USCPA(米国公認会計士)とは?資格内容・試験・魅力やキャリアを紹介!

2023年12月26日(記事更新日:2024年3月14日)

USCPA(米国公認会計士)は正式名称をUnited States Certified Public Accountantと言い、米国における公認会計士を指します。
USCPA資格保有者は国際会計基準の知識や語学力を身につけているとして、日本国内でも徐々に注目を集めている資格です。
そこで本記事では、USCPAの業務内容や試験の概要、取得の魅力等についてまとめました。
USCPAを具体的に知りたい人は、ぜひ本記事を参考にしてください。
なお2024年1月に試験の変更が予定されています。本記事は2023年度中の内容ですので、お間違えのないようにご注意ください。

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USCPA(米国公認会計士)とは?

USCPA米国公認会計士とは、米国における公認会計士です。
その名のとおり米国で通用するライセンスですが、国際的な取引が恒常的に行われる昨今では米国内だけでなく世界中から注目されています。
日本国内でも需要は高く、就職や転職、昇給等に有利になると言われており、キャリアアップを目指す多くの人が挑戦しています。なお日本国内でも受験可能です。

米国各州が認定する公認会計士資格

USCPAは、米国各州会計士委員会が認定します。そのため州ごとに受験資格やライセンスが異なります。
USCPAとして働けるのは、ライセンスを取得した米国州とMRA(国際相互承認協定)参加国です。

<2023年11月現在におけるMRA参加国>
・南アフリカ
・オーストラリア
・ニュージーランド
・カナダ
・アイルランド
・メキシコ
・スコットランド

参照:NASBA 相互承認協定 

上記のとおり日本はMRAに参加していないため、USCPAの資格を取得しても日本国内では公認会計士と名乗れません。公認会計士試験を別途受験する必要がありますのでご注意ください。

USCPAの業務内容

USCPAは日本の公認会計士とは若干異なる業務を行います。
具体的には高い英語力と米国会計の知識を駆使して、国際的な業務を担うことになります。

■米国法律に基づく税務申告
USCPAの最も主となる業務です。
日本とアメリカでは税務申告の時期や内容が大きく異なり、日本の税法知識だけでは対応できないため、国際会計を身につけたUSCPAが対応することになります。
グローバル展開する法人や海外投資を行う個人等の税務申告業務等がこれにあたります。

■国際会計業務
日本会計基準と米国会計基準、国際会計基準の違いを理解している人材として、USCPAが業務にあたります。
外資系企業や海外進出を果たした日本企業は、日本会計基準ではなく米国会計基準や国際会計基準を採用しています。そこで外資系企業の経理職として働くUSCPAも少なくありません。
たとえば「のれん償却」は、日本会計基準では可能ですが、米国会計基準や国際会計基準では不可とされています。このような違いを学習しているUSCPAは、グローバル企業にとって必要不可欠な人材なのです。

■英文の財務諸表を用いる業務
米国会計基準または国際会計基準に従い、英文の財務諸表の作成や作成された財務諸表の監査業務等を行います。
日本の多くの企業では日本会計基準が採用されていますが、米国会計基準や国際会計基準に則り財務諸表を作成することも認められています。
従って日本国内においても米国会計基準で財務諸表を作成したり、その監査を依頼されたりするのです。
ただし日本において監査業務は公認会計士の独占業務ですので、監査報告書への署名はできません。

■経営コンサルティング
主にM&Aや海外進出サポート、海外子会社の不正調査、事業再生等を行います。
現地での調査や経営アドバイスを実施することになるため、海外出張や現地法人とのコミュニケーションが必須です。
ただし資料作成や調査等の一部業務に関しては海外出張せずに行える範囲もありますので、業務内容を限定すれば日本国内で働くことも可能です。

日本の公認会計士との違い

USCPAは日本の公認会計士とは異なります。ここでは業務範囲と受験資格などの違いを見てみましょう。

■業務範囲
USCPAの資格では日本国内において監査(補佐)業務に従事することはできますが、監査調書に署名はできません。これはUSCPAが日本国内における公認会計士とは認められないためです。
しかし資格試験の学習に伴い身につけた英語力や米国会計の知識は十分に活かせるため、米国会計の知識を必要とするグローバル企業の経理職やコンサルタント業務、監査法人のパートナーとして国際系業務に携わることができるでしょう。

