2024年1月から導入されたUSCPAの新試験とは?試験科目や制度の変更点を解説!

2024年2月6日(記事更新日:2024年2月6日)

2024年1月からUSCPA(米国公認会計士)の新試験制度がスタートしました。
この新試験は「CPA Evolutionモデル」と呼ばれており、時代の変化に伴い革新的な進化を果たしたものです。
本記事では、進化を遂げたUSCPA新試験について解説いたします。
これからUSCPA試験に挑戦する場合は、最新情報を確認しておきましょう。

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USCPA(米国公認会計士)とは

USCPA(米国公認会計士)とは、アメリカ国内で認められた公認会計士資格です。
日本の公認会計士とは異なる制度・資格であり、日本の公認会計士資格を取得してもUSCPAは取得できませんし、USCPAを取得しても日本の公認会計士にはなれません。
たとえば、外資系企業や海外進出を果たした日本企業の要望に対して、日本の公認会計士資格では対応しきれません。これは日本と諸外国では会計基準が異なるためです。
ところがUSCPAを取得しているならば米国会計基準をマスターしていることの証明になるため、少なくともアメリカを主体とする企業の財務や会計に携われます。
企業のグローバル化が進む中、公認会計士もグローバルな視点と知識が求められており、その証にもなるUSCPAは強力な資格と言えます。

米国各州が認定する公認会計士資格

USCPAはアメリカの各州が認定する公認会計士資格です。
アメリカの法律に基づく税務申告、国際会計業務、英文の財務諸表を用いる業務、経営コンサルティングが行えるようになります。
またUSCPAの合格は高い英語力を持つ証明にもなり、大手監査法人などでは優遇される傾向にあります。

USCPAを取得するには

受験条件は州ごとに設定されています。
中には米国在住でなければ受験できない州もありますので、日本在住で受験する場合は出願州の条件は必ず調べておいてください。
なお日本で受験する場合は、科目ごとに追加料金が加算されます。
ライセンス登録の要件も州により異なりますので、合格後にライセンスを取得する予定なら、登録要件をクリアできる州を探しておきましょう。

USCPAについて詳しくは以下記事をご参考ください。

USCPA(米国公認会計士)とは?資格内容・試験・魅力やキャリアを紹介! 

USCPAの新制度とは

2023年12月15日までが旧試験、2024年1月10日よりUSCPA新試験制度が開始されました。
変更点を理解し、合格のための学習体制を整えましょう。

概要

近年デジタル化が進む中で、これまでのUSCPAが行ってきた業務は、ITツールの発達により自動化が可能となりました。
その結果、新人USCPAであっても「自動化が不可能な業務」に遂行が求められるようになり、より深い思考力や問題解決能力、判断力が必要となったのです。
USCPA試験はこのような背景から、進化を遂げることとなりました。時代に即した試験制度へ変化し、USCPAの受験者は学習を通して社会のニーズに即した知識と能力を獲得できるようになったのです。

変更点詳細

1.科目の変更
旧試験:FAR/AUD/REG/BECの4科目合格
新試験:FAR/AUD/REG(必須科目)の3科目合格および、BAR/ISC/TCP(選択科目)のうち1科目合格

USCPA合格となる科目合格数は4科目で変更はありません。
ただし必須3科目(CORE)+選択科目1科目(Disciplines)と構成が変更されています。

CORE科目は、USCPAを取得する人に共通して求められるスキルです。
監査や財務会計といった、USCPAとして最低限身につけていなければならない知識が審査されます。

<CORE科目>
・FAR(財務会計)
・AUD(監査と証明)
・REG(諸法規)

Disciplines科目は、選択した1分野において、より深い知識やスキルを求められます。
必須科目であるCORE科目の内容を前提とした、より専門的な内容やIT関連の新論点部分が含まれるような内容となり、実務上必須となる知識が審査されます。

<Disciplines科目>
・BAR(ビジネス分析と報告)
・ISC(情報システムと統制)
・TCP(税法遵守と税務計画)

選択科目は受験者の意思で科目を選択できるため、実務に必要な専門や科目の難易度で選ぶことも可能です。
なお合格した選択科目で差別化されることはありません。
各科目の詳細は次項以降にて解説しています。

