大手・準大手会計事務所(税理士法人)とは?特徴や平均年収、求人動向などについて解説!

2025年5月14日(記事更新日:2025年5月14日)

会計事務所や税理士法人では、規模によって大手・準大手などと分類されています。今後のキャリアを考えて就職を検討する際に、規模や特徴の違いを知らないと、自分に最適な職場の探し方に迷う人もいるでしょう。実際に税理士法人には、BIG4、大手、準大手などの規模によって業務内容・キャリアの方向性において違いがあります。
今回の記事では、BIG4税理士法人、大手税理士法人、準大手税理士法人の特徴を解説します。それぞれの平均年収や求人動向の違いを理解し、自分に合った税理士法人を選んだり、理想の働き方に近づく一歩を踏み出したりしましょう。

大手・準大手会計事務所、税理士法人とは?

税理士法人や会計事務所にはBIG4、大手、準大手といった分類が存在しますが、明確な法的定義や業界基準が設けられているわけではありません。主に従業員数、売上規模、拠点数、クライアント層といった客観的な指標をもとに、業界内で一般的に使われている分類です。
転職活動をする前に、法人の規模感や対応する業務範囲を把握することは重要です。ここでは、代表的なBIG4税理士法人、大手税理士法人、準大手税理士法人の特徴について詳しく解説します。

BIG4税理士法人

BIG4税理士法人とは、世界4大会計事務所グループに属する税理士法人です。会計・税務・監査に加えてコンサルティングやM&A支援、内部統制などの高度なサービスを提供しており、日本国内においても約1,000人規模の法人を展開しています。
グループ会社との連携を通じて、税務戦略だけでなく、法務・財務・経営課題全般に対応できる総合力が魅力です。

BIG4に該当する税理士法人は以下のとおりです。
・デロイト トーマツ税理士法人
・KPMG税理士法人
・PwC税理士法人
・EY税理士法人

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大手税理士法人

BIG4税理士法人以外で、従業員数が約1,000人規模で、国内でも高い認知度と信頼を誇る大手税理士法人を独立系税理士法人とされています。
BIG4税理士法人のようなグローバルネットワークを持たないものの、相続・事業承継・組織再編・医療福祉など、特定分野に特化した専門性を武器に大企業から中堅・中小企業まで幅広い層に対応しています。

代表的な法人は、以下のとおりです。
・辻・本郷税理士法人
・税理士法人山田&パートナーズ

準大手会計事務所(税理士法人)

準大手会計事務所は、大手税理士法人に次ぐ規模で、主に従業員数約100名〜400名規模の法人です。大手税理士法人と比べ、クライアントとの距離も比較的近く、迅速な対応や個別提案ができる点に強みがあります。新興・旧監査法人系、地方と3つに分類できます。

準大手・新興会計事務所/税理士法人
準大手・新興会計事務所/税理士法人には、近年急成長を遂げている事務所が含まれています。

主な法人は以下のとおりです。
・太陽グラントソントン税理士法人
・BDO税理士法人
・日本クレアス税理士法人
・クリフィックス税理士法人
・税理士法人令和会計社
・税理士法人AGS/AGSコンサルティング
・東京共同会計事務所
・青山総合会計事務所
・税理士法人チェスター
・税理士法人レガシィ
・あいわ税理士法人
・汐留パートナーズ税理士法人/汐留パートナーズグループ
・アクタス税理士法人
・税理士法人高野総合会計事務所
・アタックス税理士法人
・TOMA税理士法人/TOMAコンサルタンツグループ

旧監査法人系会計事務所/税理士法人
旧監査法人系の会計事務所/税理士法人とは、かつて存在した監査法人から派生した税理士法人や会計事務所です。監査業務で培った経験とノウハウを活かし、税務・財務・経営コンサルティングにおいて高い専門性を発揮します。

代表的な旧監査法人系会計事務所/税理士法人は以下のとおりです。
・税理士法人みらいコンサルティング
・朝日税理士法人

地方の大手会計事務所/税理士法人
地方に拠点を構える大手会計事務所/税理士法人は、地域密着型のサービスに特化している法人です。
全国展開する法人とは異なり、地域経済や産業構造への理解が深く、地域特有の税務・労務課題への対応力に優れています。なかには1,000社以上のクライアントを抱え、地方経済において確固たる地位を築いている法人も存在します。

