税理士は試験免除で行政書士になれる!ダブルライセンスのメリット・登録方法を解説

2026年9月3日(記事更新日:2026年9月3日)

税理士資格を持つ方の中には、「行政書士にも興味があるけれど、なかなか踏み出せない」と感じている方もいるのではないでしょうか。実は、税理士は一定の要件を満たすことで、行政書士試験を受けずに登録できる制度があります。

この記事では、税理士が行政書士資格を取得できる仕組みやダブルライセンスのメリット・リスク、登録までの具体的な流れについて詳しく解説します。税理士としてのキャリアをさらに広げることを検討している方は、ぜひ最後までお読みください。

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税理士は試験免除で行政書士に登録できる

税理士の資格を持つ方は、行政書士試験を受けることなく、登録申請のみで行政書士の資格を取得できます。ここでは、税理士が行政書士として活躍する前に知っておくべきことを解説します。

税理士となる資格を有する者は行政書士の試験免除

行政書士法第二条には、行政書士となる資格を有する者として、以下のとおり6種類があげられます。

①行政書士試験合格者
②弁護士
③弁理士
④公認会計士
⑤税理士
⑥一定年数以上の行政事務経験を有する公務員

税理士は⑤に該当するため、税理士登録の有無にかかわらず、試験免除が認められています。弁護士・弁理士・公認会計士も同様に試験免除の対象となり、試験を受けずに登録が可能です。

出典:行政書士法 

税理士登録の有無は問われない

行政書士法は「税理士となる資格を有する者」と規定しており、税理士名簿への登録の有無は問われません。

税理士試験に合格している、もしくは所定の免除要件を満たして「税理士資格」を持っている状態であれば、実際に税理士として登録・活動していなくても行政書士の登録申請が行えます。「資格を持っていること」と「登録していること」は法律上、別の概念として扱われている点が重要なポイントです。

税理士試験合格後すぐに行政書士登録を検討している方も、この規定を活用できます。

税理士事務所所属では行政書士登録ができない

行政書士として登録するには、単に税理士資格を持つだけでなく、所属形態の要件も満たす必要があります。

具体的には以下のいずれかに該当しなければなりません。

①個人開業
②行政書士法人の社員
③行政書士法人の社員または使用人

税理士法人や会計事務所の勤務スタッフとして在籍するだけでは行政書士登録はできないため、ダブルライセンスで活動する場合、個人開業するケースが大半です。

また、日本行政書士会連合会の指針により、事務所の名称には「行政書士」の文言を含めることが求められています。税理士事務所と同一場所に行政書士事務所を開設すること自体は可能ですが、登録上は別の事務所として扱われ、看板に「行政書士事務所」の屋号を税理士事務所名と併記する必要があります。

なお、行政書士会は専任性の観点からも審査を行うため、勤務税理士が副業として登録を検討する場合は、職務の切り分けや勤務先の副業規定についても事前に確認しておくことが重要です。

税理士が行政書士になるメリット

税理士が行政書士のダブルライセンスを取得することで、税務の枠を超えた包括的なサービス提供が可能になり、キャリアの幅が大きく広がります。

税理士と行政書士の業務は関連性・親和性が高く、組み合わせることで相乗効果が生まれやすい点が特徴です。ここでは、代表的なメリットを3つの視点から解説します。

業務をワンストップ対応でき顧客満足度が向上

ダブルライセンスの最大のメリットは、税理士と行政書士それぞれの独占業務をまたがる案件を、一人で一貫して対応できる点です。たとえば会社設立の場面では、行政書士として定款作成・各種許認可申請を担い、設立後は税理士として税務届出・顧問業務まで一気通貫でサポートできます。

補助金・助成金申請の場面においても、行政書士として申請書類の作成・提出を担いながら、税理士として財務諸表や事業計画書の作成を支援するワンストップ体制が整います。手続きが煩雑になりがちな補助金・助成金申請を、一つの窓口で完結させられることは、事業者にとって大きな安心感につながります。

顧客にとっては複数の専門家に相談する手間が省け、管理コストやコミュニケーションコストの低減にもつながります。包括的なアドバイスを一人の担当者から受けられる環境は、顧客満足度の向上にも直結します。

新規顧客獲得の入口が広がる

行政書士業務を入口とすることで、税理士業務だけでは接点を持ちにくかった層へのアプローチが可能になります。

建設業・飲食業・運送業など許認可が必要な業種では、創業時に行政書士業務の依頼が発生します。その段階からクライアントとの関係を築くことで、設立後の税理士顧問契約への自然な導線を設計できます。

