公認会計士とは?仕事内容や魅力を解説!

2023年11月29日(記事更新日:2023年12月19日)

 

公認会計士は社会的需要や信用度が非常に高く、会計や税務に関する専門的な知識と技能・国家資格を要する職業です。しかし公認会計士の具体的な業務内容や資格取得方法などについては詳細が掴みにくいものですよね。難関資格が必要な公認会計士を目指す場合、将来を具体的にイメージすることで試験を乗り越えるモチベーションにもつながります。
そこで今回は、公認会計士の仕事内容や魅力等について解説いたします。
公認会計士に少しでも興味のある人は、本記事で詳細をご確認ください。

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公認会計士とは

公認会計士は、監査を独占業務とする会計・経理系の上位職種です。
はじめに公認会計士の概要や平均年収、税理士や米国公認会計士との違い等を把握しましょう。

会計と監査を行う専門職

公認会計士とは、監査や会計の専門知識を活かして企業の監査を行い、第三者の立場から意見表明することで情報の信頼性を確保する職業です。
仕事内容は大きく「監査」「税務」「コンサルティング」の3つで、主な顧客は国内外の大企業です。
大企業の財務に興味がある人や、グローバルに活躍したい人におすすめです。

国家資格が必要

公認会計士は国家資格であり、公認会計士試験の合格とその後の修了考査に合格しなければなりません。
公認会計士試験の合格率は10%前後で推移しており、令和4年度の合格率は7.7%。
医師や弁護士に並ぶ最難関資格と言われています。
ただし受験資格の指定がないため、社会人でも合格は可能です。実際に令和4年度中の合格者のうち、6.5%が会社員でした。

会計監査により企業の財務情報の正当性を担保し、経済活動を保護

公認会計士は企業が作成した財務諸表等をチェックして、信頼性に足る資料かどうかを推し量ります。
仮に企業が発表した資料に嘘偽りがあった場合、投資している株主や世間一般へのダメージは計り知れません。
そこで公認会計士が中立の立場から監査を行い、信頼できる資料かを判断するのです。
公認会計士が監査していることで企業は資料が正確であると公表でき、株主等は安心して資料内容を信用できるのです。

公認会計士試験に合格すると税理士試験受験が免除される

公認会計士試験合格者は、税理士試験が免除されます。つまり試験を受験せずに税理士にもなれるのです。
ただし税理士法第3条によると、公認会計士試験合格者が税理士として登録するには「公認会計士法第16条第1項に規定する実務補習団体等が実施する研修のうち財務省令で定める税法に関する研修」を受ける必要があります。
公認会計士試験に合格しても、上記の研修で一定の能力を身につけるまでは税理士として登録できませんのでご注意ください。

出典:e-GOV法令検索 

公認会計士の平均年収

厚生労働省の「令和4年度賃金構造統計調査」によると、公認会計士と税理士の平均年収(きまって支給する現金給与額×12カ月+年間賞与その他特別支給額)は、約747万円でした。
上記は税理士と混同されていますが、両者にあまり違いはないと言われています。
なお令和4年の一般労働者の平均賃金は約311万円ですので、2倍以上の高収入を得られることが示唆されています。
取得しても収入につながらない資格が数多存在する中で、資格取得による高収入獲得が明確な職業と言えるでしょう。

出典:令和4年度賃金構造統計調査 

税理士との違い

税理士との主な違いは、主要業務と顧客層です。

公認会計士の主要業務は独占業務の「監査業務」です。
監査が義務付けられているのは大企業が中心ですので、自ずと顧客の多くが大企業になります。
また、企業の財務状況の信頼性担保による経済社会活動の維持や発展といった社会的役割があります。

一方税理士として働く場合、主要業務は独占業務である「税務」になります。具体的は決算書や確定申告書などの税務書類作成です。
企業規模にかかわらず税務書類は作成する必要がありますが、大企業は企業内税理士を抱えていることもあるため、顧客は中小企業や個人事業主中心になることもあります。
税理士の社会的役割は課税制度の公平性担保などといった違いが挙げられます。