代表的な地方大手会計事務所/税理士法人は以下のとおりです。
・アタックス税理士法人
・名南税理士法人
・税理士法人ゆびすい
・税理士法人池脇会計事務所

大規模な税理士法人(BIG4・大手税理士法人)の特徴

BIG4税理士法人や大手税理士法人は、業界内でも圧倒的な規模と専門性を誇る組織です。大規模な税理士法人では、複雑かつ高度な税務ニーズに対応し、グローバルレベルでのアドバイザリー業務も展開しています。
BIG4税理士法人は、監査・コンサルティング部門と一体となったグローバルグループに属しており、国際業務への対応力が際立っています。一方、大手税理士法人は国内独立系が中心で、特定の税務領域に特化した深いノウハウを提供している点が強みです。

クライアント/業務の特徴

大規模な税理士法人の主なクライアントは上場企業、外資系企業、大手金融機関などです。国際税務、M&A支援、組織再編、財務戦略の策定といった高度なニーズを持っており、対応できる専門性を求められます。
中でもBIG4税理士法人では、同一グループに属するコンサルティング会社や監査法人と連携し、ワンストップで包括的な提案が可能です。業務体制もプロジェクト単位で編成されることが多く、税理士・公認会計士など、各分野のプロフェッショナルが協働する体制が整っています。
日常的な記帳代行や年次決算業務は少なく、税務レビューや税務アドバイザリーといった知見が問われる業務が中心です。特定の専門知識や実務経験の蓄積がしやすい環境が整っています。

大規模な税理士法人(BIG4・大手税理士法人)で働くメリット/デメリット

大規模な税理士法人で働けば、高度な専門分野に特化した実務を経験できる反面、幅広い税務業務のスキルの習得が限られることもあります。ここでは、大規模な税理士法人で働くメリットとデメリットを詳しく解説します。

メリット
大規模な税理士法人では、専門性の高い業務に携わる機会が豊富です。特にBIG4においては、グループ内の監査法人やコンサルティングファームとの連携により、監査・税務・戦略の垣根を越えた実務経験を積めます。
一般的な税理士法人と比べて年収が高めであり、教育制度や福利厚生が充実している傾向があります。グローバルに展開している法人も多く、海外出張や現地法人への赴任など、国際的なキャリア形成の機会があることも魅力の一つです。

■ デメリット
大規模な税理士法人は業務の専門性が高い分、幅広い実務経験を積む機会が限られる側面もあります。大手企業を対象とした業務スタイルに慣れれば、中小企業の顧客との関わりや独立後の対応において、コミュニケーションのスタンスや業務フローにギャップを感じることも少なくありません。自らのキャリアの方向性を明確にしたうえで、働き方を選びましょう。

大規模な税理士法人(BIG4・大手税理士法人)の平均年収

厚生労働省の「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、従業員数1,000人以上の法人における公認会計士・税理士の平均年収は922.3万円とされており、これは一般的な税理士法人と比較しても非常に高い水準です。
新卒社員の初任給ベースでも、年収400〜500万円程度とされており、アソシエイト、シニアアソシエイト、マネージャー、シニアマネージャーといった職階に応じて、収入は大きく上昇していきます。
大規模な税理士法人は従業員数が多く、成果や専門スキルに応じた評価制度が整備されているため、若手のうちから高年収を目指すこともできるでしょう。

引用:令和5年賃金構造基本統計調査

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準大手会計事務所(税理士法人)の特徴

準大手会計事務所/税理士法人とは、特定分野に特化して専門性を高めているケースや、幅広い業務に対応できる汎用力の高さを特徴としています。規模感としては全国展開している法人もあれば、都市圏に特化して密度の高いサービスを提供している法人もあり、そのスタイルはさまざまです。
特に将来の独立や幅広い経験を求める人材にとって、有力なキャリアステップとなるポジションといえるでしょう。

クライアント・業務の特徴

準大手会計事務所/税理士法人のクライアントは、大企業からベンチャー企業、さらには医療法人や不動産事業者まで幅広く存在します。一般的な法人税・所得税・消費税の申告業務に加え、資産税業務(相続税・贈与税)、SPC(特別目的会社)関連業務、組織再編、財産評価など、特定分野に強みを持つ法人も珍しくありません。
準大手会計事務所では一般的な税務の業務に加え、付加価値を提供することが多く、企業の経営支援や資産形成に深く関与する機会もあります。

準大手会計事務所(税理士法人)で働くメリット・デメリット

準大手会計事務所は、実務の幅広さや柔軟な働き方を重視する方には適した環境です。独立志向のある人にとっても実践的な経験を積みやすく、キャリアの基盤を築くには最適な環境です。詳しく解説します。