■受験制限・資格
日本の公認会計士試験に受験資格はありません。年齢や性別、国籍等を問わず誰でも受験できます。
一方でUSCPAは、各州が定めた受験資格を満たす必要があります。
比較的受験資格が易しいのはアラスカ州で、「4年制大学の学位(学士)」「会計15単位」で受験可能です。
アラスカ州を含め日本の大学の学位を受験資格として認めている州は多いので、受験資格が不足している場合はひとまず国内の大学卒業を目指しましょう。

出典:NASBA CPA試験アラスカ 

USCPA資格保有者の主な活躍場所

USCPA保有者は、国内外を問わず様々な職場で活躍しています。

■外資系企業の経理
日本に拠点を置く外資系企業で経理職として働きます。
外資系企業等で働く場合、日本の会計知識だけでは務まりません。母国の会計についても実務レベルで知っておく必要があります。そのため国際会計基準を身につけたUSCPA保有者が選ばれるのです。
外資系企業では、英語を社内公用語に採用していることも多いため、試験勉強中に身につけた英語力を生かせるという点でも最適な職場と言えるでしょう。

■海外部門/海外子会社のある会社
海外部門や子会社を有する日本企業で国際会計を担当します。
日本国内だけでなく、場合によっては海外赴任となることもあるでしょう。
公認会計士資格を取得しておくと、国内外で活躍できる人材として重宝されます。

■会計事務所
米国会計の知識と語学力を生かして国際税務に携わります。
税務業務だけでなくコンサルティングや税務アドバイスができるとより活躍の場も広がり、税理士資格や公認会計士資格を取得しておくとより高く評価されるでしょう。
一般的に、中小会計事務所よりも大手会計事務所での求人が多い傾向があります。

■監査法人
海外部門等を持つ企業の監査補助や海外進出のサポート等を行います。
通常の会計処理よりも高度な業務を求められることから、キャリアアップを目指したい人に選ばれている職場です。

■コンサルティング会社
日本に進出する外資系企業や海外子会社等に対して、税務・会計コンサルティングを提供します。
難易度の高い業務になりますが、スケールが大きくやりがいのある仕事に取り組めます。

USCPAの平均年収

USCPAの年収は就職先によって変動します。
外資系企業や日本の海外子会社の場合、初任給は400万円程度で、管理職クラスに昇進すると800〜1,000万円程度を得られる可能性もあります。
監査法人の場合は初任給500万円程度からスタートして、マネージャークラスに昇進すれば1,200万円程度が見込まれます。
コンサルティング会社の場合、初任給は500万円程度、順調に昇進すれば800万円以上になるケースもあります。
また企業規模の大小によって、初任給や昇進後の年収目安の違いも出てきます。

USCPAの将来性

現在の日本では公認会計士として働けませんが、それでもUSCPAは非常に将来性のある資格です。
公認会計士とは名乗れないものの監査書類への署名以外の業務は可能であり、会計知識と英語力のスキルが客観的に証明できるので、監査法人や外資系企業等で高く評価されます。
また日本においてUSCPA資格取得者はそれほど多くはありません。つまり希少な人材だということです。合格すれば連結決算や国際会計等の高度な案件に携わる機会も増え、より重宝されることでしょう。
AIにより仕事が無くなると危惧される声もありますが、AIが得意とする業務は計算や分析等であり、経営コンサルティングのようなハイレベルな業務は任せられません。USCPAは今後ますます需要が高まる資格なのです。

USCPAの資格を取得するメリット

USCPAの資格取得には膨大な学習時間と少なくない受験料が必要になります。
それでも取得する人が後を絶たないのは、魅力的なメリットを享受できるためです。

専門性が高くキャリアアップに役立つ

USCPA合格者は国際会計を身につけたハイレベルな人材であると評価されます。
そのため国際的な高度な案件も担当できるようになりますし、キャリアアップや転職にも有利に働きます。
また試験内容にはITの基礎知識も含まれるため、IT系の知識も身につきます。
複合的なスキルを持つ人材はどのような職場でも求められるものです。USCPA試験を通じて国際会計・英語力・ITといった様々なスキルを身につけ、人材としての価値を高めましょう。

グローバルに活躍できる

USCPAは日本国内の公認会計士とは認められないものの、アメリカを含む一部の国では公認会計士として認められ、その国での会計・監査業務に携われます。
英語力の証明にもなりますので、ビジネスの場でも自信を持って業務遂行ができるでしょう。
世界を股にかけてグローバルに活躍したい人は、ぜひUSCPAに挑戦してください。