また、定款作成代行も行政書士として対応できるため、会社設立の相談を受けた際に他の専門家へ案内する機会損失を減らすことができます。行政書士業務はスポット案件が中心ですが、その後に税理士顧問契約へつなげることで、継続的な収益の確保も見込めます。

特定業種/分野に特化する際の強みになる

定期的な許認可の更新が必要な業種を専門にする場合、ダブルライセンスは他の事務所との差別化において大きな強みになります。

例えば建設業では毎年、許可行政庁への決算変更届の提出が求められます。税務顧問として関与しながらこの届出も一括で対応できれば、顧客との継続的な接点が自然と生まれるでしょう。相続分野においても、行政書士が遺産分割協議書を作成し、税理士がその内容をもとに相続税申告書を作成するという一体的なサービス提供が可能です。

このように、特定の業種や分野に業務範囲を絞ることで、税理士業務だけでは接触できなかった顧客層へのアプローチが広がり、安定した顧客獲得につながります。

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税理士と行政書士の業務内容

税理士と行政書士はいずれも独占業務を持つ国家資格です。それぞれが専門とする領域は異なるため、両資格の業務内容を理解することがダブルライセンスを活かす前提になります。ここでは、それぞれの業務内容を解説します。

税理士の独占業務

税理士は「税務の専門家」として、個人・法人を問わず税金に関するあらゆる場面でサポートを行う国家資格者です。税理士の独占業務は、税理士法で以下3つが定められています。

① 税務代理

納税者に代わって、税金の申告・申請・不服申立てなどの手続きを行います。税務調査が入った際の立会いも税務代理の一つであり、納税者の権利を守る重要な役割を担います。

② 税務書類の作成

確定申告書・法人税申告書・相続税申告書など、税務官公署に提出する書類を作成します。申告内容の正確性が納税者の利益に直結するため、高度な専門知識と経験が求められる業務です。

③ 税務相談

税金の計算方法・節税対策・事業承継・相続など、税務に関する具体的な疑問や課題に応じます。経営者の意思決定に深く関わるアドバイザーとしての役割も担うことが多く、顧問税理士として継続的な関与が一般的です。

税理士は税理士法人・会計事務所での勤務のほか、一般企業の経理・財務部門、コンサルティング会社、金融機関など幅広い職場での活躍が可能です。また、独立開業して自らの事務所を持つ税理士も多く、働き方の選択肢が広い職種といえます。

詳しく知りたい方は、以下の関連記事をご覧下さい。

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行政書士の独占業務

行政書士は「街の法律家」とも呼ばれ、報酬を得て行政手続きに関する書類を作成することが独占業務の中心です。

行政書士の独占業務は大きく3種類に分かれます。

① 官公署に提出する書類の作成

建設業許可・飲食店営業許可など1万種類以上にのぼる許認可申請書類や届出書類の作成・提出代理、および書類作成に関するアドバイスを行います。

② 権利義務に関する書類の作成

遺産分割協議書・離婚協議書・売買契約書・賃貸借契約書・定款など、権利の発生・変更・消滅に関わる書類を作成します。法的なトラブルを未然に防ぐ「予防法務」の役割を担う書類が中心です。

③ 事実証明に関する書類の作成

株主総会議事録・各種図面・申述書など、社会生活上の出来事を客観的に証明するための書類を作成します。

行政書士は行政書士事務所での勤務のほか、独立開業の比率が高い職種です。不動産関連企業など許認可申請が生じる一般企業での活躍も見られます。

税理士と行政書士の違い

税理士と行政書士は業務内容だけでなく、平均年収・働き方・資格難易度においても異なる特徴を持っています。

平均年収の違い

厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)によると、税理士の平均年収は約811万円(令和7年賃金構造基本統計調査)で、平均年齢は42.2歳です。行政書士の平均年収は約583万円(同調査)で、平均年齢は41.7歳となっています。

年齢別に見ると、税理士は55〜59歳が最も高く約1,248万円に達する一方、行政書士は同じく55〜59歳がピークで約694万円となっています。いずれの資格も、経験を重ねることで年収が上昇する傾向があります。

ただし、これらの数値は雇用形態の労働者を対象とした調査に基づくものであり、独立開業者が多い両職種では実態の年収と乖離が生じる場合があり、注意が必要です。

行政書士は活動内容によって年収の幅が大きく、個人事務所を開業して幅広い業務を展開すれば1,000万円超も可能とされています。

ダブルライセンスを取得しても、税理士と行政書士の年収が単純に合算されるわけではありません。あくまでも「業務の幅が広がること」が主な効果であり、会社設立・相続・許認可申請などで活用機会が増えることで、結果として収益アップにつながります。