公認会計士と米国公認会計士(USCPA)の違い

米国公認会計士とは、米国の各州が認定する公認会計士資格です。
米国で通用する資格ではあるものの日本国内でも高く評価され、監査法人就職への道も拓けます。
公認会計士との大きな違いは、資格取得のハードルの高さでしょう。
米国公認会計士試験の合格率は50%前後で、日本人に限定すると科目合格率は32%前後でした。日本の公認会計士試験の合格率が7.7%ですから、合格率だけで比較すると米国公認会計士の方が有利です。
またグローバルに展開する大手監査法人では、米国公認会計士が非常に高く評価されます。
将来グローバルに活躍したいとお考えでしたら、米国公認会計士を目指しましょう。
その一方で、日本国内限定で監査業務に就くのなら公認会計士が有利です。
公認会計士は日本の法律に準拠していますので「公認会計士資格を取得している=日本国内における監査と会計のエキスパート」と認識されます。
他方、米国公認会計士はアメリカ国内の法律に準拠していますので、日本国内の監査・会計業務を行うには知識不足が懸念されるのです。

米国公認会計士がおすすめ:グローバルに活躍したい人やできるだけ早く公認会計士になりたい人
公認会計士がおすすめ:基礎知識をしっかり身につけて日本国内で監査業務に携わりたい人

公認会計士の業務内容

公認会計士は独占業務である会計監査業務が中心になりますが、それ以外の業務も発生します。
それぞれの業務内容を確認しましょう。

独占業務

企業の財務諸表の内容を確認し、信頼性を保証する業務です。
法律により定められており対象が財務諸表のため、法定監査もしくは会計監査と呼ばれています。
大企業は会社法、上場企業等では金融商品取引法、その他公益性の高い事業や信金等はそれぞれの関連法令に基づいて、法定監査が実施されます。

具体的な流れは以下のとおりです。
 1.監査契約前の事前調査
 2.監査契約の締結
 3.監査実施
 4.監査結果報告

独占業務以外の業務

任意監査
法定監査以外の会社等の財務諸表の監査業務です。
上場のための準備や営業譲渡、金融機関から評価向上といった理由で実施されます。
法定監査との大きな違いは法に基づく監査かどうかであり、監査内容に大きな違いはありません。
あくまでも任意ですので必須ではありませんが、任意監査を実施する企業は多いものです。自社の会計情報や経営状況が信頼できるものだと証明し、投資家や取引先等に安心感を与える理由で行われます。
なお海外子会社の監査や海外企業の日本支店の監査も行います。

内部監査
内部監査とは、企業内部に監査人を立てて監査を行う業務です。
監査人に選ばれるのは外部機関である監査法人ではなく、企業の従業員です。そのため内部監査では企業内会計士が活躍することになります。
なお会社法により大会社は内部監査が必須とされていますが、それ以外の企業では任意です。
内部監査は「部門監査」「テーマ別監査」「経営監査」の3つに分類されます。

部門監査:マニュアルや規定が正しく整備され活用されているかを確認・評価する
テーマ別監査:監査のテーマを設定し、確認・評価する
経営監査:内部統制やリスクマネジメント等の状況を確認・評価する

税務書類の作成
税理士登録を行うことで可能になる業務です。
企業の財務諸表等の作成や申請、税務当局からの調査対応や不服申し立て等の業務です。
税務書類の作成は税理士の独占業務ですので、税理士登録を行っていない公認会計士は実施できません。

税務相談/コンサルティング業務
税理士登録を行うことで可能になる業務です。
税務や会計の専門知識を生かして、税務相談や経営コンサルティングを行います。財務諸表等を読み込み、節税対策や業務改善等を提案することが中心になるでしょう。
一般的な経営コンサルティングに税理士資格は不要ですが、税務相談には必須です。
多くのケースでは税務書類等から改善案を提案する流れになりますので、税理士登録をしておきましょう。

公認会計士の魅力

社会的地位が高く、専門性を生かして安定した高収入が得られる上に、複数の働き方を選択できるため、ライフスタイルの変化にも柔軟に対応できます。在宅ワークや短時間労働等も実現可能。ワークライフバランスを考える上でも非常に有用です。

収入が高い

厚生労働省の「令和4年度賃金構造統計調査」によると、公認会計士の平均賃金は、一般労働者の約2倍で約747万円でした。
BIG4と呼ばれる4大監査法人で公認会計士として活躍した場合は年収1,000万円も夢ではありません。
会計・経理系職種で高収入を目指すなら、公認会計士が最適です。