英語の能力が証明できる

USCPAの合格により、ビジネスで通用する英語力が証明できます。
USCPAの試験は全て英語で実施されます。リーディングの選択式問題が中心ですがライティングの問題も出題されるため「読み書き」の両方が必要です。
当然ですが一般的な英単語だけでなく専門的な会計用語や法律用語等も出題分に含まれます。
つまりUSCPAに合格したならば、合格できるだけの英語力を有している証明としても使えるのです。

USCPAの資格取得までの流れ

本文USCPAの資格取得には「出願する州の決定」「出願」「受験」「合格後にライセンス申請」を行う必要があります。テキストが入ります

1.出願する州を決め学歴評価を受ける
USCPA試験の申込窓口は「全米50州と準州」に分かれており、州ごとに受験資格とライセンス申請資格が異なります。
出願する州が異なっても試験自体は同じですので、学歴や経験、実務経験等に応じて最も有利になる州を選択してください。
例えば、受験資格の学歴要件が比較的易しいのはアラスカ州ですが、日本在住の日本人でもライセンス申請しやすいのはワシントン州やグアムなど、州ごとの特徴もあります。

出願する州を決めたら、卒業した大学や短大から英文の成績証明書と卒業証明書を取り寄せ、学歴審査機関へ送付します。
1ヶ月半〜3ヶ月程度で審査結果が出て、出願州の事務局に直送されます。
学歴検査の結果、単位が足りなければ追加で単位を取得します。USCPA専門のスクールで単位を取得する人が多いようです。

2.出願
提出書類が出願州に届き、審査完了の連絡が届いたら出願します。
申請書と成績証明書等の必要書類を送付し、出願手数料を払いましょう。
なお出願時には受験する科目を選択します。
4科目全てを出願・受験することも可能ですが、試験期間に有効期限が定められていることと初回の受験票送付まで最大8週間程度かかることから、多くの受験生は初回の受験では1〜2科目のみ受験しているようです。

3.受験
受験票がメールで届いたら、有効期間内にテストセンターを予約します。
一部の州では追加料金を支払うと東京・大阪のテストセンターでも受験できるようになります。
テストセンターは土日も含めて毎日受験可能です。ただし休日はすぐに埋まってしまうので、早めに予約しましょう。
試験当日にはNotice to Schedule (NTS)と呼ばれる受験票と身分証明書を持参します。
試験は各科目4時間ずつで、全てパソコン上で実施されます。
不合格であっても再受験料を支払えば、すぐに再受験を申し込めますのでご安心ください。

4.ライセンス申請/取得
USCPAとして仕事をするには、USCPAの試験合格後にライセンス申請を行う必要があります。
実務経験等の申請要件が必要となることもありますので、ライセンス取得は全科目合格から3年以内を目安に行いましょう。
ライセンス申請が比較的容易なグアムを例に、以下に必要な条件を記載しております。。

<グアムでのライセンス申請条件>
1)USCPA全科目合格(どの州で出願していてもOK)
2)実務経験が1年(2000時間)以上(パートでもOK)
3)大学の学位+総合単位120単位+会計学24単位+ビジネス関連科目24単位(原則として出願時に満たしている必要がある)

米国居住要件や州内での実務経験要件なしで申請できることから、日本在住の受験者や自分の職種では監査経験を必要としていない場合にはグアム等での申請も適しています。
ただしUSCPAのライセンスを取得しても日本国内で公認会計士としては働けません。またライセンスが必要となる国内での業務は少ないため、合格してもライセンスを取得しないという人もいるようです。

USCPA試験について

USCPA試験の具体的な内容について説明いたします。
日本の公認会計士試験よりも難易度は低いと言われていますが、全文英語であることを踏まえると難関資格に分類できるでしょう。

なお、USCPAは2024年1月に試験制度の変更が予定されています。試験科目の構成が変更になる予定ですので、受験する際はご注意ください。

試験内容

USCPA試験は全米統一試験で、どの州に出願しても同じ内容を受験することになります。
試験は4つの科目から構成され、全科目合格でUSCPA試験合格です。
出願州によっては18週間の科目合格制が認められており、1科目ごとの受験も可能です。
各科目の試験時間は4時間ずつ合計16時間で、99点満点中75点以上が合格点となります。
試験はすべて英語で、日本語での受験はできません。また出題内容にはITの基礎知識も含まれます。

各科目の特徴

USCPA試験は監査と証明(AUD)、ビジネス環境と概念(BEC)、財務会計と報告(FAR)、規制(REG)という4つの科目で構成されています。
1つずつ特徴や出題範囲等を見てみましょう。
合格率は米国公認会計士協会(AICPA)を参照しています。