出典:厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)税理士 

出典:厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)行政書士 

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働き方の違い

税理士と行政書士では、活躍できる職場の幅と独立志向の強さに大きな違いがあります。

税理士は税理士法人・会計事務所での勤務を中心に、一般企業の経理・財務部門、コンサルティング会社、金融機関など、幅広い職場での活躍が可能です。


一方、行政書士は行政書士事務所が中心で、独立開業の比率が高い職種です。厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)によると、行政書士の自営・フリーランス比率は85%を超えており、税理士(約33%)と比較しても独立志向が強い傾向がわかります。一般企業においては、法務・総務部門での知識活用という形で行政書士資格が活かされるケースもあります。

このように税理士は組織に属しながらキャリアを積む選択肢が豊富である一方、行政書士は独立開業を前提とした働き方が主流です。ダブルライセンスを取得することで、組織勤務・独立開業いずれの形態においても業務の幅が広がり、自身のキャリアプランに合わせた柔軟な働き方を実現しやすくなります。

資格難易度の違い

行政書士試験の令和7年度合格率は14.5%であり、例年10〜15%前後で推移しています。一方、税理士試験の令和7年度の総合合格率は21.6%であり、科目ごとに合格率が異なる科目合格制が採用されています。見かけ上は税理士の合格率が高いですが、科目合格制であるため一度の受験で全科目に合格することは難しく、資格取得までに複数年かかるのが一般的です。

勉強時間の目安は、一般的に税理士が2,000〜4,000時間で平均2〜3年以上、行政書士が500〜1,000時間で最短数ヶ月〜1年とされています。税理士試験は全11科目のうち5科目合格に加えて2年間の実務経験が登録要件となっているのに対し、行政書士は試験合格後に実務経験なしで登録できます。

総合的な難易度では、一般的に科目合格制・実務要件のある税理士の方が高いと評価されています。転職市場においても、税理士の有効求人倍率が2.31倍であるのに対し、行政書士は0.43倍と、税理士の需要・希少価値が数字にも表れています。

出典:国税庁「令和7年度(第75回)税理士試験結果表(試験地別)」 

出典:一般財団法人行政書士試験研究センター「令和7年度行政書士試験実施結果の概要」 

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ダブルライセンスで押さえておきたいリスクと留意点

ダブルライセンスはキャリアの幅を広げる一方で、専門性の維持や費用面での負担も伴います。取得を検討する際は、メリットだけでなく現実的なコスト・負荷も把握しておくことが重要です。

専門性の維持に労力がかかる

ダブルライセンスを活かすためには、税法と行政書士関連法の両方を継続的にアップデートし続ける必要があります。

税務は毎年の改正が多く、行政書士業務においても顧客の業種ごとに関連する許認可法令が変化します。対応範囲が広がるほど業務量も増えるため、一人ですべてをカバーしようとすると多くの労力がかかります。

どの業種・分野に特化するかを明確にし、業務の優先順位を戦略的に設定することが、両資格を長く活かすための鍵になります。

登録/維持に関する諸費用が掛かる

行政書士の登録には、登録免許税3万円、登録手数料2.5万円、入会金約20万円など一定の初期費用が必要です。

東京都を例にとると、登録免許税・登録手数料・入会金・初月分会費などを合計すると、登録時に概ね25〜30万円程度の費用が発生します(金額は所属する都道府県の行政書士会によって異なります)。

登録後も毎年の会費が発生し、東京都では年間8万円前後の維持費がかかります。ダブルライセンスの場合、税理士会・行政書士会それぞれへの年会費が必要になるため、登録だけ行い実際に業務を行わない状況は、費用負担の観点から避けることが賢明です。

登録を決断する前に、行政書士業務で見込まれる収益と維持費用のバランスを事前に試算しておきましょう。

税理士の行政書士登録までの流れ

行政書士への登録は、事務所所在地の都道府県行政書士会を経由し、日本行政書士会連合会へ申請する形で進めます。登録通知が届くまでには、申請受理から概ね1〜1.5ヶ月程度かかるため、計画的に準備をすることが重要です。

