税理士の将来性とは?業界動向や今後の税理士に必要なことを解説!

2024年3月26日(記事更新日:2026年7月14日)

AIやRPA(Robotic Process Automation)などのテクノロジーが進歩する近年。
税理士が担ってきた仕事の一部がなくなると噂されることもあり、税理士の将来性に不安を抱えている人もいるかもしれません。
今回は、税理士の将来性、税理士は今後どうすべきなのかを解説いたします。
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税理士業界の現状は?

税理士業界は過渡期を迎えています。
これまで業務の中心となっていた記帳代行などの単純作業が減少している一方で、中小企業数は減少、税理士数は増加傾向と、これまで長く続けられていた業務体制では対応が難しくなりつつあります。

テクノロジーの発達

AIやRPA、クラウドサービス、会計ソフトが普及したことで、自計化が進んでいます。自計化とは、伝票の整理や記帳業務、仕訳入力といった経理業務を中小企業が自社内で行うことです。
これらの業務は税理士資格がなくてもできる作業ですので、会計ソフトなどで対応可能になったことで税理士への外注数が減ってきているのです。
そのため税理士事務所では、単純作業の業務が大幅に削減されることとなりました。
業務削減は売上減少につながるものの、空いた時間と人手を使ってより高度な提案ができるようになったとも言い換えられます。
単純作業で終わりたくない・もっと高度なコンサルティング業務がしたい税理士にとっては追い風が吹いている状態です。

税理士登録者数の増加

税理士登録者数は年々増加しています。国税庁発表の平成2年(1990年)では57,073人でしたが、令和8年(2026年)5月末日時点の日本税理士会連合会の発表では82,233人に達し、平成2年と比べて約1.4倍に増えています。
一方、税理士試験の受験者数はかつて減少が続いていましたが、令和5年度に受験資格が大きく緩和されたことなどを背景に近年は増加へ転じ、令和7年度(第75回)まで5年連続で増加しています。それでも、過去の合格者が継続的に税理士として活動を続ける中で登録者の高齢化が進み、税理士全体では高齢化と若手不足が同時に進行しています。税理士が増加しているので1人あたりの顧客数は減少傾向にあります。しかし一方で、若手税理士が不足しているとも読み取れます。

出典:国税庁 税理士の登録者数 

出典:日本税理士会連合会「税理士登録者数」 

中小企業数の減少

税理士事務所の主要顧客となる中小企業数は減少の一途にあります。中小企業庁の集計によると、中小企業の数は2016年6月時点の357.8万者から、2021年6月時点では336.5万者へと減少しました。
直近の集計でも1年あたり約4.3万者のペースで減り続けています。
中小企業数減少の一因が経営者の高齢化と後継者不足であることは否めません。実際、後継者不在を背景に第三者へ事業を引き継ぐ動きは年々活発化しており、事業承継・引継ぎ支援センターへの新規相談やM&Aによる第三者承継の成約件数は過去最高を更新しています。顧客数そのものは減っても、承継・廃業・再編に伴う税務ニーズはむしろ増えているのが実情です。

出典:中小企業庁 中小企業・小規模事業者におけるM&Aの現状と課題

出典:中小企業庁「中小企業・小規模事業者の数(2021年6月時点)の集計結果」

SNSやインターネットの発達

パソコンやスマホを通じて、一般の方も以前より会計知識を身に着けやすくなりました。以前なら仕訳をするにも参考書や解説書を読み込む必要がありましたが、今では必要な時に必要な情報が入手できます。
自計化が進んだ要因の1つとも言えるでしょう。
AI、会計ソフトなどの発達により税務申告も以前より容易になりました。国税庁もスマホからの確定申告に力を入れており、令和8年(2026年)時点では、青色申告決算書や収支内訳書がスマホで作成できます。
経理に関する情報が手に入りやすくなったために、これまで税理士に求められていた単純作業や軽度な税務申告業務は減少しつつあるのです。