なお、以下は2023年12月までの試験内容を記載しております。
前述した通りUSCPA試験は2024年1月に試験内容が変更になる予定です。

1.監査と証明(AUD)
特徴:膨大な知識と深い理解が求められます。奇問は出題されませんが曖昧な選択肢が多いため、英語での読解力が試される科目でもあります。
出題範囲:監査や職業倫理等
2023年度の合格率:47.68%

2.ビジネス環境と概念(BEC)
特徴: 会計のみならずIT関連の基礎知識も問われる科目です。記述式の問題も出題されますが、それほど複雑ではありません。
出題範囲:コーポレートガバナンスや経済学概論、IT概論、管理会計等
2023年度の合格率:58.25%

3.財務会計(FAR)
特徴:会計の知識が問われます。簿記1級や税理士等の資格を取得していると、比較的合格しやすい科目です。
出題範囲:企業会計・政府と非営利組織会計等
2023年度の合格率:42.30%

4.諸法規(REG)
特徴:最も出題範囲が広く学習時間を要する科目です。時間をかけて理解を深めましょう。
出題範囲:連邦税法やビジネス法、職業倫理等
2023年度の合格率:59.22%

■USCPA新試験の概要
受験科目数は従来のまま4科目ですが、必須科目3科目+選択科目4科目に変わります。

✓ 必須科目
AUD(監査と証明)
FAR(財務会計)
REG(諸法規)

✓ 選択科目
以下より1科目選択

BAR(ビジネス分析と報告)
ISC(情報システムと統制)
TCP(税法遵守と税務計画)

✓ 現行試験で科目合格している場合
現行試験でAUD・FAR・REGに合格している場合、その合格は新試験に引き継げます。
BECに合格している場合は、選択科目の受験が不要になります。
どちらにしても、合格実績が失効した後は新試験の受け直しが必要です。

USCPAの資格取得が向いている人

USCPAは国際的な公認会計士資格です。
そのためグローバルな仕事や専門性の高い業務に就きたい人に向いています。

グローバルなキャリアを描きたい人

日本の公認会計士は日本国内のみで通用する資格です。
そのため仕事内容は日本国内での税務業務や監査業務に限定されます。
その点USCPAは国際的な資格ですので、グローバル企業や外資系企業等で重宝されます。
他国に進出する企業は大企業が多いので、必然的に業務範囲も大きなものとなり、グローバルでスケールの大きな仕事に携われることになります。

英語力を生かした仕事をしたい人

USCPAは試験内容が全て英語ですので、高度な英語力が試されます。そのためUSCPA合格は、ビジネスシーンで通用するハイレベルな英語力の裏付けにもなるのです。
国際会計や連結決算等といった実務の際に英語力は必須ですから、国内外でビジネスを行う大企業を中心に高い評価が得られます。

国内公認会計士と差別化を図り、専門性を上げたい人

USCPAは公認会計士にはない「国際会計の知識」と「高度な英語力」を備えています。
専門性を上げて国内の公認会計士との差別化を図りながら、グローバル化が進む現代において国内外問わず活躍を目指す人にも有利な資格と言えるでしょう。

USCPAで国際会計基準を身につけ、世界中で通用する人材になりましょう。
現に公認会計士や経理職として働きながらUSCPAを取得する人は少なくありません。

まとめ

グローバル化が急速に進む現代において、米国会計基準や国際会計基準に強いUSCPAはなくてはならない存在です。
受験条件を含めて試験突破は簡単ではありませんが、合格すれば国際間取引を含めたハイレベルな業務が遂行できる人材として重宝されます。
キャリアパスを増やして活躍の場を広げたいと考えた際に、USCPAの資格取得も手段の一つとして検討してみるのはいかがでしょうか。

この記事の監修者

伊藤之誉

長野県長野市出身。慶応義塾大学商学部卒業。1998年に国内最大手の税理士事務所(現デロイト トーマツ税理士法人)に入社後、上場企業から中小企業まで多種多様なクライアントに対する申告書作成業務、税務調査立会など法人の税務全般業務に従事。連結納税や国際税務のコンサルティング、個人所得税の申告書作成、税務デューデリジェンス業務にも従事。執筆、外部研修講師なども経験。2011年に伊藤之誉税理士事務所を独立開業 。軽いフットワークを武器に難解な税法をわかりやすくお伝えし、経営者の皆様と共に成長し、喜びをわかちあえることを理想としています。

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