出典:令和4年度賃金構造統計調査 

働き方が選択できる

公認会計士試験合格後は、ほとんどの人が監査法人に就職します。
そこから監査法人でキャリアを積む・一般企業に転職する・独立開業するといった多様な働き方が広がっています。
最近では在宅勤務も可能な監査法人が増えてきました。リモートワークに対応していることもあります。
なお正社員で働くのが難しくなったとしても、非常勤やパートで働くことも可能です。パートでも時給3,000円以上の高収入が得られます。

経営に関わる仕事ができる

監査を行いフィードバックすることが主たる業務になりますので、自然に経営に関わることになります。
多くの税務書類や資料を読み込むことで、現在の経営状況だけでなく、将来の経営予測も立てられます。
公認会計士からの助言で、クライアント企業の業績が持ち直すこともあるかもしれません。
大企業の行く末を見守れる、やりがいのある仕事なのです。

将来性・安定性が高い

公認会計士の独占業務は金融市場がある限りなくなることはありません。
AIに業務の一部が代替されるという不安の声もありますが、現実的に公認会計士の業務全てがAIに奪われる可能性は極めて低いでしょう。
なぜなら現在AIができる仕事はデータの加工や自動化が中心であり、そのデータから改善策を提案したり、粉飾決算を暴いたりすることは難しいためです。
なお公認会計士の需要は衰えることを知らず、2023年現在も売り手市場が続いています。

公認会計士に向いている人

公認会計士は専門職ですので、向き不向きがあります。
あなたが公認会計士に向いているのか、本項でチェックしてみましょう。

勉強を継続できる人

公認会計士になるには公認会計士試験に合格する必要があります。
この公認会計士試験合格に必要な学習時間は3,000時間程度を言われています。
仮に社会人が1日3時間学習した場合、約3年かかる見込みです。
独学で挑むのは難しいため、専門学校や大学等に入学して学習を積み重ねることになるでしょう。
なお米国公認会計士の方がやや難易度は低く、学習時間は1,500時間程度と言われています。ただし試験問題は全文英語ですので、英語の学習も含めると公認会計士と同程度の学習時間を要する可能性も考えられます。

責任感や正義感の強い人

時にはクライアント企業にとってキツイことも伝えなければなりません。
たとえば監査の結果、不正の疑いがもたれた場合、クライアントだからと忖度しては監査の意味がなくなります。
そのため公認会計士には責任感や正義感も問われるのです。

細かい数字を見ることが得意な人

最初に取り組む業務は財務諸表等の数値を1つずつチェックすることですから、細かい数字を見続けられる人におすすめです。
さらに各数値の背景にある取引情報を確認し、会計処理が適切かどうかを1つずつ判断します。
資料の数字を読んで合理的に分析し、論理的に対応できる能力が必要です。

経営や会計・財務に興味がある人

財務諸表が読めれば、その企業の経営状況が分かります。
また与信管理や経営成績の予測も立てられるようになり、経営についての知識が身につきます。
今後経営コンサルティングを行ったり、独立したりする際にも非常に役立つ知識です。

コミュニケーション能力が高い人

監査業務は財務諸表のチェックだけではなく、不明瞭な部分についてクライアントの担当者に確認し、該当の資料や回答を用意してもらうことになります。
クライアントの担当者は通常業務と同時並行で監査対応をすることが多く、多忙な中で時間を割いてもらわなければなりません。
円滑に資料や回答を提供してもらうために、高いコミュニケーション能力が求められます。

公認会計士の働き方

公認会計士は主に下記5種類の職場で活躍しています。
職場によって業務内容が異なりますので、どのように働きたいか想像しながら読み進めてください。

監査法人

公認会計士試験合格者の90%以上が監査法人に就職すると言われています。
そもそも公認会計士になるには試験合格後に3年間の実務経験と実務補助(合算可能)が必要ですから、試験合格者のほとんどが監査法人に就職するのです。
監査法人も人手不足のため、選り好みをしなければ就職先はすぐに見つかるでしょう。
なお監査法人での業務内容は就職先によって異なります。
大手監査法人では専門的な監査が中心になり、中堅の監査法人では幅広い業務を任される傾向にあるようです。