2.出題形式や受験形式の変更
・リサーチ問題の廃止:総合問題の一部で出題されることになりました。
・記述問題の廃止:すべて四択問題または総合問題での出題となります。
・難易度の変更の廃止:「難易度の変更」とは、最初のテストレットの成績が良い場合に、2つ目のテストレットでより高い難易度の問題が出題されるプログラムのことです。
・計算ツールの変更:Excelの利用が廃止され、JavaScriptベースのスプレッドシートに変更となりました。

3.科目合格実績期間の延長
新試験制度への移行期における特別措置として、アラスカ州などの一部州で出願した受験者の科目合格の失効までの期間が、18ヶ月から30ヶ月に延長されました。

4.スコアリリース(結果発表)の延期
2024年のスコアリリーススケジュールは新試験への移行に伴う変則的なものであり、今までよりスコアの公表まで時間がかかります。

CORE受験期間COREスコアリリースDisciplines受験期間Disciplinesスコアリリース
Q12024/1/10~2024/3/262024/5/14〜2024/6/42024/1/10~2024/2/62024/3/26〜2024/4/16
Q22024/4/1~2024/6/252024/8/12024/4/20~2024/5/192024/6/20
Q32024/7/1~2024/9/252024/11/12024/7/1~2024/7/302024/9/3
Q42024/10/1~2024/12/262025/2月初旬2024/10/1~2024/10/312024/12/3

2023年のスコアリリーススケジュールとは大きく異なりますのでご注意ください。

USCPA新制度の出題形式について

新試験制度をより詳しく解説いたします。
出典:AICPA & CIMA 

試験時間と合格点

試験時間:1科目につき4時間
合格点:99点満点中75点以上

出題形式

科目はそれぞれ四択問題と総合問題の2種類からなります。
Multiple Choice(MC)は、4つの選択肢から正しい選択肢を選ぶ問題です。問題数は科目により異なります。
Task-Based Simulation(TBS)は、シミュレーション形式(事例形式)の総合問題です。各問題の設問について正しい選択肢を選んだり、値を入力したりします。問題数は少ないものの、問題文が難解なこともあり回答まで時間を要します。

科目

CORE科目

科目四択問題(MC)総合問題(TBS)
FAR
財務会計
50問
スコア50%
7問
スコア50%
AUD
監査と証明
78問
スコア50%
7問
スコア50%
REG
諸法規
72問
スコア50%
8問
スコア50%

▼Disciplines科目

科目四択問題(MC)総合問題(TBS)
BAR
ビジネス分析と報告
50問
スコア50%
7問
スコア50%
ISC
情報システムと統制
82問
スコア60%
6問
スコア40%
TCP
税法遵守と税務計画
68問
スコア50%
7問
スコア50%

スキルレベル
各科目は下記4つのスキルレベルで構成されています。
上からスキルレベルの高い順になっており、「記憶と理解」が最も低く「評価」が最も高いレベルです。

Evaluation(評価)問題を検討または評価し、判断して結論を出すこと。
Analysis(分析)原因を特定し、推論を裏付ける証拠を見つけるために、別々の分野の相互関係を調査、研究すること。
Application(応用)知識・概念・技術を使用あるいは実証すること。
Remembering and Understanding(記憶と理解)ある分野の重要性を認識し、理解すること。

各科目におけるスキルレベルの配分は以下のとおりです。

科目記憶と理解応用分析評価
FAR5〜15%45〜55%35〜45%
AUD30〜40%30〜40%15〜25%5〜15%
REG25〜35%35〜45%25〜35%
BAR10〜20%45〜55%30〜40%
ISC55〜65%20〜30%10〜20%
TCP5〜15%55〜65%25〜35%

AUDのみ最高レベルのスキルである「評価」があることから、求められるレベルが最も高いことが分かります。
一方でISCにおける「記憶と理解」が最も多いことから、比較的スキルレベルは高くないものと見られます。

USCPA新制度の出題範囲について

科目ごとにどのような内容が出題されるのか解説します。

CORE科目

・FAR:財務会計
米国の公的機関に対する報告の準拠を確保するための財務諸表、口座残高や取引の作成/レビューに関する知識とスキルについて問われます。
旧試験におけるFARの内容の一部が選択科目のBARに移行され、旧試験BECの一部が追加されました。

