。
税理士事務所は中小企業の確定申告業務や、経営者に近い存在として経営や節税の相談などが中心となります。
一方で、大企業をクライアントに持つ税理士法人の場合は、国際税務や税務コンサルティングなどの多岐にわたる業務範囲を担うこともあるでしょう。

働き手から見た違い

従業員として働く場合の違いをまとめました。
どのような働き方を希望するのか検討しながらお読みください。

大手税理士法人
大規模クライアントに対してはチームを組んで業務を遂行します。
要望に対応した専門税理士と一丸となって働き、プロジェクトメンバーの一員としてダイナミックな業務に携われます。
特に個人事務所ではなかなか経験できない国際税務など、特定分野の業務を担当できれば、高い専門性を身につけることができるでしょう。

中小税理士事務所
クライアントに対して税理士や担当者が割り当てられます。
地域に根差した事務所ほどクライアントとの関係性が深く、経営者層と直接話をする機会も多いでしょう。
多様な要望を直接聞き受け、幅広い業務範囲を経験することができます。
また小規模であれば事務所内での意思決定が早いことも特徴です。

会計士事務所と税理士事務所との違い

会計「士」事務所は、公認会計士が代表を務める事務所です。
一方で税理士事務所は税理士が代表を務めるため、明確な差があります。
なお公認会計士が代表を務める事務所の名称は「会計士事務所」「公認会計士事務所」「会計事務所」のいずれかになります。

所長の違い

事務所代表者の保有資格が異なります。
会計士事務所は公認会計士、税理士事務所は税理士が設立できる事務所です。
ところが公認会計士は税理士同様、俗称である「会計事務所」の名称も利用できるため、代表が税理士か公認会計士か分かりにくいこともあります。転職の際には求人票の内容をよく読んでおきましょう。
反対に、税理士は公認会計士の業務が実施できないので「会計士事務所」の名称は利用できません。
つまり「会計士事務所」であれば公認会計士の事務所と断定できます。

業務内容の違い

公認会計士が所属している会計士事務所や会計事務所では、公認会計士の独占業務である監査業務に加えて、手続きを踏めば税理士の独占業務も行えます。
対して税理士は公認会計士の独占業務を行えませんので、公認会計士が所属していない税理士事務所や会計事務所では、監査業務は行えません。

税理士事務所と会計士事務所の業務内容

所属しているのが税理士か公認会計士かで、その事務所内で取り扱える業務内容が異なります。
税理士の業務内容と公認会計士の業務内容を再確認しておきましょう。

税理士の業務内容

税理士が実施できる業務は、税務の代理を含めた独占業務と独占業務以外の2種類です。

独占業務
税理士の独占業務は「税務の代理」「税務書類の作成」「税務相談」の3つです。

税務の代理:税務署への申告や納税、税務調査に対して主張や陳述などを行う。本来は納税者本人が行うべき税務を代行すること。
税務書類の作成:税務署への納税申告の際に提出する書類の作成。
税務相談:納税者から税金についての相談に応じること。

独占業務以外の業務
税理士が提供できる独占業務以外の業務は、記帳代行や経営コンサルティング、起業支援などがあります。
ただし税理士事務所によって実施分野が大きく異なり、独占業務と会計業務のみを取り扱っている事務所もあれば、上記の独占業務以外の業務を全て行なっている事務所もあります。

公認会計士の業務内容

公認会計士が実施できる業務は、独占業務である監査業務と独占業務以外の業務、そして税理士の業務です。

独占業務
公認会計士の独占業務は「監査業務」です。
クライアント企業の財務書類が正しいかどうかを監査し、書類が適正であることを第三者として公に証明します。

独占業務以外の業務
独占業務以外にもその立場と資格を生かして、経営コンサルティング業務を中心とした様々な業務を展開しています。
たとえばM&Aに対するアドバイスや海外展開時の支援、内部統制構築のコンサルティングなどです。
しかし事務所によって提供している業務は大きく異なりますので、やりたい仕事が確定している場合は求人票やウェブサイトで確認しておきましょう。

税理士の独占業務
公認会計士は税理士会へ登録することにより、税理士の独占業務を行うことが可能になります。
そのため、公認会計士でありつつ税理士の独占業務を提供している事務所も存在します。

まとめ

会計事務所と税理士事務所・税理士法人について、以下のような違いで使い分けられていることがわかりました。

・税理士事務所:税理士が設立
・税理士法人 :税理士が設立&税理士が2人以上所属
・会計士事務所:公認会計士が設立
・会計事務所 :税理士事務所の俗称&税理士または公認会計士が設立

また、それぞれ規模やクライアント、取り扱い業務が異なります。
本記事で違いを正しく理解し、希望に合った働き方が叶う転職先選びにお役立てください。

この記事の監修者

伊藤之誉

長野県長野市出身。慶応義塾大学商学部卒業。1998年に国内最大手の税理士事務所(現デロイト トーマツ税理士法人)に入社後、上場企業から中小企業まで多種多様なクライアントに対する申告書作成業務、税務調査立会など法人の税務全般業務に従事。連結納税や国際税務のコンサルティング、個人所得税の申告書作成、税務デューデリジェンス業務にも従事。執筆、外部研修講師なども経験。2011年に伊藤之誉税理士事務所を独立開業 。軽いフットワークを武器に難解な税法をわかりやすくお伝えし、経営者の皆様と共に成長し、喜びをわかちあえることを理想としています。

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