税理士法人

税理士として登録した公認会計士は、税理士法人で税理士として働きます。
税理士法人等に就職した場合は公認会計士の業務はせず、税理士として税務書類の作成や税務コンサルティング等の業務をメインにこなします。

一般企業内公認会計士

一般企業で公認会計士資格を生かした働き方です。
経理部や内部監査部門等に配属され、決算業務や開示業務、内部監査業務等に携わります。
管理職となった場合は部下のマネジメント業務も発生します。
監査法人よりも若干給与は低くなる傾向にありますが、監査以外の業務にも関われるため幅広い業務に向き合えます。

コンサルティング会社

監査法人よりもさらに経営に深く関われる働き方です。
クライアントからの相談を受けて課題を明確化し、解決するためのサポートを行います。
監査法人では監査の実施が中心でしたが、コンサルティング会社ではその後の「提案」が主な業務になります。
またIPO準備やM&Aアドバイザリーといったダイナミックな業務に携わることもあるでしょう。
より深く経営に関われる、やりがいの大きな仕事です。

独立開業

会計事務所を開業し運営していく働き方です。
ベンチャー企業の上場サポートやM&Aコンサルティング等、専門性を生かした業務を行います。
税理士を兼任し、監査業務だけでなく税務書類の作成や税務相談等も実施している事務所もあるようです。
仮に失敗しても公認会計士資格があれば転職することも難しくはありませんので、
独立精神の強い人はチャレンジしてはいかがでしょうか。

公認会計士になるには

公認会計士として活躍するまでの流れをまとめます。
まずは国家試験の短答式試験合格を目指しましょう。

国家資格が必須

公認会計士は国家資格であり、公認会計士試験合格が必須条件です。無資格者が公認会計士を名乗ることはできません。
なお公認会計士は必ず日本公認会計士協会に登録しており、かつ会員章を持っています。
公認会計士となった後で身分証明を求められた際には、登録内容や会員章を見せてください。

受験資格や試験内容

公認会計士試験の受験資格はありません。年齢、性別、国籍、学歴を問わず誰でも受験できます。
試験は「短答式試験」と「論文式試験」の2段階に分かれており、短答式試験の合格者のみが論文式試験に進める方式です。
短答式試験は12月と5月の年2回実施、論文式試験は8月の年1回実施されます。短答式試験に1度合格すると、その後2年間は短答式試験が免除されます。

公認会計士試験合格率

公認会計士試験の合格率は例年10%前後であり、令和4年度は7.7%でした。
しかし論文式に限れば35〜40%前後。つまり短答式試験をクリアすれば、35%以上の確率で合格できるのです。
短答式試験は3年まで合格を繰り越せますので、まずは短答式試験突破を目指しましょう。

合格後の流れ

公認会計士試験に合格しても、すぐに公認会計士を名乗れるわけではありません。
監査法人等に就職して実務経験を積み、修了考査に合格した人だけが公認会計士に登録できます。

<公認会計士登録までの流れ>
 1.公認会計士試験合格
 2.監査法人等に就職
 3.3年間の業務補助等で実務要件をクリア
 4.3年間の実務補習要件をクリア(実務補助と合算可能)
 5.修了考査で合格する
 6.公認会計士として登録

まとめ

公認会計士は、企業の監査や会計の専門家です。
中でも独占業務である「監査」は法令等で定められているため、需要がなくなることはありません。また高収入であること、働き方の幅が広いこともメリットに挙げられるでしょう。
公認会計士試験は難関ですが受験資格がなく誰でも挑戦できるので、転職を検討中の社会人でも努力次第で合格は可能です。
安定した高収入と自由な働き方が獲得できる公認会計士資格チャレンジを、この機会にぜひご検討ください。

この記事の監修者

伊藤之誉

長野県長野市出身。慶応義塾大学商学部卒業。1998年に国内最大手の税理士事務所(現デロイト トーマツ税理士法人)に入社後、上場企業から中小企業まで多種多様なクライアントに対する申告書作成業務、税務調査立会など法人の税務全般業務に従事。連結納税や国際税務のコンサルティング、個人所得税の申告書作成、税務デューデリジェンス業務にも従事。執筆、外部研修講師なども経験。2011年に伊藤之誉税理士事務所を独立開業 。軽いフットワークを武器に難解な税法をわかりやすくお伝えし、経営者の皆様と共に成長し、喜びをわかちあえることを理想としています。

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