また、申請受付は事前予約制となっている場合が多いため、あらかじめ各行政書士会に連絡して予約を取っておきましょう。

①必要書類の準備、申請

まず、事務所所在地の都道府県行政書士会が定める必要書類を揃えます。

主な書類は、行政書士登録申請書・履歴書・誓約書・入会届・事務所写真などです。添付書類には、行政書士となる資格を証する書面(税理士の場合は登録証明書の原本)・住民票・身分証明書・顔写真・事務所の使用権を証する書面が含まれます。

行政書士登録の申請に必要な書類は、登録形態によって異なります。個人開業の場合は事務所の使用権を証する書面や事務所の写真・図面の提出が求められます。一方、行政書士法人の社員または使用人として登録する場合は、事務所の写真・図面は原則不要で、勤務する事務所の名称及び所在地などが必要です。

いずれの場合も、必要書類や書式は各都道府県の行政書士会によって異なるため、申請前に管轄の行政書士会へ事前確認することがおすすめです。

②行政書士会への費用支払い

登録申請と合わせて、所定の費用を納付します。

東京都を例にとると、事前振込みが必要な費用(登録手数料・入会金・登録免許税)と、申請当日に窓口で現金払いする費用(初期会費分)を合わせると、合計で約25〜30万円になります。

費用の内訳や金額は所属する行政書士会によって異なるため、事前に確認しておくことが大切です。

③審査・事務所調査

申請書類の受理後、都道府県行政書士会および日本行政書士会連合会による審査が行われます。審査では書類の確認に加え、事務所の実態確認が行われる場合もあります。審査完了までの期間は概ね1〜2ヶ月ほどかかります。

④登録完了

審査が完了すると、日本行政書士会連合会の行政書士名簿に登録され、登録証が交付されます。登録証を受け取ったら、速やかに行政書士事務所の看板・名刺などを整備し、業務開始の準備を進めましょう。

税理士登録の手続きについては、以下の関連記事もあわせてご参照ください。

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よくある質問

税理士資格を持つ方が行政書士資格取得に際し、検討するよくある質問を見ていきましょう。

Q.行政書士登録にかかる費用はどれくらいですか?

A.登録時の費用は、所属する都道府県の行政書士会によって異なりますが、東京都の場合、登録免許税・登録手数料・入会金・初期会費などを合計すると概ね25〜30万円程度となります。

登録後も毎年の会費(東京都では年間8万円前後)が必要です。詳細は各都道府県の行政書士会に直接お問い合わせください。

Q.税理士事務所と同じ場所で行政書士事務所を開設できますか?

A.同一場所での開設は可能です。

ただし、行政書士事務所と税理士事務所は登録上は別の事務所として扱われるため、看板に「行政書士事務所」の屋号を税理士事務所名と併記する必要があります。申請時には事務所の使用権を証する書面(賃貸借契約書や建物の登記事項証明書など)の提出も求められます。

Q.ダブルライセンスを取れば年収は上がりますか?

A.税理士と行政書士の年収が単純に合算されるわけではありません。

ダブルライセンスの主な効果は「業務の幅が広がること」であり、会社設立・相続・許認可申請などの案件で活用機会が生まれることで、結果的に収益増につながります。

登録・維持費用も発生するため、行政書士業務をどの分野でどの程度活用できるかを事前に検討したうえで取得を判断しましょう。

まとめ

税理士は行政書士法に基づき、行政書士試験を受けることなく登録申請のみで行政書士資格を取得できます。ダブルライセンスを活用することで、会社設立・相続・許認可申請などの場面でワンストップのサービス提供が可能になり、新規顧客の獲得や収益源の多角化につながります。

一方で、専門性の維持には継続的な学習コストがかかり、登録・維持費用も発生します。ダブルライセンスを最大限に活かすためには、どの業種・分野に特化するかを明確にしたうえで取得を判断することが重要です。

税理士としてのキャリアをさらに広げたい方や行政書士業務への参入を検討している方は、まず所属予定の行政書士会に相談し、登録要件や費用の詳細を確認することから始めてみてください。

この記事の監修者

伊藤之誉

長野県長野市出身。慶応義塾大学商学部卒業。1998年に国内最大手の税理士事務所(現デロイト トーマツ税理士法人)に入社後、上場企業から中小企業まで多種多様なクライアントに対する申告書作成業務、税務調査立会など法人の税務全般業務に従事。連結納税や国際税務のコンサルティング、個人所得税の申告書作成、税務デューデリジェンス業務にも従事。執筆、外部研修講師なども経験。2011年に伊藤之誉税理士事務所を独立開業 。軽いフットワークを武器に難解な税法をわかりやすくお伝えし、経営者の皆様と共に成長し、喜びをわかちあえることを理想としています。

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