<出題分野と得点割合>
財務報告:30〜40%
貸借対照表感情科目の選択:30〜40%
トランザクションの選択:25〜35%

・AUD:監査と証明
財務諸表監査、コンプライアンス監査などに関する知識とスキルについて問われます。
旧試験におけるBECの内容の一部が追加されていますが、それほど大きな違いはありません。

<出題分野と得点割合>
倫理・職責・一般原則:15〜25%
リスクの評価と計画的な対応の策定:25〜35%
更なる手続きの実施と証拠の入手:30〜40%
結論の形成と報告:10〜20%

・REG:諸法規
税法実務、米国商法、米国連邦税コンプライアンスに関する知識とスキルについて問われます。
旧試験におけるREGの一部は選択科目のTCPに移行されました。

<出題分野と得点割合>
論理、職業上の責任、連邦政府の税務手続き:10〜20%
事業法:15〜25%
不動産取引に対する連邦課税:5〜15%
個人に対する連邦課税:22〜32%
事業体の連邦課税(納税準備を含む):23〜33%

Disciplines科目

・BAR:ビジネス分析と報告
財務諸表/財務分析、会計基準に沿った報告についてなどの知識とスキルについて問われます。
旧試験におけるBECの一部も追加されました。

<出題分野と得点割合>
ビジネス分析:40〜50%
技術的な会計と報告:35〜45%
州及び地方自治体:10〜20%

・ISC:情報システムと統制
情報システムと情報管理の機密性、可用性、セキュリティなどの知識とスキルについて問われます。
出題範囲の50%程度が旧試験にはなかった範囲です。
旧試験のBECの一部が追加されています。

<出題分野と得点割合>
情報システムとデータ管理:35〜45%
セキュリティ、機密保持、プライバシー:35〜45%
体制・組織の留意点・コントロール(SOC)の取り組み:15〜25%

・TCP:税法遵守と税務計画
米国連邦税コンプライアンス、米国連邦税計画、財務計画などの知識とスキルについて問われます。
旧試験REGは、新試験でREGとTCPに分けられました。TCPでは、より専門的な税法の知識が試されます。

<出題分野と得点割合>
個人及び個人向けの税務コンプライアンスと計画・財務計画:30〜40%
法人税のコンプライアンス:30〜40%
事業体の税務計画:10〜20%
不動産取引(資産の処分):10〜20%

移行期の対応と経過措置について

新試験移行に伴い、科目合格の引継ぎに特別措置が実施されることとなりました。

合格科目の移行

旧試験のAUD/FAR/REGの合格者は、新制度でも同じ科目を合格したものとみなされます。BEC合格者のみ、新試験の選択科目の中から1つを選び、科目合格したものとされます。
たとえば旧試験でAUDに合格した場合は新試験でAUDの合格を、旧試験でBECに合格していれば、新試験のBAR/ISC/TCPから1つを選択して合格を引き継げます。

合格科目の有効期限

科目合格の有効期限は受験日から18カ月間ですが、新試験移行に伴う特別措置として、ワシントン州、グアム、ニューヨーク州、モンタナ州、アラスカ州を含む39の州では2024年1月1日時点で有効な科目合格の合格実績は、一律2025年6月30日まで延長されることとなりました。
延長された期間で新試験合格に向け学習を進めましょう。

まとめ

USCPA試験は進化を遂げ、時代の流れに即した新しい試験制度へと生まれ変わりました。
試験の難易度が劇的に高くなったわけではありませんが、より思考力に着目した試験へと変化しています。そのため新試験に対応した学習方法に切り替える必要はあるでしょう。
USCPA試験は日本の公認会計士試験よりも難しくないと言われていますが、難関資格には違いありません。これからUSCPA試験に臨む人は、しっかりと対策を練り確実に合格を確実なものにしましょう。

この記事の監修者

伊藤之誉

長野県長野市出身。慶応義塾大学商学部卒業。1998年に国内最大手の税理士事務所(現デロイト トーマツ税理士法人)に入社後、上場企業から中小企業まで多種多様なクライアントに対する申告書作成業務、税務調査立会など法人の税務全般業務に従事。連結納税や国際税務のコンサルティング、個人所得税の申告書作成、税務デューデリジェンス業務にも従事。執筆、外部研修講師なども経験。2011年に伊藤之誉税理士事務所を独立開業 。軽いフットワークを武器に難解な税法をわかりやすくお伝えし、経営者の皆様と共に成長し、喜びをわかちあえることを理想としています。

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