税制の複雑化

インボイス制度の導入、電子帳簿保存法の改正など、税制は年々複雑になっています。そのため、税理士はより高度な税務の専門知識を求められることとなりました。
ルーチンワークとしての仕訳作業などであれば、会計ソフトを使用して自計化できます。
しかし毎年行われる税制改正への正確な対応や細かなサポートはいまだ必要です。たとえばインボイス制度開始に伴う振込手数料の取り扱いの煩雑化について、多くの経理担当者が頭を悩ませています。
このような質問に対応できる専門家として、税理士は常に最新情報をインプットしていなければなりません。

税理士試験要件の緩和

年々、税理士試験受験者数が減少していることから、令和4年(2022年)に税制改正され、令和5年から試験要件が緩和されました。
具体的には、会計学科目は年齢に関係なく誰でも受験可能・税法科目も法律や経済を履修していなくとも受験可能、という要件緩和です。
これから税理士を目指す人にとって税理士試験にチャレンジしやすくなったのはもちろん、試験要件に該当しなかった人でも受験できる可能性が広がることになりました。

税理士の年収推移

公的統計で見る限り、雇用されている税理士の年収は全職種平均を大きく上回る高い水準で推移しています。

厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」によると、企業に雇用される税理士(公認会計士を含む)の平均年収は約811万円でした。直近の令和6年は約856万円で、ここ数年は800万円前後の高い水準を維持しています。

国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」による給与所得者全体の平均年収は約478万円です。これと比べると、税理士の年収はおおむね1.7倍前後の水準にあります。さらにこの数字は雇用される税理士の平均であり、税理士全体の約7割を占める開業税理士や、税理士法人の社員(役員)税理士では、さらに高い収入を得ている人も少なくありません。

区分平均年収(目安)出典
雇用される税理士(令和7年)約811万円賃金構造基本統計調査
雇用される税理士(令和6年)約856万円賃金構造基本統計調査
給与所得者全体(令和6年)約478万円民間給与実態統計調査

出典:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」(e-Stat)

出典:国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」

年ごとに多少の増減はあるものの、税理士の年収は数年前と比べても高い水準を保っており、長い目で見れば上昇基調にあります。

税理士業界の今後について

それでは税理士業界はどのようになっていくのでしょうか。
前項でお伝えした税理士業界の現状から、今後の傾向を読み解いてみましょう。

AI・ITツールとの分業

単純作業をツールやAIにより自動化し、より高付加価値のある業務に注力できるようになるでしょう。
クライアントが自計化していく傾向もあり、仕訳作業のような単純作業自体が減少していくと思われます。
会計ソフトなどで代替できる作業は、税理士の手から離れていき、コンサルティング業務を中心とした高付加価値の業務に置き換わるでしょう。

若手税理士にチャンス

税理士試験受験者の減少により、年々若手税理士が減少。
また現在の税理士の平均年齢は60歳以上と言われており、税理士全体での高齢化が進んでいます。
一方で、前述のAIやITツール普及の側面から、それを強みにしている若手税理士の需要があるのも事実です。
ほかにも、フラットな関係を求める経営者や、YouTuberなどの新しい分野で成功した個人事業主など、中小企業経営者層は二人三脚で成長していけるパートナーを探していることもあります。
このような若手税理士が活躍できるシーンは時代とともにさらに増えていくでしょう。

副業・フリーランスの増加

平成30年(2018年)に、厚生労働省が「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を作成し、「モデル就業規則」から副業を禁止する規定が削除されました。
これを機に、会社員でも副業を行う人が増えています。世界規模の感染症が発生した際には、ワイドショーで副業について取り上げられるほど話題になりました。
会社員が副業をした場合でも、給与以外の所得が20万円を越えれば基本的には確定申告が必要です。
この流れから、副業の所得が多い個人が税理士に申告代行を依頼するケースが増えています。

専門性が求められる可能性

テクノロジーの発達により、経理については自計化が進んでいます。
しかし、クライアントにとって税理士は不要になるわけではありません。
今後は、より専門的で複雑な業務を求められるでしょう。
たとえば法人税の決算のみを担当していたが、相続について相談されるかもしれません。この時、相談を受けられる税理士であれば契約は続行されるでしょう。
今までより高度な専門性を磨き、クライアントの要望に応え続ける必要があるのです。