■ メリット
準大手会計事務所/税理士事務所は中小企業や個人事業主をクライアントとすることも多いため、独立開業を視野に入れる人にとって、将来的に役立つ実務経験が積める点も魅力です。大手税理士法人と比べ縦割り組織ではないケースもあり、社内異動をせずとも幅広い業務に関わることができます。
法人によってはワークライフバランスが整い、働きやすい環境が用意されています。若手が早期に重要案件に参加できる可能性もあり、成長意欲の高い人材にとっては魅力的な職場といえるでしょう。

■ デメリット
BIG4や大手税理士法人と比べると、年収水準は相対的に低くなる傾向にあります。また、業務範囲が広い反面、一つの分野を深掘りしづらい場合もあります。準大手会計事務所/税理士事務所の業務は幅広く携わることが求められるため、専門性を一点集中で高めたい方にとっては、やや物足りなさを感じることがあるかもしれません。
将来、大手企業向けの高度な国際税務に携わりたい場合や、特定分野のスペシャリストを目指す場合は、希望する働き方に対応した職場を見つけましょう。

準大手会計事務所(税理士法人)の平均年収

準大手会計事務所の年収水準は、業界の中では中堅レベルに位置します。厚生労働省の「令和5年賃金構造基本統計調査」によれば、従業員数100〜999人以上の規模の法人における公認会計・税理士の平均年収は718.6万円です。

なお、年収1,000万円以上を目指すには、税理士資格を保有し、一定以上の実務経験に加え、マネジメント能力や営業力も兼ね備えることが求められます。ポジションに応じた評価制度を導入している法人も多く、アソシエイトからマネージャーへのキャリアアップに応じて年収も大きく変動します。

引用:令和5年賃金構造基本統計調査 

大手・準大手税理士法人の求人動向

大手・準大手税理士法人では、求められるスキルや資格、実務経験の傾向に一定の違いがあります。
BIG4などのグローバルファームでは、専門分野ごとに明確な役割分担があり、採用基準も高い傾向にあります。一方、準大手や独立系大手法人では、柔軟な人材採用が行われているケースも見られます。
いずれにおいても、税理士科目合格や実務経験は重視される傾向にあり、最低限の専門性が求められるのが現状です。また、英語力についても、近年は業務の一部で使用するケースが増えており、高い英語力までは必要とされないものの、学習意欲があることが評価ポイントになる傾向が見られます。

BIG4税理士法人の求人動向

BIG4税理士法人では、税理士試験の科目合格が最低条件とされることが一般的です。もし、税理士資格を保有していない試験勉強中の受験生でも、複数科目に合格していればチャンスがあります。また、業務で英語を使う場面も多いため、TOEICスコアや実務経験があると有利に働きますが、現時点での語学力よりも、今後の学習意欲が評価されるケースも増えています。

その他大手・準大手税理士法人の求人動向

BIG4以外の大手・準大手税理士法人では、税務申告業務を基盤としながら、M&Aや事業承継なども一貫して対応することが一般的です。そのため、幅広い実務経験や対人対応力が重視される傾向があります。
採用条件においては、法人によって異なりますが、「税理士科目合格者」を優先する法人と、「実務経験者」を重視する法人に分かれています。

まとめ

会計事務所/税理士事務所には、「大手」「準大手」といった分類が存在します。法的定義や業界基準は設けられていませんが、おおまかに売上規模や従業員数などによって分類されています。BIG4のような国際的なグループに属する法人と、国内で独立して成長してきた大手・準大手法人では、業務の内容や求められるスキル、キャリアパスが異なります。
規模による会計事務所/税理士法人の特徴や年収水準、業務範囲、求人動向までを網羅的に解説しました。専門性を深めたい方、将来的に独立を視野に入れている方、安定した環境で長く働きたい方など、それぞれの志向に応じて働く環境を選ぶ必要があります。自身の強みと働き方の理想を照らし合わせ、最適なキャリアを築く第一歩として、ぜひ参考にしてください。

この記事の監修者

伊藤之誉

長野県長野市出身。慶応義塾大学商学部卒業。1998年に国内最大手の税理士事務所(現デロイト トーマツ税理士法人)に入社後、上場企業から中小企業まで多種多様なクライアントに対する申告書作成業務、税務調査立会など法人の税務全般業務に従事。連結納税や国際税務のコンサルティング、個人所得税の申告書作成、税務デューデリジェンス業務にも従事。執筆、外部研修講師なども経験。2011年に伊藤之誉税理士事務所を独立開業 。軽いフットワークを武器に難解な税法をわかりやすくお伝えし、経営者の皆様と共に成長し、喜びをわかちあえることを理想としています。

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