今後の税理士に求められること

税理士を取り巻く環境は刻一刻と移り変わっています。
前項でも紹介したように、税理士に求められているスキルは変化しつつあります。
今後クライアントから必要とされるスキルとはどのようなものなのか、具体的に見ていきましょう。

AIやIT活用による業務効率化

まずは税理士事務所内で単純作業を自動化するなどして、業務効率化を進めます。AIは人間が何時間もかかる作業を一瞬で正確に提示してくれるので、業務にかかる時間がグッと短縮できるでしょう。
業務効率化の目的は、単純労働に回す人件費を抑制し、後述する付加価値の高いサービスにシフトすることです。
パートやアルバイトの手が空く場合は、高付加価値のサービスを提供する税理士や税理士補助の書類作成などのサポート業務を行ってもらいましょう。

コンサルティングなど付加価値の高いサービス提供

AIやITにより捻出した時間を使用し、付加価値の高いサービスを提供しましょう。高付加価値のサービスが提供できる税理士はクライアントから重宝されますし、顧客満足度の向上にもつながるでしょう。
特に国際税務・相続・税務コンサルティングは、今後増えてくると考えられます。
今のクライアントが求める専門性にシフトするか、今後伸ばしていきたい専門性にシフトするかは考え方次第ですが、どちらにせよ高付加価値のサービスを提供していくことが求められます。

専門性を高め得意分野を作る

専門特化した分野といえば、たとえば国際税務、事業承継、M&Aなどがあります。
専門性を高めることで、クライアントのニーズを鮮明にすることができ、課題解決に貢献できる機会が増えます。
クライアントからも寄り添ってもらえるという満足感や信頼感が得られます。
専門分野での依頼が増加すればスキルを磨き続けられるだけではなく、「○○の分野ならあの税理士」と認識されるでしょう。専門分野を作るまでは大変ですが、専門分野においてクライアントから指名されるようになるかもしれません。

より高いコミュニケーションスキル

クライアントが何に悩んでいるのか、どこに課題があるのか、などを把握するためのヒアリングにもコミュニケーションは必須です。
高付加価値サービスとなるコンサルティングや専門性の高い分野に特化していれば、なお重要です。コミュニケーションスキルの良し悪しはクライアントとの信頼関係に直結し、税理士の評価にもつながります。
またAIにはコミュニケーション面を期待することは難しいため、高度なコミュニケーションスキルは、今後の税理士にとって必要不可欠なスキルとなるでしょう。

専門分野別の特徴と将来需要

「専門特化」と一口に言っても、分野によって需要を押し上げている要因も、求められる人材像も異なります。ここでは転職・就職で特に評価されやすい4分野について、特徴と将来需要、キャリア上のメリットを整理します。

相続・資産税

高齢化の進展に加え、平成27年の基礎控除引き下げにより、相続税は「一部の富裕層だけのもの」ではなくなりました。相続税の課税対象となった被相続人は令和6年分で16万6,730人と過去最多を更新し、亡くなった人に占める課税割合は10.4%(約10人に1人)まで上昇しています。
相続は課税額も高くなることが多く、税制も複雑になるため、専門的な知識と経験が求められます。そのため、特にクライアントのニーズに応じた相続対策コンサルティング需要が高まっています。また、生前対策・事業承継とも親和性があり、相続案件の経験は転職市場でも高く評価されます。

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国際税務

企業のグローバル化や人材の国際移動に伴い、移転価格税制、タックスヘイブン対策税制、非居住者・外国人課税、消費税の国際取引など、国際税務の論点は年々高度化しています。語学力と国際税務の知識を併せ持つ人材は希少で、BIG4税理士法人や大手・中堅事務所、海外進出企業の社内税理士など活躍の場が広く、報酬水準も高めです。AIで代替しにくい制度横断の判断業務が中心のため、長期的に需要が見込める分野で、英語力を活かしたい人にとって有力なキャリアの選択肢になります。

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M&A・事業承継

中小企業の経営者高齢化と後継者不在は深刻で、いわゆる「2025年問題」では70歳を超える中小企業・小規模事業者の経営者が約245万人、うち約半数が後継者未定とされてきました。これを背景に第三者承継の需要は急拡大しています。公的支援窓口である事業承継・引継ぎ支援センターでは、令和7年度の第三者承継に関する新規相談者数が16,322件、M&A成約が2,265件といずれも過去最高を更新しました。
財務デューデリジェンスや株価評価、組織再編税制などは税理士の知見が直接活きる領域で、承継・M&Aの経験はキャリアの希少価値を大きく高めます。

出典:中小企業基盤整備機構「令和7年度 事業承継・引継ぎ支援事業の実績について」

出典:中小企業庁「中小企業・小規模事業者におけるM&Aの現状と課題」

IT・補助金支援

インボイス制度や電子帳簿保存法への対応、IT導入補助金・ものづくり補助金・事業再構築補助金などの申請支援は、近年とくに相談が増えている分野です。
これらの補助金は「認定経営革新等支援機関」の関与が要件・加点になるものが多く、認定支援機関の中心的な担い手が税理士・税理士法人です。国は直近でも令和8年(2026年)6月に420機関を新たに認定するなど、支援機関を拡充し続けています。
補助金・IT・資金繰り支援は中小企業の経営に直結するため、顧問契約の獲得・維持にもつながりやすく、IT活用に前向きな税理士ほど強みを発揮できる分野です。

出典:中小企業庁「認定経営革新等支援機関」

【専門分野別の特徴まとめ】

分野需要を押し上げる要因
相続・資産税高齢化・基礎控除引き下げで対象案件が増加
国際税務グローバル化・移転価格・外国人課税の高度化
M&A・事業承継経営者高齢化・後継者不在で第三者承継が急増
IT・補助金支援インボイス・電子帳簿・各種補助金の拡充

よくある質問

Q.税理士はなくなる?AIで仕事は消える?

A.AIで効率化されるのは記帳や仕訳などの単純作業が中心で、税制改正への判断や、クライアントの状況を踏まえた助言・意思決定の支援といった業務はむしろ重要性を増しています。
「仕事が消える」というより「仕事の中身が単純作業から付加価値業務へ移る」というのが実態に近いでしょう。

Q.税理士に将来性はある?どんな人が生き残る?

A.より高度化したニーズは常に存在し、将来性は十分にあります。具体的には、① AI・ITツールを使いこなして業務を効率化できる人、②相続・国際・M&A・補助金支援など需要が伸びている分野で専門性を磨ける人、③経営者の悩みを引き出し提案できる高いコミュニケーション力を持つ人などが挙げられます。
反対に、単純な記帳代行だけに依存する働き方は厳しくなっていくでしょう。

Q.未経験・若手でも税理士業界に転職できる?

A.可能です。若手不足と高齢化が同時に進んでいるため、ポテンシャルのある若手や、科目合格者・税理士補助としての実務未経験者にもチャンスがあります。まずは会計事務所・税理士法人で補助業務から実務経験を積み、科目合格を重ねながらキャリアアップしていくのが王道です。
IT活用やコミュニケーションを強みにできれば、未経験からでも評価されやすいでしょう。

まとめ

AIにとって代わられる職業と言われる税理士ですが、もちろん税理士という職業がなくなることはありません。これまで通り人間が行わなければ成り立たない業務は確実に存在します。
しかし、税理士業界にも時代の流れとともに、今までのやり方が通用しなくなっています。
これからは顧客からの評価を得て、より価値を高める必要があるでしょう。ぜひ本記事を参考に現状を振り返り、今後について考え行動に移すきっかけになれば幸いです。

この記事の監修者

伊藤之誉

長野県長野市出身。慶応義塾大学商学部卒業。1998年に国内最大手の税理士事務所(現デロイト トーマツ税理士法人)に入社後、上場企業から中小企業まで多種多様なクライアントに対する申告書作成業務、税務調査立会など法人の税務全般業務に従事。連結納税や国際税務のコンサルティング、個人所得税の申告書作成、税務デューデリジェンス業務にも従事。執筆、外部研修講師なども経験。2011年に伊藤之誉税理士事務所を独立開業 。軽いフットワークを武器に難解な税法をわかりやすくお伝えし、経営者の皆様と共に成長し、喜びをわかちあえることを理想としています。

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